第四十三話
「敵の潜水艦を発見!!」
発見したのは海防艦『御蔵』の見張り員であった。場所はパラワン島のパラワン水道であり、『御蔵』の他にも『大東』『日振』『昭南』『佐渡』『第四号』『第三十号』『稲木』がパラワン水道で哨戒活動をしておりその網に引っ掛かったのは『ガトー』級潜水艦『ダーター』『デイス』の2隻であった。と言っても見張り員が発見したのは接近してくる魚雷であった。その先に小さい光るモノ——潜望鏡を発見したのだ。
『大東』は直ぐに魚雷六本を回避する事が出来た。しかし、後に続いた四本は『御蔵』も回避出来なかった。『御蔵』は魚雷四本が命中し爆沈、乗員は脱出したのを確認出来ず総員戦死であった。しかし、『御蔵』の通報により他の『大東』や『日振』達は対潜戦闘を展開出来たのである。
「『御蔵』の仇討ちだ!!」
先に仕掛けたのは『大東』であった。『大東』は間近で『御蔵』が爆沈するのを見届けてしまったのだ。その怒りは海面下から息を潜める『ガトー』級潜水艦に向けたのである。
『大東』から一式爆雷投射機がポンポンと放たれ、一式爆雷が海面に沈んでいき、数秒後には爆発の水柱が吹き上がっていく。『日振』等も駆けつけ、爆雷を次々と投下していき水柱が吹き上がっていきやがては一際大きい水柱が吹き上がったのである。その周囲からは肉片や木材等が浮かび上がり撃沈を示す証拠となった。
これは戦後の調査で『ダーター』となったが、『デイス』もこの対潜戦闘で消息不明になっているのでどちらかとは分からなかった。その直後に三本の魚雷が『佐渡』の左舷に喰い込んで『佐渡』の艦体を三本に分かれさせる轟沈を喰らわすのである。
なお、『佐渡』を轟沈した潜水艦も『第四号』海防艦の爆雷により撃沈されており、戦後の調査では『デイス』と判定されている。
一連の対潜戦闘は宇垣中将らの第一遊撃部隊らがパラワン水道を通過する前に行われておりその為、第一遊撃部隊等は安心して航過する事が出来たのであった。
そして近藤らGF直卒隊と第一遊撃部隊第三部隊は進撃ルートの第四航路から進撃するのである。
その頃、囮となる小沢機動部隊は10月20日には内地を出撃し比島へ向かっていた。
機動部隊(囮部隊)
司令長官 小沢中将
参謀長 大林少将
旗艦『瑞鶴』
第二航空戦隊
『瑞鶴』【『烈風』72機 『彩雲』6機】
『雲龍』【零戦54機 『彩雲』3機】
第三航空戦隊
『天城』【零戦54機 『彩雲』3機】
『葛城』【同上】
第五航空戦隊
『笠置』【零戦54機 『彩雲』3機】
『阿蘇』【同上】
『生駒』【同上】
第三防空戦隊
『千歳』【零戦24機 天山6機】
『千代田』【同上】
第二戦隊第二小隊
『伊勢』『日向』
第十二戦隊
『駿河』(元『POW』)『常陸』(元『レパルス』)
第三十一戦隊
『五十鈴』『由良』
第三十二戦隊
『多摩』『長良』
警戒隊
『大淀』
第四十三駆逐隊
『松』『竹』『梅』『桃』
第五十二駆逐隊
『桑』『桐』『檜』『杉』
第六十一駆逐隊
『秋月』『照月』『涼月』『初月』
第六十二駆逐隊
『新月』『若月』『霜月』『冬月』
第六十三駆逐隊
『春月』『宵月』『夏月』『満月』
(果たして何処まで囮となれるか……少なくとも近藤長官がレイテ湾に突撃するまではやる……いや、やってやる!!)
近藤を慕う小沢中将はそう闘志を燃やしていた。なお、23日には敵潜水艦らしき雷跡を受けるが哨戒飛行中だった『天山』からの通報により早々と回避した事で事なきを得ていたのである。
10月23日、先に仕掛けたのは第二航空艦隊であった。第二航空艦隊はレイテ湾に停泊するマッカーサーの上陸船団とそれを護衛する第七艦隊に航空攻撃を仕掛けたのである。
第201空の『烈風』54機は先導役の『彩雲』2機からの誘導を受けつつ23日0830にレイテ湾上空に到着し制空権獲得の為に待ち構えていたF4F等を相手に激しい空戦を展開するのである。
「ジャップの戦闘機はジークを大型化した戦闘機です!!」
「……トラックやマリアナで出てきた『Sam』か」
部下からの報告に第77任務部隊第4群司令官のトーマス・スプレイグ少将は表情を歪めた。スプレイグ少将らの護衛空母部隊は接近してくる『烈風』の前に何とかF4Fを98機の発艦をさせたがパイロット達の疲労は強く残っていた。彼等は前日から第四航空軍からの航空攻撃に迎撃をしていたが疲れていたのだ。そこに第201空の『烈風』である。
数はF4Fが勝っていたが機体性能は完全に『烈風』が勝っていた。その為、空戦開始から僅か13分でF4Fは64機まで数を減らしていたのである。更にトーマス・キンケイド中将の旗艦である揚陸指揮艦『ワサッチ』の対空レーダーが新たに接近してくる航空機の編隊を探知したのである。
「凡そ180機程度の航空機です!!」
「クッ、まだ物資の揚陸が全て終わっていないという時に……ッ」
