第四十一話
「艦隊決戦で敵上陸船団を叩く……というわけですかな?」
近藤の言葉の意味を理解した南雲はそう問うと近藤は無言で頷く。
「では、機動部隊の出番は無いと?」
「いや、ある……囮でな」
近藤はそう言って艦隊編成計画書を南雲らに配布し、南雲らは計画書の中身を見て目を見開くのである。
第一遊撃部隊(第一艦隊を基幹)
司令長官 宇垣纏中将
参謀長 木村進少将
旗艦『大和』
第一部隊
第一戦隊
『大和』『武蔵』『長門』『陸奥』
第五戦隊
『妙高』『羽黒』
第二水雷戦隊
『能代』
第二駆逐隊
『早霜』『秋霜』『清霜』『鈴波』
第三十一駆逐隊
『長波』『高波』『大波』『清波』
第三十二駆逐隊
『浜波』『藤波』『早波』『巻波』
第一防空戦隊
『瑞鳳』
【零戦27機 天山3機】
『隼鷹』
【零戦51機 天山6機】
第一遊撃部隊
第二部隊
司令官 鈴木中将(第三戦隊司令官兼任)
第三戦隊
『金剛』『榛名』
第七戦隊第二小隊
『鈴谷』『熊野』
第八戦隊
『利根』『筑摩』
第十戦隊
『矢矧』
第四駆逐隊
『野分』『嵐』『萩風』『舞風』
第十七駆逐隊
『浦風』『磯風』『谷風』『浜風』
第二防空戦隊
『龍鳳』
【零戦27機 天山3機】
『飛鷹』
【零戦51機 天山6機】
第一遊撃部隊
第三部隊
司令官 西村中将(第二戦隊司令官兼任)
第二戦隊第一小隊
『山城』『扶桑』
第七戦隊第一小隊
『最上』『三隈』
第十六戦隊
『鬼怒』『浦波』
第二十一戦隊
『那智』『足柄』
第一水雷戦隊
『阿賀野』
第七駆逐隊
『曙』『潮』
第八駆逐隊
『山雲』『満潮』『朝雲』『時雨』
第二十一駆逐隊
『初春』『若葉』『初霜』
第二遊撃部隊
司令長官 南雲中将
参謀長 田中頼三中将
旗艦『霧島』
第十一戦隊
『比叡』『霧島』
第六戦隊
『青葉』『衣笠』『古鷹』『加古』
第十四戦隊
『穂高』『天塩』
第四水雷戦隊
『那珂』
第二二駆逐隊
『夕立』『村雨』『春雨』『五月雨』
第二四駆逐隊
『海風』『山風』『江風』『涼風』
機動部隊(囮部隊)
司令長官 小沢中将
参謀長 大林少将
旗艦『瑞鶴』
第二航空戦隊
『瑞鶴』【『烈風』72機 『彩雲』6機】
『雲龍』【零戦54機 『彩雲』3機】
第三航空戦隊
『天城』【零戦54機 『彩雲』3機】
『葛城』【同上】
第五航空戦隊
『笠置』【零戦54機 『彩雲』3機】
『阿蘇』【同上】
『生駒』【同上】
第三防空戦隊
『千歳』【零戦24機 天山6機】
『千代田』【同上】
第二戦隊第二小隊
『伊勢』『日向』
第十二戦隊
『駿河』(元『POW』)『常陸』(元『レパルス』)
第三十一戦隊
『五十鈴』『由良』
第三十二戦隊
『多摩』『長良』
警戒隊
『大淀』
第四十三駆逐隊
『松』『竹』『梅』『桃』
第五十二駆逐隊
『桑』『桐』『檜』『杉』
第六十一駆逐隊
『秋月』『照月』『涼月』『初月』
第六十二駆逐隊
『新月』『若月』『霜月』『冬月』
第六十三駆逐隊
『春月』『宵月』『夏月』『満月』
GF直卒隊
司令長官 近藤大将
旗艦『高雄』
第四戦隊
『高雄』『愛宕』『摩耶』『鳥海』
第十三戦隊
『石狩』
第三水雷戦隊
『酒匂』
第十五駆逐隊
『黒潮』『親潮』『陽炎』『早潮』
第十六駆逐隊
『初風』『雪風』『天津風』『時津風』
第十八駆逐隊
『霞』『不知火』
第六艦隊(潜水艦隊)
司令長官 三輪中将
甲潜水部隊(ミンダナオ島東方海域哨戒)
伊号潜水艦12隻
乙潜水部隊(レイテ・サマール島東方海域哨戒)
伊号潜水艦6隻
呂号潜水艦6隻
内地待機部隊
司令長官 山口中将
第一航空戦隊(日本海)
『大鳳』『飛龍』
第四航空戦隊(日本海)
『加賀』『翔鶴』
「待って下さい長官!! 何故、私を置いて行くのですか!!」
予想通り、反論したのは山口中将であった。あまりの怒りに山口は顔を真っ赤にしていた。
