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第五話






 近藤は昭和7年12月で航空本部から海上勤務に異動となったが、その間の航空本部勤務は大分山本達にも影響を与える事になっていた。しかしながら近藤は12月で異動となり山本達に惜しまれつつも次の任地先である空母『加賀』艦長として『加賀』に着任したのであった。

 ちなみに着任は一三式艦攻で現れて着艦、そのまま艦長として着任という離れ業をしたのである。それはさておき、近藤は艦長として着任するのは『加古』以来であったが『加賀』対飛行隊での演習では見事な操艦をして飛行隊を唸らせる程であった。

 そんな中で近藤は艦政本部に呼ばれたのである。


「君に来てもらったのは他でもない。『加賀』の改装についてだ」

「はぁ、改装ですか」


 艦政本部長の杉中将の言葉に近藤はそう答える。


「ウム。今度の改装で『加賀』の艦橋に煙突を付けるか付けないかで議論になっているのだ。そこで艦長の君を呼んだというわけだ」

「成る程」


 杉中将の言葉に近藤は頷く。


「それならば……艦橋に煙突を一体化……付けてみてはどうです?」

「フム……理由はあるかね?」

「着艦時における気流ですね。今の煙突によって艦尾から排出される排煙が気流を乱し、艦上機の着艦を妨げるという欠陥ですので」

「確かにな。アメリカでも『レキシントン』と『サラトガ』がそのようにしているな。しかし、直立だと問題無いかね?」

「自分は技術者じゃないので何とも言えませんが……傾斜させてみてはどうですか?」

「成る程、傾斜か……だがそうなると右舷に重量がかさばらないかね?」

「両舷にバルジを付けるのはどうですか?」

「バルジか……」


 杉中将の問いに近藤はそう答えていき杉中将は頷いた。


「宜しい。艦長としての君の意見も十分に取り入れてみよう」

「ありがとうございます」


 斯くして空母『加賀』は史実と同じく1934年(昭和9年)6月25日より佐世保海軍工廠で改装工事が着手されるのであった。近藤の意見が取り入れたのかは分からないが艦橋と煙突を一体化し煙突の角度も26度に傾斜した艦橋が採用された。しかし、艦本の意見で採用されたとなっており真相は闇の中でもある。

 また、他にも20サンチ単装砲は全て撤去され航空機の数を確保する事になるのであった。なお、近藤はその前に少将に昇進していたが昭和10年3月まで『加賀』艦長としていた。

 史実であればこの時期は海軍大学校教頭であった。しかし、近藤が電探等の兵器開発を強行していたので其処が評価でマイナスを食らったのだ。結果、『加賀』艦長を引き続き継続し3月までの任期となったのである。

 そして3月からは軍令部第一部長に就任したのであった。


(史実より少し早い就任だが……)


 史実であればGF参謀長に就任してからの軍令部第一部長に異動であった。しかし、実際はGF長官ーー高橋三吉中将が近藤に対し嫌悪感を出されたからであった。


「近藤少将が参謀長だとやりにくい」


 高橋は内々で出された人事案に非公式でそう告げた事で近藤の参謀長内定が無くなったのだ。代わりに軍令部第一部長という形で手を打ったのが真相である。だが、近藤はポジティブに考えた。


(それならそれで電探や対空兵器の開発を促進だな)


 近藤は早速行動を開始した。相手は軍令部第二部であった。第二部は軍備担当でありこの頃の第二部長近藤より1期上の古賀峯一少将だった。


「電探や対空兵器の促進を願います」

「ククッ、やはり来ると思っていたよ」


 アポ後に古賀と面会した近藤は開口一番にそう言うと古賀は苦笑する。


「君の事は山本さん等から話を聞いていてね。僕は戦艦屋だがそれを両立しようとする君にも興味はある」

「光栄であります」

「君はセールスマンじゃないが、君の口から電探等の有効性を聞こうじゃないか」

「分かりました。ではーーー」


 古賀の言葉に近藤は電探の有効性等を説明し古賀は近藤の言葉に頷きつつ説明を終えた近藤に口を開いた。


「分かった。取り敢えず現物を見てからじゃないと量産を許可は出来ないかな」

「でしょうな。軍令部第一課長時代に第二部に具申はしてはいましたが……どうなったかはさっぱりです」

「分かった。此方から確認してみよう」


 古賀少将は頷く。早速調査され、電探開発は当初は予算があったが近藤が航空本部に左遷されてからは減少され続けており、来年度(昭和11年)には電探開発は凍結される寸前だったのが判明し古賀は直ちにそれらを撤回して予算を増やして電探開発を促進させるのであった。








