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第四十二話

何とか書き上げ









 沖縄を航空攻撃したハルゼー大将の第三艦隊はそのまま台湾方面に南下し台湾を攻撃しようとしていた。

 無論、台湾の高雄に基地と司令部を構えていた第二航空艦隊も索敵次第によっては攻撃しようとしていたがそれを近藤は止めたのである。


「何故攻撃を取り止めるのですか!? 台湾を通過しようとしているのですぞ!!」


 話を聞いた福留参謀副長が近藤に具申をするが近藤は首を横に振る。


「『捷一号作戦』前に無駄な力を使う必要はあるまい。二航艦の山田には防空のみに徹するよう伝えてある」

「しかし……」

「頭を冷やせ福留。頭に血が昇った方がこの戦、負けるぞ」

「……はっ……」


 福留もこれ以上は無理と思ったのか、そこで引き下がるのである。そして偵察機が台湾沖を南下してくる米第三艦隊を発見したのは10月12日早朝であった。しかもこの時、彩雲が発見した時は攻撃隊を発艦中であったのだ。


「奴等が台湾に来るのは間違いない。全力迎撃だ!!」


 第二航空艦隊司令長官の山田中将は攻撃ではなく全力迎撃を発令させた。山田中将は以前に第25航空戦隊司令官としてラバウルに赴任し米軍の物量攻撃を経験していたのだ。だからこそ近藤からの防空命令には頷いたのだ。第二航空艦隊はてんやわんやとなるがそれでも明朝から各攻撃機等は空中退避をして損失の回避に務め、戦闘機隊は接近してくる米第三艦隊からの攻撃隊を迎撃したのである。


『岩本隊長!! 後方に猫1機!!』

「分かっている!!」


 第202空の小隊長を勤める岩本飛曹長は部下からの無線連絡に感謝しつつ後方から迫り来るF6Fを見ながら左フットバーを蹴飛ばし左旋回に移行する。零戦譲りの格闘性能は『烈風』も引き継いでおりあっという間に旋回でF6Fを引き離しF6Fの後方に躍り出た。


「マイガッ!?」


 米パイロットはそう言うのが最後の言葉であり、その直後に20ミリ機銃弾が風防に命中し頭が吹き飛び、風防内は瞬く間に大量の血が付着、発動機から炎を噴きながら海面に向かって墜落していくのである。山田中将は近藤からの命令を従順に守り、台湾に襲来した米攻撃隊は戦闘機186機、艦爆107機、艦攻146機を喪失する羽目になる。対して第二航空艦隊は空中退避等もあった事で戦闘機79機(63機不時着等によりパイロット生存)、偵察機19機(6機不時着等によりパイロット等生存)の被害だけで済んだのである。


「チッ、思っていたよりも被害が大きいな」

「補充は直ぐに可能ですが……」

「エリートのカーニー君は分かってないな。機体やパイロットは直ぐに補充されるだろうが、練度は低い。マッカーサーのフィリピン攻略作戦は苦労するかもしれんぞ」

「…………………」


 ハルゼーの言葉にカーニー参謀長はどうにも言えない表情をする。それは現実化となり第三艦隊を苦しめる羽目にもなったのである。

 10月17日、8時20分頃、レイテ湾東湾口に浮かぶ小島スルアン島に軽巡洋艦2、駆逐艦4、輸送駆逐艦8、掃海艇3の支援のもと、第6レンジャー大隊D中隊が上陸した。監視員程度しか駐留していない同島は簡単に制圧され連絡は途絶えた。同時刻にはマニラやダバオなどにも第38任務部隊第1群による空襲が行われ、13時には台湾南部にB-29による空襲が行われた。そしてスルアンを占領した攻略部隊はレイテ湾への侵入を開始したのである。


「米軍がレイテ島に? 馬鹿な、早すぎるッ」


 報告を受けた南西方面部隊司令長官の三川中将は舌打ちをしつつも『彩雲』の航空偵察を実施させた。そのうちの1機の『彩雲』が危険を犯す事を承知の上で低空飛行での航空偵察を実施した事でスルアン島に上陸している米軍を発見するのである。また、第四航空軍も偵察機を出すが敵を発見できなかった。それでも富永恭次第四航空軍司令は各地の空襲状況から本格的な上陸もしくは有力な一部部隊の上陸と判断し、同日夜に南方軍司令官寺内寿一大将に対し捷一号作戦の発動を要請しているのである。


「長官、日吉の草鹿参謀副長より『GF軍令作特第14号捷一号作戦警戒』が発令されました」

「ん。予定通り……だな」


 ブルネイ泊地に停泊する旗艦『高雄』の艦橋で白石参謀長は近藤にそう報告すると近藤も笑みを浮かべる。ブルネイ泊地には都合上、4個艦隊が勢揃いしていた。




 第一遊撃部隊(第一艦隊を基幹)

 司令長官 宇垣纏中将

 参謀長 木村進少将

 旗艦『大和』

 第一部隊

 第一戦隊

 『大和』『武蔵』『長門』『陸奥』

 第五戦隊

 『妙高』『羽黒』

 第二水雷戦隊

 『能代』

 第二駆逐隊

 『早霜』『秋霜』『清霜』『鈴波』

 第三十一駆逐隊

 『長波』『高波』『大波』『清波』

 第三十二駆逐隊

 『浜波』『藤波』『早波』『巻波』

 第一防空戦隊

 『瑞鳳』

 【零戦27機 天山3機】

 『隼鷹』

 【零戦51機 天山6機】


 第一遊撃部隊

 第二部隊

 司令官 鈴木中将(第三戦隊司令官兼任)

