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第1章:探偵と怪盗、出会いは“犯行予告状”から

夜の新宿は、まるで星空を地面にぶちまけたみたいだ。ネオンの光がビルのガラスに跳ね返り、まるで誰かがキラキラした絵の具を撒き散らしたような街並みが広がっている。俺、三条蓮、17歳、高校二年生。普段はただの陽キャ高校生、クラスの女子から「レン君ってさ、なんか楽しそうよね」とかチヤホヤされるタイプ。まあ、悪くない人生だ。昼間はそんな感じで過ごしてるけど、夜になると、ちょっとだけ別の顔が出てくる。


そう、俺は《怪盗ノワール》。新宿の夜を騒がせる、謎の怪盗だ。美術品やら高級時計やら、なんでもかんでも華麗に盗み出す。そのくせ、現場にはいつも謎の予告状を残すから、マスコミもSNSも大騒ぎ。ハンドルネーム「Noir_Star」で怪盗SNSに投稿すれば、フォロワーたちが「カッコよすぎ!」「次はどこ盗むの!?」って盛り上がる。ま、気持ちいいよね、そういうの。


でもさ、ぶっちゃけ、盗みそのものにはあんまり興味がない。金? 欲しいっちゃ欲しいけど、それより大事な目的があるんだ。俺が本当に欲しいのは――いや、盗みたいのは――ある男の心。そう、探偵・神楽優。18歳、天才的な頭脳とクールな顔立ちで、俺の心をガッチリ盗みやがったやつ。初めて彼のニュース映像を見たとき、俺の心臓はマジで止まりそうだった。鋭い目、冷静な声、まるで氷みたいなのに、どこか熱い正義感がチラ見えする。あの瞬間、俺、完全に恋に落ちた。もう限界。マジで限界。


「ハァ……優、今日も俺を捕まえに来てくれるかな……」


今、俺は自分の部屋のデスクで、明日の犯行予告状を書きながらそんなことを呟いてる。部屋は狭いけど、俺の秘密基地って感じ。壁には怪盗グッズ――黒いマスクとか、変装用のウィッグとか、暗号作成用のノートとか――が整然と並んでる。で、目の前にはパソコン。画面には、優の探偵活動ログが映ってる。そう、俺、優のファンサイトを勝手に作っちゃってるんだ。非公開だけど、フォルダ名は「Yuu_Love」。……やばい、言わないでくれよ、恥ずかしいから。


予告状の文面は、いつもちょっとした暗号を仕込む。今回は、美術館に展示されてる「月下のダイヤモンド」を盗むって内容。文面はこんな感じだ。


「月夜の影、星の囁き。明日の23時に、月の光を手に取る。――ノワール」


シンプルだけど、ちゃんと暗号入ってる。優なら気づくはず。「月夜の影」ってのは、美術館の最上階の窓の位置を指してるし、「星の囁き」は俺が仕掛ける音響トラップのヒント。優がこれ読んで、ニヤッてしてくれることを想像すると、俺の胸、ドキドキが止まんない。やばい、マジでやばい。


***


次の日、学校。昼間の俺は、いつもの陽キャモード全開。クラスの女子たちが「レン君、今日の数学の宿題やった?」「ねえ、週末カラオケ行かない?」とか絡んできて、俺はニコニコ笑って適当に流す。「宿題? うーん、頭痛くてさー」「カラオケ? いいね、でも予定あるかも!」ってな感じで。女子たちはキャーキャー言うけど、正直、俺の頭の中は今夜のことでいっぱい。だって、今日、優に会えるかもしれないんだから。


昼休み、俺はスマホでニュースチェック。案の定、ノワールの予告状が話題になってる。怪盗SNSでは、「ノワール、今回はマジで捕まるんじゃね?」「いや、あの神楽優が相手ならワンチャン!」とか、フォロワーたちが勝手に盛り上がってる。で、画面をスクロールしてたら、キター! 優のインタビュー映像! テレビ局が美術館の警備について聞いてるシーンだ。


