第十五話
最初に内地を発したのは南雲中将の第一航空艦隊であり、広島湾柱島泊地から厳重な無線封止を実施しつつ5月27日に出撃したのである。翌5月28日にはミッドウェー島占領部隊輸送船団が水上機母艦『千歳』駆逐艦『黒潮』『親潮』らと共にサイパン島を出航した。その同日には近藤の第二艦隊が山本長官の主力部隊より一日早く出撃したのである。
各艦隊の編成は以下の通りであった。
第一航空艦隊
指揮官
南雲忠一中将
第一航空戦隊(南雲中将兼任)
『赤城』
【零戦×21機 九九艦爆×21機 九七式艦攻×21機】
『加賀』
【零戦×21機 九九艦爆×21機 九七式艦攻×30機】
第二航空戦隊
司令官 山口多聞少将
『飛龍』
【零戦×21機 九九艦爆×21機 九七式艦攻×21機】
『蒼龍』
【零戦×21機 九九艦爆×21機 九七式艦攻×21機 二式艦偵×2機】
第三航空戦隊第二小隊
『瑞鳳』
【零戦24機 九七式艦攻6機】
第八戦隊
司令官 阿部弘毅少将
『利根』『筑摩』
【零式三座水偵×6機 九五式水偵×4機】
第三戦隊第二小隊
『榛名』『霧島』【九五式水偵×6機】
第十戦隊
司令官 木村進少将
『長良』(九四式水偵×1機)
第四駆逐隊
司令 有賀幸作大佐
『嵐』『野分』『萩風』『舞風』
第十駆逐隊
司令 阿部俊雄大佐
『風雲』『夕雲』『巻雲』『秋雲』
第十七駆逐隊
司令 北村昌幸大佐
『磯風』『浦風』『浜風』『谷風』
部隊直率
油槽艦『東邦丸』『極東丸』『日本丸』『国洋丸』『神国丸』『日朗丸』『豊光丸』『第2共栄丸』
主力部隊主隊
指揮官 山本五十六大将
本隊
連合艦隊司令長官直率
『大和』(零式観測機×3機 、零式三座水偵×3機)
『長門』『陸奥』(零式観測機×合計6機)
警戒隊(第三水雷戦隊)
指揮官 橋本信太郎少将
『川内』(九一式水偵×1機)
第一一駆逐隊
司令 荘司喜一郎中佐
『吹雪』『白雪』『初雪』『叢雲』
第一九駆逐隊
司令 大江覧治大佐
『磯波』『浦波』『敷波』『綾波』
第三航空戦隊第一小隊
『鳳翔』
【九六式艦戦×11機、九六式艦攻×8機】
『夕風』
特務隊
『千代田』(零式三座水偵×28機)
『日進』(魚雷艇×5隻)
第一補給隊
『有明』
油槽艦
『鳴戸丸』『東栄丸』
主力部隊警戒部隊
指揮官 高須四郎中将
第二戦隊
『伊勢』『日向』『扶桑』『山城』
(各艦零観×6機 合計24機)
警戒隊
指揮官 岸福治少将
第九戦隊
『北上』『大井』
第二四駆逐隊
司令 平井泰次大佐
『海風』『江風』
第二七駆逐隊
司令 吉村真武大佐
『夕暮』『白露』『時雨』
第二〇駆逐隊
司令 山田雄二大佐
『天霧』『朝霧』『夕霧』『白雲』
第二補給隊
『山風』
油槽艦
『さくらめんて丸』『東亜丸』
攻略部隊(第二艦隊基幹)
指揮官 近藤信竹中将
第四戦隊第一小隊
『高雄』『鳥海』
(零観×4機、零偵×2機)
第五戦隊
司令官 高木武雄中将
『妙高』『羽黒』
(零観×4機、零偵×2機)
第三戦隊第一小隊
司令官 三川軍一中将
『金剛』『比叡』
(九五式水偵×6機)
第五航空戦隊
『瑞鶴』
【零戦27機 九九艦爆×18機 九七式艦攻×27機】
『雲龍』
【零戦21機 九九艦爆×18機 九七式艦攻×18機】
第四水雷戦隊
司令官 西村祥治少将
『由良』
(九四式水偵×1機)
第二駆逐隊
司令 橘正雄大佐
『五月雨』『春雨』『村雨』『夕立』
第九駆逐隊
司令 佐藤康夫大佐
『朝雲』『峯雲』『夏雲』
油槽艦
『健洋丸』『玄洋丸』『佐多丸』『鶴見丸』
攻略部隊支援隊
司令官 栗田健男少将
第七戦隊
司令官 栗田健男少将
『最上』『熊野』『三隈』『鈴谷』
(零観×8機、零偵×4機)
第八駆逐隊
司令 小川莚喜大佐
『朝潮』『荒潮』
支援隊直率
油槽艦
『日栄丸』
攻略部隊護衛隊
司令官 田中頼三少将
第二水雷戦隊
司令官 田中頼三少将
『神通』(九四式水偵×1機)
第一五駆逐隊
司令 佐藤寅治郎大佐
『親潮』『黒潮』
第一六駆逐隊
司令 渋谷紫郎大佐
『雪風』『時津風』『天津風』『初風』
第一八駆逐隊
司令 宮坂義登大佐
『陽炎』『不知火』『霞』『霰』
護衛隊直率
第一号型哨戒艇:第1号哨戒艇、第2号哨戒艇
