第4話 天祈の修行、忍び襲来
第4話です!
夜明けの長崎は、穏やかな光に包まれていた。
しかし、祐一の胸の内は落ち着いていない。
昨夜、大浦天主堂で見た黒霧と亡霊、そして刀“天祈”の光――その余韻がまだ心を揺さぶっている。
「……俺の力、まだ制御できない」
祐一は刀を握り、手の震えを押さえる。
天祈はただの刀ではない。祖先天草四郎が島原の乱で使用した神器で、刃には淡い蒼色の魔導紋が刻まれている。魂と同期し、祈りや血の力を刃に宿すことができるが、使いすぎれば体に激しい負荷をかけ、精神を揺さぶる危険がある。
「祐一、刀の扱いが雑だ」
背後から龍馬の声が響いた。
「もっと、自分の血と心を刀に通わせろ」
祐一は刀を地面に突き、深呼吸する。
手のひらから伝わる熱、血の力の脈動。島原で失われた民の魂、隠れキリシタンたちの祈り――すべてが刀を通して響く。
その時、亀山社中の仲間たちが集まった。
伊藤仁、谷干城、山内容堂――まだ若いが、異なる技能と魔導的資質を持つ者たちだ。
「祐一、俺たちも協力するぞ」
伊藤が刀を抜き、微かな蒼光を刃先に漂わせる。
「俺たちはただの仲間じゃない。力を合わせれば、忍びたちにだって対抗できる」
祐一は小さく頷いた。孤独ではない。仲間がいる。血の力も、孤独では暴走するだけだ。
「まずは基礎だ」
龍馬が言った。
「刀の扱い、体の使い方、魔導との連動、代償も理解しろ」
訓練場で祐一は刀を振るう。
天祈の光はまだ不安定で、振れば振るほど体が熱を持ち、血が逆流する感覚が襲う。
しかし、龍馬は忍耐強く見守る。
「代償を恐れるな。代償を理解し、受け入れた時、初めて力は制御できる」
祐一は刀を構え、意識を集中する。
島原の炎、亡くなった民たちの祈り、そして教会に宿る隠れキリシタンたちの意志――すべてを取り込み、天祈と同期させる。
刃先が淡い蒼光に包まれ、刀身を握る手の震えは次第に収まった。
その時、港の方向から不穏な気配が迫る。
「……敵影だ」
伊藤が低く呟く。
祐一が振り返ると、黒装束の影が屋根の上を滑るように動いていた。
――忍びだ。魔導局直属の暗殺者たち。
壁を駆け、闇に溶け、短距離を瞬間移動するかのように港に忍び寄る。
「奴らはただの力任せじゃない。戦略的だ」龍馬が言う。
「祐一、天祈の光だけに頼るな。頭も使え」
忍びたちは静かに、しかし確実に亀山社中の陣形を崩そうとする。
一瞬の隙も許されない緊張感。刀を構え、祐一は仲間たちと呼吸を合わせる。
「――行くぞ!」
天祈が白い光を帯び、蒼色の魔導紋が刃先で脈打つ。
祐一の体に残る島原の血の記憶、隠れキリシタンたちの祈り――すべてが刀に宿り、光となって周囲に広がる。
忍びたちは闇に紛れ、一瞬の隙を狙うが、天祈の光と仲間たちの魔導結界に阻まれる。
刃を振るうたび、光は結界を切り裂き、迫る影を弾き飛ばす。
しかし、その代償は容赦なく体を襲う。汗と血が混じる手を押さえ、息を荒くしながら祐一は戦い続ける。
「力とは、守るためのものだ」
祐一の胸に確かな意思が芽生える。
天祈はただの武器ではない。魂と血、歴史と祈りが宿る神器だ。守るべき仲間、守るべき日の本を思う心――それが力の源だと理解した。
港の夜に、光と影が交錯する。
忍びたちは撤退し、亀山社中は勝利を収める。
だが、祐一の胸には知っている。
これからも、魔導局は何度でも忍び寄る。戦いはまだ、始まったばかり――。
そして、天祈の光は今日も、守るべき者たちのために輝き続けるのだった。
次回もよろしくお願いします!