「怪盗ノワールの予告は、毎回計算された挑発です。ですが、感情に流されるつもりはありません。必ず捕まえます」


うおお、優の声! 低くて、ちょっとハスキーで、でもめっちゃ落ち着いてる! 画面越しでも、その目がマジで鋭い。まるで俺の心を直接見透かしてるみたい。俺、スマホ握りながら「うわ、かっこよ……」って呟いちゃって、隣の席のやつに「三条、何ひとりでニヤニヤしてんの?」って突っ込まれた。やべ、ちょっと恥ずい。


でもさ、優のあの言葉――「感情に流されるつもりはない」ってやつ。あれ、俺への挑戦状だろ? だったら、俺も本気でいくぜ。ノワールとして、最高のショーを見せてやる。そして、優の心、ちょっとでも揺さぶってやるんだから!


***


夜23時、美術館の屋上。俺は黒いマスクとコートでバッチリ決めて、怪盗ノワールとして登場。美術館の周りは警官だらけ、サーチライトがビュンビュン動いてる。空気はピリピリしてて、まるで映画のワンシーンみたい。風が冷たくて、俺のマスクの端がヒラヒラ揺れる。遠くでパトカーのサイレンが鳴ってるけど、俺の耳には、なんかこう、優の足音が聞こえてくる気がする。ドキドキが止まんねえ。


美術館の警備は、予想通りガチガチ。監視カメラは30台以上、警官は50人、プラス探偵ライセンス持ちのエリートが数人。で、その中に――いる! 神楽優! 黒いコートに身を包んで、冷静に警備員に指示を出してる。あのシルエット、遠目でもバッチリ分かる。だって、俺、優の歩き方まで覚えてるもん。ちょっと肩を引いて、背筋ピンと伸ばした歩き方。マジで完璧。


俺は屋上のガラス窓にワイヤーを引っかけて、静かに降りていく。心臓バクバクだけど、こういう瞬間、嫌いじゃない。むしろ、ゾクゾクする。だって、このスリルの中で、優と対峙できるんだから。窓のロックをピッキングで外して、展示室に侵入。月下のダイヤモンドが、スポットライトに照らされてキラキラ輝いてる。うわ、めっちゃ綺麗。けど、俺の目当てはこれじゃない。俺が欲しいのは、優の視線だ。


「ふふ、時間通りだな、ノワール」


突然、背後から声。ビクッてなって振り返ると、そこに優が立ってる。マジか、早すぎ! 俺、音響トラップ仕掛けたのに! 優の手にはタブレット、画面には俺の侵入ルートがバッチリ映ってる。くそ、監視カメラの死角、全部読まれてたか! でもさ、こうやって優と向き合ってるこの瞬間、俺、めっちゃ幸せ。やばい、笑顔隠せねえ。


「やあ、探偵さん。俺のこと、そんなに早く捕まえたかった?」


俺はニヤッと笑って、わざと軽い調子で言う。優は眉一つ動かさず、冷たく答える。


「興味ない。感情に左右されない。それが君の敗因だ、ノワール」


うお、キター! その冷たい目! その論理的な声! 俺、心臓がギュンって締め付けられる。もう、好きすぎて限界。マジで限界。けど、ここでデレデレしてる場合じゃない。俺はポケットからスモークボムを取り出して、床に叩きつける。シューって煙が広がって、展示室が一瞬で真っ白に。


「じゃ、またな! 次も来てくれるよね、探偵さん!」


俺はワイヤーを巻き上げて、天井の換気口に飛び込む。背後で優の声が聞こえる。


「逃がさない。次は、必ず」


その言葉、俺の背中にゾクゾクって響く。やべ、めっちゃかっこいい。俺、換気口を這いながら、ニヤニヤが止まんない。優、絶対また会おうぜ。俺、君の心、絶対盗んでやるから。