第三十一号型哨戒艇:第34号哨戒艇
油槽艦
『あけぼの丸』
輸送船
『清澄丸』『ぶらじる丸』『あるぜんちな丸』『北陸丸』『吾妻丸』『霧島丸』『第二号東亜丸』『鹿野丸』『明陽丸』『山福丸』『南海丸』『善洋丸』
他にも先遣部隊として第六艦隊もいるが主に戦う事になったのはこのうちの2個艦隊であった。ちなみに四航戦はAL作戦に投入される事になっており角田少将の第二機動部隊として大湊から出撃する事になっている。
(取り敢えずは何とかなってもらいたいな……)
旗艦『高雄』の艦橋で近藤はそう思う。6月4日、主力部隊旗艦『大和』の聯合艦隊司令部敵信班がミッドウェー島付近で敵空母らしい呼び出し符丁を傍受した。直ぐに山本の下にも届けられた。
「フム、やはり出てきたか。直ちに南雲にも通報するように」
「お待ち下さい長官」
それを制したのは黒島主席参謀であった。
「今は無線封止中です。無闇な電波の発信は敵に傍受される恐れもあります。また、『赤城』の通信班も優秀な者達を揃えていますのでこの無電も傍受しているでしょう」
黒島の言葉は正論だった。『赤城』の通信班も優秀な者達で編成されているので傍受はしていると判断していた。しかしながら彼は空母というモノを理解していなかった。空母はマストが低く敵通信傍受の類が期待出来ないのでありそれは草鹿少将も宇垣参謀長に具申しており何かの兆候があれば直ぐに通報してもらいたいと言っていたが黒島の主張が正論だったので通報は取りやめとなったのである。その為第一航空艦隊は空母がいるという認識が出来なかったのである。無論、これは近藤の方でも傍受は出来ていなかった。
そして同日午後一時から上陸船団はミッドウェー島からの攻撃隊による爆撃を受けるが上空警戒の零戦12機の妨害で被害は無かった。しかしながら警戒はどの艦隊でもするようになる。
6月5日0130(現地時間0430)、南雲中将の第一航空艦隊はミッドウェー島空襲隊を発艦させた。攻撃隊は史実と同じく零戦36機、艦爆36機、艦攻36機であり総隊長は虫垂炎の為に入院した淵田の代わりに『飛龍』の友永大尉が総隊長となっている。そして残りの機体については対艦兵装で待機していた。
「……臭うな……」
第二航空戦隊司令官の山口少将は不意にポツリとそう呟いた。
「は?」
「臭うぞ……空母がいるぞ……」
伊藤参謀の問いに山口少将はそう答える。
「万が一もある、整備員達には即時動ける事を指令してくれ」
「分かりました」
山口少将はそう指令を出す。なお、第二艦隊で五航戦となった『瑞鶴』『雲龍』からダメ出しとも言えるミッドウェー島への第二次攻撃隊が発艦した。その数は零戦30機、艦爆36機、艦攻36機であり総隊長は関衛少佐である。
そして0316(0616)、友永大尉の第一次攻撃隊はミッドウェー島に到着し攻撃を開始する。
『隊長、滑走路に敵機がいません!!』
「読まれたか?」
操縦士の報告に友永大尉は舌打ちをしつつ爆撃を敢行する。
「どうだ?」
『駄目です。施設等はまだ無傷ですね』
友永大尉の問いに眼下のミッドウェー島を見ていた機銃手はそう答える。確かに地上施設等は無傷に見えた。
「やむを得ん……機動部隊に打電!! 『カワ・カワ・カワ』だ!!」
友永大尉機は『カワ・カワ・カワ』ーー第二次攻撃の要ありを打電したのである。
「友永大尉機より入電!! 『爆撃効果不十分、ミッドウェー島ヘノ再攻撃ノ要アリト認ム』以上です」
「南雲長官、一木支隊2000名が島に迫っています。此処は第二次攻撃を行うべきかと思います」
「しかし第二艦隊からも攻撃隊を出すのだろ? それで十分ではないか?」
「いえ、五航戦の練度から見て攻撃は失敗するかもしれません。此処は第二次攻撃を此方でも行うべきです」
草鹿と話していた南雲に具申するように源田も具申する。二人の具申は正論のように思えた南雲はゆっくりと首を縦に動かすのである。
そして『赤城』から発光信号が発せられた。
「『赤城』より発光信号!! ミッドウェー島への第二次攻撃を行う。直ちに対艦兵装から陸装へ兵装転換を実施せよとの事です!!」
「馬鹿な!? 第二艦隊からの航空攻撃もある事を忘れたのか!?」