「今回の戦いに空母は囮だ。だからこそ、主力空母の半分は内地に残り航空兵力の増強を行ってもらう必要がある」
「ですが!!」
「機動部隊は次の戦いこそが本番になる」
尚も反論する山口に近藤は指揮棒をフィリピンから沖縄に向けた。その様子に南雲や小沢らは目を見開く。
「まさか……長官ッ」
「奴等がフィリピンを攻略しようとしないにしても、奴等の次の狙いは沖縄だ」
「本土では無いので……?」
「沖縄を攻略すればアメリカは大陸、満州方面にも手を出せる。奴等、既に戦後の構築も考えているようだよ」
小沢の言葉に近藤は肩を竦める。
「では空母の温存はその為に……?」
「あぁ。沖縄、引いては沖縄でなくても次の戦いで海軍は全艦を突撃させる。だから山口、此処は俺の顔に免じて許してくれ」
「……分かりました。長官がそう仰るのであれば私も異論は有りません。次の戦いで死力を尽くします」
近藤の言葉に山口もそう言うのである。斯くして海軍はフィリピン防衛である『捷一号作戦』の為に動き出すのである。
海軍は第二航空艦隊を主力にフィリピンミンダナオ島への航空基地を建設を急がせ、台湾の高雄を後方援護基地としたのである。このミンダナオ島航空基地により水上部隊は大いに負担が軽減されるのであった。
そして陸軍もフィリピン防衛の為に部隊の増強を急がせていた。
「ルソン防衛の為にもレイテ決戦は到底有りえぬ」
9月26日、第14方面軍司令官に就任した山下大将はレイテ決戦を叫ぶ佐官達に向けてそう一蹴する。第14方面軍はミンダナオ島等の第35軍、ルソン島に第41軍等を編成しており書類上では約10個師団が防衛していた。だが、まだ半分近くは海上輸送途中であり、まだ山下大将の手元にいないのが辛いところである。
ちなみに輸送途中の戦車第二師団は何とか量産が間に合った四式中戦車2個中隊、三式中戦車4個中隊等が基幹とされており打撃力や機動力は米軍が保有するM4中戦車以上であったりする。
そんな防備最中の10月10日、再編成されたハルゼー大将の第三艦隊(第38任務部隊)が大胆にも沖縄方面に接近し沖縄本島及び周辺の島々に対し航空攻撃を開始した。
後に『十・十空襲』と記録される航空攻撃であった。
「ジャップを殺せ!! 『キルジャップ・キルジャップ・キルモアジャップ』だ!!」
第三艦隊旗艦『ニュージャージー』でハルゼー大将はそう吠える。この時、沖縄那覇港には民間人の疎開船団である『オ・サ船団04』の輸送船8隻と海防艦8隻と潜水艦からの攻撃で航行不能状態だった潜水母艦『迅鯨』等が停泊していたのだ。
「敵機動部隊からの攻撃隊接近!!」
「空襲警報を発令しろ!! 戦闘機は出せるだけ出せ!!」
陸海合わせて100機近くの戦闘機は出せたが第三艦隊は延べ1200機近くの攻撃隊を五波にも及んで繰り出したので半数近くが撃墜される事になる。
そして沖縄も防備が進んでいたとはいえ、この航空攻撃は対処しきれず那覇の街並みは史実と同じく九割も火災により焼失してしまうのである。
「クソッ!! 沖縄が空襲されるとは……」
「ハルゼーに一杯食わされましたな……」
怒りを発する白石参謀長に首席参謀の奥宮中佐は悔しそうに言う。
「まさか米軍はフィリピンではなく先に沖縄の攻略を……?」
「それは無いな」
草鹿参謀副長の呟きに今まで黙っていた近藤は口を開き明確に否定した。
「沖縄を攻略しても南方はまだ我々が抑えている。米軍はそこまで冒険出来るわけじゃない」
「その沖縄ですが……軍令部からは第二航空艦隊を沖縄に配備してはどうかという案があるらしいです」
近藤の言葉に福留参謀副長はそう言う。軍令部と調整している福留は顔も広いからそう言った話も序に集めてくれるのである。
「アホか。福留、軍令部には『捷一号作戦』を否定するのかと伝えておけ」
「分かりました」
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