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 扉の向こう・その2・ 王子内定調査

 本編で、ディックランゲアのヘタレっぷりをもっと見せたかったです。笑。

 

      


 ディックランゲア王子がリアリの婚約者という衝撃の事実が判明して、数日。


 アンビヴァレント受付嬢べスティアと経理担当パドゥーシカは、敬愛する上司のために、王子の弱点を探る――もとい、王子のひととなりを知るために――周辺調査をしていた。



 証言その一。王子の側近より、酒場にて。


「だいたいなあ、よく知らない女を妻にするってのが無理があるんだよ。王弟の姫だかなんだかしらねぇけどさ、名ばかりの婚約者だろぉ? そいつと子供ぉ? ンなもんつくれったって、やることやらなきゃ子供なんでできやしねぇのに、あのくそまじめで、奥手で、ウブな王子が、ろくに顔も見たことない女を相手になんてできねぇよ。絶対、無理! 無理無理無理!!! あれ、なんの話だっけ? あ、そうそう。女関係、だったな。んー、俺の知る限りじゃあ、まったくの潔白じゃねぇの? だってここだけの話、俺、一国の王子があんなにヘタレでいいのか、って思うぜ。どのへん? ははっ、要はさ、『いいひと』すぎんだよ。まあそこが、王子のいいところっちゃ、いいところなんだけどなぁー」



 証言その二。自称片腕のアレクセイより、事務仕事中。


「私の王子は最高! ですよ。政治手腕は一流、外国折衝も交渉も能弁で、駆け引き上手。思考は洞察に優れ、知識はひろく、ひとの助力を乞うので人望もありますし、人材登用に無駄がないんです。本当に、スバラシイですよねっ、私の王子は! は? 仕事以外のいいところ、ですか? あなた、なにを言っているんです。私の王子に悪いところなんてあるわけないじゃないですか!!!!」



 証言その三。父王リウォードより、お茶の席で。王妃午睡中。


「……まあ、国務はできるだろう。そういう教育を受けさせてきたからな。しかし女性を口説くとなると、我が息子ながら、あまり期待できぬな。なにせ、鈍いのだよ。本人は気づいていないのだろうが、女性にもてないわけではないのだ。もてているのに、気づかないのだよ。ある意味、致命的とも言える弱点だろう?」



 証言その四。ディックランゲア王子、本人談。


「私の取り柄? さあ……情けないが、取り立ててなにもないな。私は国を護れてもリアリ殿を守れる自信はない。武芸はからきしだめなのだ。だから、万が一の時には一緒に斃れるだろうな、たぶん。それでも私はリアリ殿を妻に欲しい。ずうずうしいと、笑うか?  だが、あの方が婚約者だと知って、私はとても浮かれている。むろん、私では色々足りたいところがあるだろうから、努力する。それに、あの恐ろしい双子の兄弟も説得する。すぐにでなくていいのだ。私は気が長いから、あの方の気持ちが私に向くまで待つつもりだ。少しずつでいい、私を見てくれれば……」



 ベスティアとパドゥーシカは二人揃って、不覚にもときめいた。

 逃げるようにその場を辞去し、仮営業中のアンビヴァレントに引き上げる。


「……なんなのあれ」

「なんって、性質の悪い天然たらしですの」

「そうよねっ。本人は無意識みたいだけど、色々な意味で女泣かせのセリフを連発して、あれじゃあ、うちのお嬢様だってそりゃくらっとくるわ!!」

「わたくしだって、ぐっときましたもの。『惚れたなら、奪ってしまえ、いますぐに』が標語のこのローテ・ゲーテの王子ですのよ!? なのに、なんですの、あの、控えめさはっ。思わずこう――なんというか、ほだされてしまうじゃありませんか!!」

「わかる、わかる!! あまりにも残念すぎて、応援したくなっちゃったの!!」

「真面目で奥手でウブでいいひとでヘタレで仕事ができて、容姿は――」

「及第点でしょう。地味ですけど、誠実そうでサワヤカですもの」

「それでもって仕事ができて鈍くて正直で控えめで誠実だなんて……っ」

「どれだけ女心のツボを抑えているんですのっ……」

 

 くっ、と二人はハンカチを噛んで悔しがった。

 どれだけそうしていただろう。

 二人は悶絶から立ち直ると、ハンカチの涙を絞った。


「……哀れだわ」

「……哀れですわね」

「ラザ様やカイザ様にかなうとは思えない……」

「思えませんわね……」

「お嬢様への報告は……どうしよう?」

 

 二人は顔を見合わせて、調査メモをランプの火にくべた。

 共犯者の視線をこっそり交わす。


「……別に、王子を応援するわけではありませんけど」

「……もしかしたら、もしかして、お嬢様が王子の力を必要とするときもあるかもしれませんし」

「そうそう。そんなときのために、一応キープしておくってのも、手よね」

「ええ。ですから、王子がどれだけ『いいひと』かというのは、ここだけの秘密にしておきましょう」

 

 二人はどちらともなく唇に人差し指をあてて、微笑した。


 それからしばらくの間、アンビヴァレント受付嬢と経理担当者は王子に優しかったという。


 ちょっと書き方を、調整中。少しでも読みやすければ、さいわいです。


 引き続きよろしくお願いいたします。

 安芸でした。

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