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第10話 祈りを奪う者

長崎の夜は、霧に包まれていた。

港町の街灯は微かに揺れ、石畳に長く影を落としている。

天草祐一は、天祈を握りしめ、夜の静寂を感じながら歩いていた。

心の奥に、昨夜の風間との戦いの余韻が残る。

まだ体は痛むが、胸の奥に芽生えた覚悟が、足を止めさせない。


「……マリアは、無事だろうか」

祐一は低く呟く。

教会で初めて出会ったあの白い修道服の少女――マリア。

その微笑みと、温かい瞳が頭から離れない。

仲間たちと共に港を歩くたび、心臓が高鳴るのを感じた。


だが、その平穏は突然、破られた。

霧の向こうから、黒装束の影が忽然と現れる。

「……っ!」

祐一の胸に緊張が走る。

黒装束の男たちは、昨日の戦いで退却した魔導局の刺客だった。

そして、彼らの中心に立つのは……


「マリア……!?」

祐一の視線が一点に釘付けになる。

教会前の広場で、マリアが黒装束に囲まれ、魔導具で拘束されていた。

「くっ……!」

祐一は天祈を握り締め、怒りと焦燥が心を満たす。


龍馬がすぐに祐一の横に立ち、声を掛ける。

「祐一、冷静に! 無茶はするな」

「……でも……!」

祐一の目はマリアに釘付けで、動揺を抑えられない。

彼女の瞳は恐怖に揺れ、しかし微かに祐一を信じる光を宿していた。


刺客たちが一斉に攻撃を仕掛けてくる。

黒い衝撃波が霧を裂き、石畳を砕き、仲間たちを押し退ける。

祐一は天祈を掲げ、白光を迸らせて応戦する。

光が霧を裂き、刺客の一人を弾き飛ばす。


だが、人数が多い。

祐一の力はまだ完全ではなく、体力の消耗は激しい。

膝が震え、呼吸が荒くなる。

胸の奥で祖先の血の記憶が疼き、島原の炎と殉教者たちの怨念が渦巻く。


「……俺は……守る……!」

祐一は叫び、光を増幅させる。

刀身から溢れ出る白光が刺客たちを押し返すが、中心の拘束されたマリアにはまだ届かない。


マリアの瞳が恐怖で揺れる。

「……祐一……逃げて……!」

その声が胸に突き刺さる。

祐一は足を止め、膝をつき、拳を握る。

「逃げるか……そんなことできるか!」


龍馬が叫ぶ。

「祐一、力を溜めろ! 今は仲間と光を合わせろ!」

祐一は深呼吸し、天祈の光と仲間たちの魔力を融合させる。

白光が港全体を覆い、黒霧と刺客たちを圧倒する。


しかし、刺客の魔導具は高性能で、黒い鎖が天祈の光を押し返す。

祐一の体はさらに疲労し、意識が揺らぐ。

「……くっ、限界……か……」


その時、祖先天草四郎の声が脳裏に響く。

『血を恐れるな。光を導き、信じる者を守れ』

祐一の胸の奥で何かが弾け、力が体中に流れた。

刀から溢れる白光が爆発的に強まり、刺客たちを吹き飛ばす。

黒霧が裂け、拘束されたマリアの体が光の中で自由になる。


「……祐一……!」

マリアの声が響き、祐一の胸が熱くなる。

彼女の微笑みは、戦う理由そのものを象徴していた。


黒装束の刺客たちは、混乱の隙に退却する。

しかし、魔導局の目は港の陰に潜み、次の作戦を静かに準備していた。


祐一は膝をつき、天祈を握り直す。

胸の奥の血の鼓動が、再び力強く脈打つ。

「……絶対に守る」

守るべきもの――マリア、仲間、民、そして祖先の思い。

そのすべてを背負い、祐一は立ち上がる。


夜空に月光が差し込み、天祈の光が白く輝いた。

静寂の中、港には戦いの余韻だけが残る。

しかし祐一の瞳は、次の戦いに向けて冷たく、そして確かに光を宿していた。


――つづく。

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