報告を聞いた山口少将は思わず席から立ち上がる。
「恐らくは五航戦の練度が不十分と認識したのでは無いですか?」
「ムゥ。南雲さんなら大丈夫だが草鹿と源田ならそう言うかもしれんな」
出撃前、敵空母から攻撃された場合はどうするかという研究があったがその時に源田は「零戦隊は無敵である。各艦長は回避に専念すべし」という回答に山口も呆れていたが物事を上手く考えやすいという認識しかない。
「如何なさいますか?」
「……一先ず一個中隊9機分は陸用爆弾への兵装転換だ。敵機動部隊が出てきたとしても先にコイツらが使える」
「分かりました。飛行長、それで頼む」
「はッ!!」
(この兵装転換……吉と出るかそれとも……)
言い寄れぬ不安がある山口少将は口には出せなかったのである。
「関少佐機より入電!! 『爆撃成功。以後ノ攻撃必要無シ』以上です」
「ん。関少佐なら問題無いだろう」
近藤は通信兵からの報告に頷く。
「恐らく第一航空艦隊も敵機動部隊に備えているでしょうな」
「……そう願いたいものだよ」
「と言いますと?」
近藤の呟きに白石参謀長が質問する。
「これまで一航艦が主力になって戦争をやってきたからな。草鹿や源田達も横槍をされて嫌がっているだろ」
「……何とも馬鹿らしいですな」
近藤の言葉に溜め息を吐く白石である。なお、関少佐機が放った電文は第一航空艦隊でも受信していた。
「関少佐なら心配は無いと思います」
「ならミッドウェー島への攻撃はしなくても良いな」
そう司令部で話していた時、通信兵が駆け込んできた。
「利根四号機より入電!! 『敵ラシキモノ10隻見ユ。ミッドウェーヨリ方位10度、240浬』以上です」
「敵らしき……敵艦隊か?」
「まさか、空母では?」
「分からん。長官、敵らしきでは不十分です。此処は艦種特定の指示電を打たせます」
「ウム」
草鹿は「艦種知らせ」と指示をした。この時の時刻は0447(0747)であった。そしてそれとほぼ同時に『赤城』の21号対空電探に接近してくる航空機の編隊を探知したのである。
直ちに防空空母となった『瑞鳳』から飛行甲板で待機していた零戦12機が発艦していく。また、各空母からも3機ずつ発艦しての12機が追加され36機の零戦でミッドウェー島から飛来する敵攻撃隊を迎撃するのである。
そのミッドウェー島からの攻撃隊を迎撃中に利根四号機からの入電が入った。
『敵兵力ハ巡洋艦5隻、駆逐艦5隻』
0520頃に入った入電は南雲司令部ではホッとしていた。空母がいなければ攻撃は容易かったからだ。しかし0530に追加電が入ってきたのだ。
『敵ハソノ後方ニ空母ラシキモノ1隻伴ウ。ミッドウェー島ヨリ方位8度、250浬』
この報告に南雲司令部は騒然とした。
「直ちに攻撃隊を出しましょう!!」
「第二次攻撃隊は陸用爆弾を搭載している。対艦兵装出なければならない」
「飛行甲板に穴くらいは開けられます!!」
「効果は薄い!! やはり此処は兵装転換だ!!」
「『飛龍』より発光信号!! 『直チニ攻撃隊発進ノ要アリト認ム』!!」
二航戦の山口少将もそう具申してきた。しかし草鹿参謀長は首を横に振る。
「ミッドウェー島攻撃隊をどうするつもりだ!! 彼等は燃料はほぼ尽きかけている、大事な機体を無闇に破壊するというのか!!」
間もなく到着する友永大尉の攻撃隊の収容もあったのだ。結局、南雲は山口少将の具申を黙殺し友永大尉の攻撃隊収容を優先させた。そして各空母で攻撃隊発艦準備が急がれるも米機動部隊から発艦したと思われる敵攻撃隊の断続的な攻撃を浴びる事になる。それでも迎撃隊の零戦隊は獅子奮迅の戦いを見せるのである。
そして0722(1023)、第一航空艦隊上空に『ヨークタウン』と『エンタープライズ』から発艦したSBDドーントレス47機が到着。しかし同高度には零戦11機が警戒飛行をしており零戦隊は直ぐに攻撃を開始。
マクラスキー少佐とレスリー少佐は間髪入れずに突撃命令を発し急降下させた。
「敵ィィィィィィィィ!! 直上ォォォォォォォォォォォォォ!! 急降下ァァァァァァァァァァァァァ!!」
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