第3話 影の介入、覚醒の光
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大浦天主堂の鐘が、夜空に狂ったように響き渡る。ゴォ……ッ。
黒い霧が屋根を包み込み、うねるたびに月光を遮り、まるで生き物のように蠢いた。
「……なんだ、あれ……」龍馬の声が低く響く。
祐一は胸の奥で何かが疼くのを感じた。――怨念。祖先の血が警告している。
大浦天主堂は、表向きは穏やかな教会。だが、その地下には隠れキリシタンたちの血と魔導の歴史が刻まれていた。
徳川禁教令のもと、信者たちは密かに祈り、十字架を隠し、土の下に祭壇を埋めながら生き延びた。
禁断の魔導――信仰と血の力を秘めた神器「天祈」の伝承もまた、この教会に深く関わっていたのだ。
「……報告。対象、依然として覚醒状態」
黒装束の魔導局隊員が、闇に溶けるように声を潜めた。
「捕獲作戦開始」
龍馬が祐一を睨む。
「祐一、奴らは本気だ。力だけじゃ勝てんぞ」
その瞬間、祐一の手が自然に刀“天祈”へ伸びる。
天祈は祖先天草四郎が島原の乱で使ったと伝わる神器で、刃は白銀に輝き、中央に淡い蒼色の魔導紋が刻まれている。
刃を振るうたび、魂の声や過去の記憶が刀身を伝い、使い手の意思と同期する。
「――これが、俺の力……」
隊員たちは魔導結界で祐一を包囲する。
祐一は血の記憶を呼び覚まし、島原で散った民の魂、隠れキリシタンの祈りを感じ取る。
天祈はそれらすべての力を刃に乗せ、光として放つことができる。
だが、使いすぎれば体に強烈な負荷がかかる――内臓を焼き、魂を揺さぶる代償がある。
「――天祈、起て!」
刀から白く強い光が迸り、隊員たちを弾き飛ばす。
地面が割れ、空気が裂ける音が響く。月光と魔導光が交錯し、夜空は燃えるように赤く揺れた。
祐一は意識を集中し、天祈を片手に振るう。
刃先から放たれる光は、隊員の結界を瞬時に破り、闇の魔導を跳ね返す。
刀身に刻まれた魔導紋が淡く光り、祐一の体力と精神力を同期させる。
その一瞬、祐一は島原の炎、亡霊たちの祈り、そして天草四郎の魂とつながった。
「……俺は、忘れない。救えなかった命を……」
光は増幅し、黒霧の中で形を成した亡霊たちを清める。
隊員たちは恐怖に凍り、撤退せざるを得なかった。
だが、最後に低く響く声が残る。
「……次は日の本全土への介入だ」
祐一は胸を押さえる。力の覚醒と代償、宿命の重さ――すべてが胸を締めつける。
マリアの笑顔を思い浮かべる。守るべきものが確かにある。
龍馬が祐一の肩に手を置く。
「……お前は、この国を変える力を持っている」
「……でも、一人じゃ……」
「一人じゃない」
亀山社中の仲間たち、長崎の人々、そして遠くで祈る天草四郎の魂。
祐一は拳を握り直す。血の力と歴史の力を、刀“天祈”と共に使いこなせば、幕府魔導局にも立ち向かえる――。
月光が教会を照らす中、祐一の体から光が消え、静寂が戻る。
胸の奥には確かな熱。力が目覚め、未来が揺れ動く予感――。
――つづく。
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