***


逃走後、俺は新宿の雑居ビルの屋上に隠れて、息を整える。夜風が冷たくて、マスクの下の汗がスーッと引いていく。スマホを取り出して、怪盗SNSをチェック。案の定、フォロワーたちが「ノワール、今回も逃げ切り!」「神楽優、マジで惜しかったな!」とか騒いでる。けど、俺、そんなのどうでもいい。俺が開いたのは、例の「Yuu_Love」フォルダ。そこには、優のニュース映像のスクショ、探偵活動のログ、インタビューの書き起こし……全部、俺の宝物。


「ハァ……優、今日、めっちゃ近くで見たよな……」


俺、スクショの優の顔見ながら、ひとりでニヤニヤ。やばい、マジで恋してる。こんな気持ち、初めてだ。心臓がバクバクして、頭ん中、優のことしか考えられない。けど、ちょっとだけ、胸の奥がチクッとする。だって、俺、怪盗だもん。優は探偵。正反対の立場。俺が本気で近づいたら、優は俺を捕まえるしかない。なのに、俺、止められないんだ。この恋、マジでやばい。


***


次の日、学校。俺、いつも通り陽キャモードで教室に入るけど、頭の中は昨夜のことでいっぱい。優のあの冷たい目、声、全部が頭に焼き付いてる。昼休み、クラスのやつらが「なあ、レン、昨日美術館でノワール出たらしいぞ!」とか話しかけてくるけど、俺は「へー、マジで? すげえな!」って適当に流す。内心、ドキドキしてるけどね。


で、放課後、俺はいつもの秘密基地――つまり自分の部屋――に戻って、次の計画を立てる。優にもっと近づきたい。もっと話したい。もっと、俺のこと見てほしい。次のターゲットは、優が毎週通ってるカフェ。あそこなら、怪盗モードじゃなくても、偶然を装って会えるかもしれない。俺、ノートに優の行動パターンを書き出す。月曜は17時、水曜は18時、金曜は16時半……マジでストーカーみたいだな、俺。でも、好きなんだもん、仕方ないじゃん?


ノートに書きながら、俺、ふと思う。優の心を盗むって、どういうことなんだろう? ただ追いかけられて、捕まるだけじゃ嫌だ。俺、優に、俺のこと――三条蓮のこと――ちゃんと見てほしい。怪盗ノワールじゃなくて、俺自身を。


「やばい、俺、本気で恋してんじゃん……」


俺、ノート閉じて、ベッドに倒れ込む。頭の中、優の顔でいっぱい。胸がギュッて締め付けられて、なんか、泣きそうになる。こんな気持ち、初めてだ。怪盗やってる時より、ずっとドキドキする。優、俺、どうしたら君の心、盗めるんだ?


***


一方、その頃。神楽優は、探偵事務所のデスクで、今回の事件の報告書を書いてた。クールな顔で、淡々とキーボードを叩く。けど、ふと手を止めて、モニターに映るノワールの映像を見つめる。スモークボムを使った逃走シーン。普通なら、ただの犯罪者として処理するだけ。でも、優の頭のどこかで、なんか引っかかる。


「あいつ……わざと、俺に逃げ道を見せてた?」


優、モニターに映るノワールのマスクを見つめながら、呟く。いつもなら、こんな感情的な考え、即切り捨てるのに。なぜか、今回は頭から離れない。ノワールのあの笑顔、声、動き。どこかで、見たことある気がする。優、眉を寄せて、考える。考える。考える。


「ノワール……お前、誰なんだ?」


その呟きは、静かな事務所に響いて、消えた。


***


俺、ベッドの上でノートを抱きしめながら、決意する。次は、カフェで優に会いに行く。怪盗じゃなくて、三条蓮として。偶然を装って、話しかけて、笑って、ちょっとでも近づきたい。だって、俺、優のこと、マジで好きなんだもん。限界だわ。もう、完全に限界。


「次、俺、絶対触れにいくぜ。優、待ってろよ!」


夜の新宿の空に、俺の声が響く。次の犯行予告、もう頭の中で出来上がってる。優、俺のこと、ちゃんと見ててくれよ。だって、俺の心、もう君に盗まれちゃってるんだから。

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