接近してきたのは第二次攻撃隊として放たれた第701空(彗星54機 九九式艦爆36機 一式陸攻24機)と第221空の零戦42機に第341空の『紫電改二』60機であった。彼等は全て爆弾と噴進弾を搭載した戦爆連合であったのだ。特に一式陸攻は『三式独1.5(150番)トン滑空式誘導爆弾』を搭載しており24機が投下した誘導爆弾は第70任務部隊第2群で支援射撃部隊として編成されていた戦艦『ミシシッピ』『ペンシルベニア』『テネシー』『カリフォルニア』に次々と命中したのである。
「ダメージ・コントロール!!」
「駄目です、火災が激し過ぎます!! このままでは弾薬庫に引火するかもしれません!!」
「〜〜ッ!! なら尚更消火を急がせろ!!」
「アイサー!!」
この時点で4隻は中破以上の判定となり、特に『テネシー』は弾薬庫に火がいつ入るか分からない状況となったのである。その隙に彗星隊18機が4隻に急降下を開始しトドメとも言える500キロ爆弾を叩きつけたのである。この攻撃で『ペンシルベニア』『テネシー』『カリフォルニア』は総員退艦が発令され『ミシシッピ』は大破したのである。
また、攻撃は他にも噴進弾を両翼に搭載した九九式艦爆隊等が輸送船を攻撃し弾薬補給船に命中した爆弾が誘爆して爆沈する程であった。この一連の攻撃で第七艦隊は支援射撃部隊の戦艦4隻を事実上喪失してしまいレイテ島への艦砲射撃が大きく滞ってしまうのである。
翌24日、第一遊撃部隊と第二遊撃部隊はシブヤン海に進入した。なお、第二航空艦隊所属の『彩雲』隊による航空偵察で敵空母部隊はサンベルナルジノ海峡付近にいる事を宇垣と南雲は掴んでおり上空警戒を厳にさせていた。また、この時の第38任務部隊は第2群がサンベルナルジノ海峡付近に、第3群がルソン島の東に、第4群がレイテ島付近にいた。その為、ハルゼーは第一遊撃部隊と第二遊撃部隊への攻撃は第2・3・4群の3個群を以って攻撃を開始することを決めるのである。
しかしながら0921に『矢矧』の13号対空電探が接近してくる航空機を探知し直ちに直掩の零戦隊3機が迎撃し偵察機であるTBFを撃墜する。しかし、撃墜される寸前に同乗していたエスリック中佐が放った『敵艦隊発見』の電文はハルゼーの下に届いたのである。
「全力出撃だ!! ジャップのフネを1隻残らず撃沈しろ!!」
第38任務部隊の攻撃隊が第一遊撃部隊を攻撃したのは1026であり『エセックス』『プリンストン』からの第一次攻撃隊48機であった。しかし、第一次攻撃隊が第一遊撃部隊上空に到着した時に上空を乱舞していたのは多数の零戦隊であった。それは『隼鷹』『飛鷹』『瑞鳳』『龍鳳』から発艦した零戦隊であったのだ。
「クソッ!! 待ち伏せかよ!!」
『ジークに後ろを取りつかれた!! 助けてくれ!!』
『何でこんなに大量のジークがーーー』
『ミッシェルがやられたぞ!!』
『ロナルドもやられた!! 俺たちは嵌められたんだ!!』
第一次攻撃隊は艦爆と艦攻は全て撃墜され帰還出来たのはF6F 8機という有様であった。なお、第二次攻撃隊(『ホーネット2』)33機も同様に迎撃され全機撃墜をされるのである。この報告にハルゼーは激怒したのである。
「戦力の逐次投入するのをやめろ!! 纏まっての攻撃隊を出せ!! 全く、上空に戦闘機がいるのなら分かるだろ!!」
「ア、アイサー!!」
ハルゼーの逆鱗に触れる事になったカーニー参謀長は直ぐに命令を各空母に伝えた。これにより第三次攻撃隊は少し時間が遅れたがそれでも160機余りの攻撃隊となり第一、第二遊撃部隊に襲い掛かるのである。
「今度は多めか……米軍も物量攻撃を頼みとしているか」
報告を受けた宇垣中将は唸るように呟く。零戦隊は必死に抵抗していたがその空戦の網から敵攻撃隊は抜け出し第一遊撃部隊に襲い掛かる。
「左舷に雷撃機7機!!」
「面舵イッパァァァァァァイ!!」
攻撃隊は執拗に『大和』と『武蔵』を狙ってくるが、『大和』艦長の森下大佐は操艦の神様でもあり『大和』を攻撃してきた艦爆や艦攻の攻撃は全て回避したのである。しかしながら『武蔵』は魚雷と爆弾を1発ずつが命中するがそれでも艦隊速度は22ノットを維持する事が出来たのである。
「『武蔵』は生きているな。なら問題はあるまい」
「しかし長官、敵の攻撃は激しくなっています。一旦、敵の攻撃圏内から退避しては如何ですか?」
参謀長の小柳少将はそう危惧し具申する。幾ら零戦隊がいるからと言っても空母の飛行甲板に穴を開けられたら使用不能になれば使えなくなり防空の傘が無くなる。小柳少将もそれを理解した上での具申であった。
しかしそこに通信兵が慌ただしく艦橋に駆け込んできた事で状況は一変したのである。
「台湾高雄に停泊している水母『日進』より緊急電!! 小沢機動部隊に敵機動部隊からの攻撃隊が来襲しているとの事です!!」
「ッ」
「長官、これはもしや……ッ」
「あぁ。小沢さん、やったな」
小柳少将の言葉に宇垣は笑みを浮かべる。第一遊撃部隊にはまだ届いていなかったが台湾高雄に停泊して無線指揮艦としていた水母『日進』は小沢機動部隊からの電文を受信していたのである。
『我、敵攻撃隊ト接敵中。囮ヲ開始ス』
エンガノ岬沖まで進出していた小沢機動部隊にハルゼーが食い付いた瞬間であった。
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