 第三戦隊

 『金剛』『榛名』

 第七戦隊第二小隊

 『鈴谷』『熊野』

 第八戦隊

 『利根』『筑摩』

 第十戦隊

 『矢矧』

 第四駆逐隊

 『野分』『嵐』『萩風』『舞風』

 第十七駆逐隊

 『浦風』『磯風』『谷風』『浜風』

 第二防空戦隊

 『龍鳳』

 【零戦27機 天山3機】

 『飛鷹』

 【零戦51機 天山6機】


 第一遊撃部隊

 第三部隊

 司令官 西村中将(第二戦隊司令官兼任)

 第二戦隊第一小隊

 『山城』『扶桑』

 第七戦隊第一小隊

 『最上』『三隈』

 第十六戦隊

 『鬼怒』『浦波』

 第二十一戦隊

 『那智』『足柄』

 第一水雷戦隊

 『阿賀野』

 第七駆逐隊

 『曙』『潮』

 第八駆逐隊

 『山雲』『満潮』『朝雲』『時雨』

 第二十一駆逐隊

 『初春』『若葉』『初霜』



 第二遊撃部隊

 司令長官 南雲中将

 参謀長 田中頼三中将

 旗艦『霧島』

 第十一戦隊

 『比叡』『霧島』

 第六戦隊

 『青葉』『衣笠』『古鷹』『加古』

 第十四戦隊

 『穂高』『天塩』

 第四水雷戦隊

 『那珂』

 第二二駆逐隊

 『夕立』『村雨』『春雨』『五月雨』

 第二四駆逐隊

 『海風』『山風』『江風』『涼風』





 GF直卒隊

 司令長官 近藤大将

 旗艦『高雄』

 第四戦隊

 『高雄』『愛宕』『摩耶』『鳥海』

 第十三戦隊

 『石狩』

 第三水雷戦隊

 『酒匂』

 第十五駆逐隊

 『黒潮』『親潮』『陽炎』『早潮』

 第十六駆逐隊

 『初風』『雪風』『天津風』『時津風』

 第十八駆逐隊

 『霞』『不知火』




「南雲達を集めてくれ。最後の作戦会議だ」

「分かりました」

(さて……どう出るかな……)


 出撃準備の作業を行う水兵達を見つつ近藤はそう思う。そして南雲達が作戦室に集まり会議が始まる。


「恐らく、近日中にはレイテ島にマッカーサーの米軍は上陸するだろう。我々の狙いはマッカーサーの上陸船団にある」

「それは分かっていますが……」

「我々が到着する頃には全て揚陸している可能性も……」

「その時は揚陸地点を艦砲射撃をすれば良い。要はマッカーサーの上陸船団を叩くのが狙いだ」


 南雲と宇垣の言葉に近藤はニヤリと笑う。なお、台湾防空戦で被害を乗り切った山田中将の第二航空艦隊は比島に進出し攻撃目標をハルゼーの第三艦隊ではなくマッカーサーの上陸船団に切り替えていた。


「此度の戦は敵空母ではない!! マッカーサーの上陸船団を叩きのめし、比島上陸を遅らせる事にある!!」


 山田中将は比島に司令部を置きたかったが、近藤の命により台湾高雄に司令部を置いた。これは通信指揮能力を考慮しての事でありパイロット達からは「司令部は乗り込まないのか」と不満が続出していたりする。

 それはさておき、近藤は艦隊を二つに分けサマール島方面とスリガオ海峡方面から攻める事にした。サマール島方面からは第一遊撃部隊の第一部隊と第二部隊に第二遊撃部隊が進出しスリガオ海峡方面から第一遊撃部隊第三部隊とGF直卒隊が進出する事にしたのである。

 南雲や宇垣らは危険過ぎると反対をしたが、近藤は押し切った。


(此処を、スリガオ海峡を乗り切らねば西村や第三部隊に活路は無いッ)


 当初は第三部隊も第一部隊等に同行予定だったが『大和』らと若干の速度低下もあり囮になる可能性もあったのでむしろ近藤は史実と同じくスリガオ海峡からの突撃を選択したのだ。但し、自分達直卒隊も突撃するというお釣り付きである。

 また、近藤は史実の反省を活かすとして各旗艦に通信科(シンガポールやインドネシアで暇そうにしていた各根拠地隊等)の通信兵を大量に招集し一直8時間交代の三直で当たらせる事にし、史実のような誤認、誤報が飛び交う事が無いようにしたのである。(史実『ヤキ1カ』電)

 また、日吉の他にも台湾高雄に水上機母艦『日進』(戦没せず海上護衛隊に移管)、カムラン湾に潜水母艦『長鯨』を進出させ臨時通信艦とし無線の飽和状態をなるべく防ごうとしたのである。

 斯くして10月22日1000、第一遊撃部隊を筆頭にブルネイを出撃したのであった。








御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 ヤキ1カ』電 にわかミリタリーファンですが、『謎の反転』しか知らなかったので興味深かったです。 いよいよ乾坤一擲の迎撃戦!! 次回も楽しみにしています。
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