「戦闘機無用論? どっからそんな論が出てきたんだ?」


 第二部と共同しての兵器開発等を取り組んでいた近藤であるがそんなある日、部下から『戦闘機無用論』の話を聞いたのである。


「はぁ、横空等で戦闘機パイロットを中心に話が広がっているようです」

「とんだ茶番だな。そんな話を信じた奴は問答無用で左遷させると言っておけ」

「宜しいのですか?」

「当たり前だ。今の海軍戦闘機はまだヒヨコなんだ、それをああしろ、こうしろと航空会社に無茶を言っているのが我々なんだ。まだまだ我慢が必要なんだ」


 この頃、海軍初の全金属単葉戦闘機である九試単座戦闘機が三菱航空機の堀越二郎によって開発中であり何なら2月には初飛行をしておりその話は近藤も知っていたのだ。

 そして数日後には近藤も各務ヶ原に行き九試単座戦闘機の飛行を見学するのである。


「堀越さん、これは量産出来るのですか?」

「と言いますと?」

「この試作機の発動機は寿五型です。この発動機を量産出来るのかという事です」

「それについては問題ありません」


 そう言ってきたのは中島航空機会社から派遣されていた技術者であった。


「この寿は五型ですが、試作機が採用されれば四一型という680馬力の発動機を量産機で搭載されます」

「何?」

「これも近藤少将のおかげですよ。近藤少将がドイツから大量に工作機械を輸入してくれたので開発ペースが早くなりました」


 技術者はそう言って近藤に頭を下げる。此処で近藤が手引きした工作機械輸入の恩恵が生きたのである。


「い、いやそんな……」


 急に褒められた近藤は恥ずかしくなり制帽を深く被るのである。それはさておき、九試単座戦闘機は翌年の昭和11年(1936年)に制式採用され96式艦上戦闘機(史実四号が一号となる)となるのである。なおこの96式艦戦、二号では近藤の入れ知恵により推力式単排気管が採用され二号では速度が450キロまで向上、更に三号では『寿』から『瑞星11型』(850馬力)に交換し武装強化で主翼に13.2ミリ機銃2挺が搭載されるのであった。

 また、他にも対空電探として陸上設置の一号一型が完成、その一号機が千葉県勝浦に配備されるのである。

 そして実験として沖合い100キロからの航空機測定では72キロで捕捉したのである。


「フム、72キロで捕捉か。それなら横須賀等からの戦闘機も何とか間に合いそうだな……」

「高度にもよりますが、恐らくは……惜しむらくは更なる改良をして150キロで捕捉したいです」

「成る程……確かに電探は使いようによっては化けるな……」


 見学していた古賀少将は納得するように頷く。


「分かった。電探の予算は増額しよう。本土は元より艦艇にも配備をするよう此方からも努力する」

「ありがとうございます古賀少将ッ」


 古賀少将の言葉に近藤は手を握るのであった。










「うーん……やはり陸軍と接触すべきか……」


 同年夏、近藤は家族と共に長野へ家族旅行をしていた。諏訪湖や善光寺等を観光しながら白馬岳の麓にある旅館に泊まりその日の夜、散歩をしつつ考えていた。憑依者である近藤は陸軍の戦車も知っていた。それは旧軍は元より海外の戦車の性能等もである。それを大学ノートに書き写していた。だが、どうも踏ん切りがつかなかったのだ。


「うーん……」


 散歩をしていた近藤だが、ふと山の中で光るモノが見えた。好奇心が出た近藤は山の周囲を散策して石段を見つけて登る。登っていくと、そこには古ぼけた鳥居があり、その鳥居の先にはこれまた古ぼけた神社があった。灯籠の中の蝋燭が煌々と灯りを照らす、近藤が見たのはこれだったのだ。神社に近づいた近藤だが、社務所の扉が開かれ中から一人の巫女が出てきた。


「あら、珍しいわね。参拝客かしら?」

「あ、あぁ。観光に来ていてね。灯りが見えたから来たんだ」

「そう、でもお賽銭は要らないわ。もうこの神社は廃社になったからね」

「そうなのかい?」

「えぇ……貧困というヤツね……あら……」


 巫女は近藤の顔を見て近寄りまじまじと近藤を見る。


「な、何かな……?」

「………貴方、魂がおかしいわね……」

「え……っ?」

「貴方、この世の人間じゃないでしょ?」


 巫女はそう言ってお祓い棒ーー『大幣』を取り出して近藤に向けた。


「この世に何を以て未練があるのかしら? まぁそれはさておき……この神社、最後の巫女として貴方を祓ってあげるわ!!」

「ちょッ」


 そう言って巫女は近藤に襲い掛かるのであった。














 これが近藤家三女神と呼ばれた最後の女性、白嶺零夢との出会いであった。






御意見や御感想等お待ちしていますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
>艦本の意見で採用された なーんか、長門の煙突の件と重なるな。
そういや幻想郷は諏訪湖畔にあるんでしたっけね。
羨ま…いや家族旅行中にそれはアカンのでは!?
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