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第6話 代償と覚悟

港での戦いから一夜明け、長崎の町は静寂を取り戻していた。

だが、祐一の胸にはまだ昨日の戦闘の余韻が残る。

手に残る熱、血の逆流、体の疲労……天祈を振るった代償は、彼の全身を蝕んでいた。


「……はぁ……」

祐一は刀を置き、膝をつく。刃先に宿る蒼光は微かに揺れ、彼の血脈と同期している。

島原の乱で失われた民たちの魂、隠れキリシタンたちの祈り……その重みが、体と精神を押し潰すようだ。


「祐一、体は大丈夫か?」

龍馬が心配そうに歩み寄る。

「昨日の戦い、無理しすぎたんじゃないのか?」


祐一は首を振る。

「……大丈夫、です……でも……」

口ごもる。

天祈の力を使えば、敵を押し返せる。しかし、その代償は決して軽くない。

魂が揺さぶられ、血が逆流し、場合によっては意識を失う危険すらある。


「代償を恐れるな」

龍馬は静かに言う。

「だが理解しておけ。力には限界がある。代償も含めて、その使い方を考えろ」


その時、伊藤仁が呼びかけた。

「祐一、港の監視で異変だ」

遠くの港に、再び黒装束の影が動く。

――忍びたちだ。昨日撤退した暗殺者たちが、再び亀山社中の拠点を狙っている。


「……またか」祐一は刀を握り直す。

天祈の光が刃先で脈打つ。

体にかかる負荷、魂の揺さぶり……すべてを受け入れ、刃に変換する。

島原の炎、亡くなった民たちの祈り、そして隠れキリシタンたちの願い――全てが、天祈の光に宿る。


「行くぞ!」

祐一は仲間たちと共に港へ向かう。

忍びたちは壁や屋根を駆け、闇に溶け、短距離瞬間移動のように現れる。

彼らは単なる戦力ではない。戦略的に亀山社中の防衛線を崩し、奇襲で一気に殲滅を狙ってくる。


「慎重にな。無理はするな」龍馬の声が響く。

祐一は深呼吸し、天祈の光を微調整する。刃先に宿る魔導が、周囲の動きを感知して光の軌道を変え、敵の動きを誘導する。


戦闘は激烈を極める。忍びたちは屋根から屋根へ跳び、路地に潜み、亀山社中の隙を狙う。

祐一は刃を振るい、光で影を切り裂く。

しかし、体の疲労と代償は限界に近い。意識が揺らぎ、血の逆流が手足に痺れをもたらす。


「……俺の……力、まだ……完全じゃない……」

祐一は心の中で呟き、天祈の力に集中する。

すると、刃先の蒼光が徐々に安定し、光の弧が忍びたちを押し返す。

仲間たちも結界を展開し、敵の動きを封じる。


だが戦闘の代償は大きかった。祐一は戦闘後、しばらく動けなくなり、体は汗と血で冷たくなる。精神も極限まで消耗していた。

「……俺は、これからどうすれば……」

孤独と不安が胸に押し寄せる。

島原での祖先の夢、焼かれた村、失われた命――その記憶が、今の自分と重なる。


「祐一」

龍馬の声が静かに響く。

「怖がるな。力には代償がつきものだ。それでも、お前は使わねばならん時が来る」


その時、港の遠くで小さな光が揺れる。

マリアだ。昨日の戦闘の後、港の見回りを続けている。

彼女の祈りが、祐一の心に安堵と決意を与える。


「守るんだ……仲間も、日の本も……」

祐一は刀を握り直す。血の脈動、祖先の魂、仲間たちの祈り――全てを力に変え、天祈は再び光を放つ。


港に光と影が交錯する。忍びたちは影に潜むが、仲間との連携、刀と結界、そして祐一の覚悟によって次第に押し返される。

勝利の瞬間、祐一は初めて理解した。力とは守るためにある。代償を払っても、守るべきものがある限り、天祈は彼を導く。


夜明けの長崎。港に差す光に照らされ、天祈は蒼く光る。

祐一の胸には、新たな決意が芽生えた。

「俺は……この力で、日の本を守る」


しかし、魔導局の忍びたちは、必ず再び現れる。

戦いはまだ、始まったばかり――。


そして、遠くで祈る声が聞こえる。

祖先天草四郎の魂か、民の叫びか。

祐一は再び拳を握り、天祈を高く掲げた。


「……俺は、絶対に負けない」


――つづく。

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