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プロローグ

見切り発車です






「キンケイド司令、第二次攻撃隊が発艦を開始します」

「ウム」


 1942年10月26日サンタ・クルーズ諸島沖、第16任務部隊司令官のトーマス・キンケイド少将は、自身が乗艦する空母『エンタープライズ』の飛行甲板から発艦していく第二次攻撃隊19機を見学していた。第二次攻撃隊はF4F8機、SBD3機、TBF8機の19機と少なかったが、離れたところにいるジョージ・マレー少将の第17任務部隊は正規空母『ホーネット』を主力とした機動部隊であ、『ホーネット』からは先に第一次攻撃隊29機(F4F8機、SBD15機、TBF6機)が発艦していたのだ。


「……今日こそは我々のラッキー・デイにしたいところだな……」


 1000ポンド爆弾を胴体下に搭載し、発艦していくSBDを見送りながらキンケイド少将は呟きを漏らした。米軍はミッドウェー海戦からの傷が癒える前、同年8月7日にソロモン諸島のガダルカナル島に上陸する『ウォッチタワー作戦』を発令し、主目標のガダルカナル島、副目標のフロリダ諸島のフロリダ島、ツラギ島、ガブツ島、タナンボゴ島のそれぞれにも上陸した。しかし、フロリダ諸島に配置されていた横浜海軍航空隊は、伊号潜水艦からの情報もあってガダルカナル島へ退避しており、フロリダ諸島は空であったことから無傷占領に成功した。

 また、ガダルカナル島も伊号潜水艦からの情報により、予め指定されていたマタニカウ川方面へ退却し、守備陣地にて待機していたのだ。無傷占領に米海兵隊等は拍子抜けしたが、同日日中にはラバウル方面からの日本海軍攻撃隊によって艦艇や輸送船団が損傷、空母の戦闘機隊も49%を喪失した事でソロモン諸島から退避するなど米軍には厄介な事になっていた。

 そして同日夜半から8日にかけては、ラバウルに駐留していた三川中将の第八艦隊(『鳥海』を旗艦とする巡洋艦と水雷戦隊)が、ガダルカナル島泊地に停泊している輸送船団に攻撃を敢行してきた。護衛の北方、南方部隊は壊滅し、輸送船団も半数を撃沈される憂き目をみたが、何とか連合軍は持ちこたえた。

 それ以降も、ラバウルとブーゲンヴィル島のブインからは日本海軍の航空隊が、海上からは艦隊がガダルカナルに押し寄せてはアイアン・ボトム・サウンド(鉄底海峡)で数度の海戦を戦っている。

 また、ガダルカナル島にも日本軍の増援部隊は上陸したが、未だ本格的な戦闘には至らず、米海兵隊でさえも気味が悪いと囁き合っていた。


(我々は何処で躓いたのだろうな……)


 キンケイド少将はそう思う。珊瑚海海戦では敵の軽空母1隻を撃沈し、正規空母1隻を大破させ、ミッドウェー海戦では敵正規空母2隻を撃沈して形勢は此方(米軍)に傾いたと思っていた。

 しかし実際にはどうだ。ミッドウェーでは敵正規空母2隻(後に『赤城』『蒼龍』と判明する)を撃沈したまでは良いが、残っていた空母3隻(『加賀』『飛龍』『瑞鶴』)の反撃により味方の『ヨークタウン』『ワスプ』に加えて、護衛空母2隻が撃沈されているし、戦死したパイロットの損耗も大きな物となったのだ。そこから導き出される答えは一つしか無い。


(奴等は……強いのだ……ッ)


 そしてそれらを支える支柱らしき者とモノはいる。日本海軍の水上艦隊の親玉であるアドミラル・ヤマモトではない。開戦初期の東南アジア一帯に展開してた味方の連合軍艦隊を徹底的に叩き、使えるモノは捕獲していった男、あまりの捕獲される酷さにイギリス海軍からは「現代に甦った海賊」とまで呼ばれた男である。


(アドミラル……コンドーか……)


 そんな思索に耽っていた時、伝令の海兵がキンケイド少将の下に駆け込んで来た。


「報告!! 対空レーダーが敵攻撃隊を捉えました!!」

「……やはり来たかアドミラル・コンドー……それで数は?」

「凡そ100機前後になります!! その方向からして第17任務部隊に向かうと見られます!!」

「マレー少将が見つかっていたか……それにアドミラル・コンドーとなると……前回の東部ソロモン海戦での傷は癒えたという事か……対空戦闘用意!!」


 斯くして第16任務部隊は、対空戦闘準備を急ぐ事になる。







「近藤長官、第一次攻撃隊隊長の村田機よりト連走を受信しました!!」

「ん……予定通りだな」


 第16任務部隊より約400キロは離れたラバウル方面側の海域には、日本海軍の第二機動部隊が航行していた。旗艦『加賀』の艦橋では第二機動部隊司令官の近藤信竹中将が通信兵からの報告に頷く。


「長官、第三次攻撃隊の準備を早めますか?」


 近藤にそう具申したのは第二機動部隊航空参謀の奥宮少佐である。第二機動部隊は関少佐の第二次攻撃隊(計114機)を出したが、流石に各空母の格納庫は上空直掩用の零戦しか無かった。


「いや、まだ良い。取り敢えずは目先の空母を叩く。恐らく他の空母もその近海に遊弋(ゆうよく)しているだろうしな」

「分かりました」


 近藤の言葉に奥宮はそう頷く。近藤は艦橋から第二機動部隊を見渡す。その陣容は史実では考えられない編成であった。




 第二機動部隊

 司令官 近藤信竹中将

 参謀長 白石少将

 旗艦『加賀』


 第四航空戦隊

 『隼鷹』『飛鷹』『龍鳳』

 第五航空戦隊

 『加賀』『龍驤』

 第四戦隊

『高雄』『摩耶』

 第七戦隊第二小隊

 『鈴谷』『熊野』

 第十一戦隊

 『伊勢』『日向』

 第八水雷戦隊

 『天神』(旧『パース』)『秋雲』

 第七駆逐隊

 『曙』『潮』『漣』『朧』

 第十一駆逐隊

 『吹雪』『初雪』『白雪』

 第十二駆逐隊

 『叢雲』『薄雲』『東雲』『白雲』






 陣容としては小沢中将の第一機動部隊にも劣らないモノであった。なお、その第一機動部隊(正規空母4隻、軽空母3隻)は決戦兵力として整備中であり、ミッドウェー海戦後は内地にて航空戦力の回復に勤めている。だからこそ聯合艦隊司令部は消耗戦上等として第二機動部隊をソロモン諸島に投入する事が出来たのである。


(はてさて……史実の『南太平洋海戦』というわけだが、何処までやれるかだな……)


 近藤はそう思う。近藤は現代からの憑依者であった。憑依してから気付いた過去の日本、そしてあの悲劇を回避するために近藤は孤軍奮闘する事を決断した。だからこそ近藤は開戦までに色々と準備をしてきて漸くそれが実ったのだ。


(頼むぞ……)


 思いを新たにする近藤であった。







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