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出会い

「ねえ、もしもしさんって知ってる?」


「あの寂れた公衆電話から、000-0000-0000で電話をかけると死んだ人と会話できるとかだっけ?」


「そうそう!やってみる?」


「やらないよー」


クラスメイトが冗談交じりに話していたそのウワサを聞いて、小学四年生にもなって私はそれに縋ってしまった。


番号を入れて、公衆電話から電話をかける。


「もしもし」


『もしもし』


「お祖父ちゃん!?」


背後に誰かの気配を感じた。


なぜかこの時の私は死んだ人と会話できるというのを『任意の』死んだ人と会話できるのだと勘違いしていた。


幼い頃に亡くなった優しいお祖父ちゃんを勝手に思い浮かべていた。


『え!?あ…う、うん!お祖父ちゃんだよ!』


「お祖父ちゃん、お祖父ちゃん!!!うわぁーん!!!」


『なに!?なに!?どうしたの!?』


「学校でいじめられたー!!!もう行きたくない!!!うわぁーん!!!」


『…は?虐められたの?誰に?』


なぜかキレ気味のその人に私は言った。


「クラスメイトー!!!私が調子に乗ってるとか因縁つけてくるのー!!!教科書の角で叩いてきたりして痛いのー!もうやだー!!!」


『…ねぇ、そいつらみんなに死んで欲しい?』


「え、死ぬのは嫌」


『じゃあどうなって欲しい?』


「学校休んで欲しい」


その人は言った。


『オッケー!俺…お祖父ちゃんに任せとけ!』


「お祖父ちゃん助けてくれるの?」


『助けるよー、可愛い孫のためだし?』


明らかにお祖父ちゃんの口調じゃないなとさすがにこの頃には気付いたが、子供のいたずら電話に等しいそれに対して優しい人だなと呑気に思っていた。













その次の日から一ヶ月、いじめっ子たちは登校してこなくなった。


体調が悪いと先生は説明していた。


いじめっ子たちが休むようになると、みんな現金なもので「助けられなくてごめんね」と言って前のように仲良くしてくれるようになった。


居心地の良い学校生活が戻ってきて、一ヶ月後ようやくいじめっ子たちは登校してきた。


けれど彼らは窶れて、目の下にはクマができて、ボロボロの様子で前のキラキラオーラは消えていた。


「あの…みっちゃん」


「えっと…なに?」


「虐めてごめんなさい!」


彼らは私に謝る。


なんでも毎日悪夢を見て寝ても寝ても苦しい思いをしていたらしい。


体調もそれに伴いおかしくなっていったそう。


それは私が受けた虐めを自分が受けるというもの。


今までの恨みは消えないけど、ボロボロの彼らを見て同情してしまう。


「…わかった、いいよ。許すよ」


「みっちゃん!」


「でも悪夢が止まるかはわからないよ?」


「わかってる!本当にごめん!」


こうして彼らと一応の仲直りをした。











彼らと仲直りしてから、公衆電話から「もしもしさん」に電話した。


「もしもしさん?」


『あれぇ?孫ちゃんじゃん。どしたの』


「もしもしさんってお祖父ちゃんじゃないよね?」


『あれ、バレた?』


「うん、でも助けてくれてありがとう!私、みっちゃん!よろしくね!」


私の言葉に背後の気配が揺れた。


『お礼とか何年ぶりだろー。クソガキどもは反省してた?』


「うん!ねぇ、もしもしさんの名前は?」


『…ゆーちゃん』


「ゆーちゃん、本当にありがとう!いじめっ子たちも含めてみんなと仲直りできたよ!ゆーちゃんすごい」


『…みっちゃんは純粋だねぇ。ま、役に立てて良かったよ』


ゆーちゃんに聞く。


「なんでゆーちゃんはもしもしさんになったの?」


『秘密。でもま、おかげでもしもしさんは卒業出来そうかも』


「え?」


『今なら成仏できそうな気がするんだよねー』


「え、せっかく友達になれたのに行っちゃうの!?」


私の言葉にゆーちゃんは笑う。


『友達かー、最期にみっちゃんと友達になれてよかったわ!』


「ゆーちゃん…」


『みっちゃん、ありがとう』


「こちらこそありがとう!でも寂しいな…」


『なら、出来ればみっちゃんの守護霊とかになれるよう頑張ってみるわ』


「えー?」


そして背後の気配が消えた。


私はひっそりと、前とは別の意味で泣いた。










その後、いじめっ子たちは悪夢を見なくなったらしい。


が、今はおとなしくしている。


平穏が完全に戻ってから、私は図書館に行って昔の新聞を調べた。


それっぽい記事を見つけた。


ある人が昔苛烈な虐めを受け、加減を間違えた加害者の一撃を頭に受けて死亡したらしい。


加害者たちが逃げた後、辛うじてまだ息があった彼は公衆電話から助けを呼ぼうとしたが途中で力尽きたそう。


「ゆーちゃん…」


ゆーちゃんが亡くなった公衆電話は、私が使ったものとは当然違う。


それどころか今では撤去されている。


でもなんとなくの場所はわかるので、私は献花しに行った。


「ゆーちゃん、助けてくれてありがとう」


献花して、黙祷する。


ふと、背後に温かな優しい気配を感じた気がした。


いやまさかそんなと思うが、ゆーちゃんだったらいいなぁなんて思って私はその場を去った。


それ以降、福引で三等が当たったり怪我をしかねない事故をスレスレで回避したりとラッキーが続くようになったのはここだけのお話。

ここから始まるみっちゃんの奇妙な体験…のお話になる予定です。


楽しんでいただけていれば幸いです!


下のランキングタグに連載作品いくつかのリンク貼ってます!


よろしければご覧ください!

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