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明日、また、キミ想う  作者: ひよこ倖門


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1

 おれと友人との初対面は中学生時代まで(さかのぼ)る。

 公立の小学校は勉強や運動面で大きく差異をつけられることは少ない。もちろん全くないわけではないし、小学校から塾に通って中学受験をする子もいる。

 だが、基本的にはそのまま持ち上がりで中学へ上がる子が多いだろう。おれもそれに漏れず、公立の中学校へ進んだ口だ。

 小学生の頃、おれは勉強も運動も困ったことはあまりなく、中学生になっても同じようにできると漠然と思っていた。けれど、現実は残酷で、中学校へ上がった途端、小学校とは違う学科分けや学科担当教師がいる環境となり、一気に勉強の仕方が解らなくなった。

 同時に幾つかの小学校から同じ中学校に持ち上がるため、それまでの友人関係があっという間に崩されていった。仲良くしていたはずの友人が、別の小学校からの持ち上がりの子と仲良くすること自体は悪くない。それは強制できるものでもないし、別にその子も含めて仲良くなれば良いかとおれは考えていたくらいだ。

 けれど、友人たちは違った。新しい環境が、クラスだけでなく、学年全体で派閥分けされていく。男女関係なく仲良くできていた小学校時代とは違い、男女で分けられ、その分けられた先でもオタクと一般的と分けられ、全てにおいて線が引かれるような生活になっていった。

 また、小学校の頃はふわふわしていた恋愛ごっこのような付き合いが、この頃から性を意識したものへと変化していき、余計男女で仲良くすることが恋愛に絡められるようになり、友人関係が破綻していったのだ。

 人と関わることが嫌になったのもこの頃からだと、今なら理解できる。

 急激に変わっていく環境の中で、おれは自分が一般的ではないことを知った。

 一つは、漫画や小説、ドラマといった現実を混ぜたフィクションと、現実の境界線がなかったこと。

 もう一つは、男女の恋愛が理解できず、恋愛自体も理解できず、それでいて性行為の対象として見ているのが同性ばかりだということ。

 これまで(つちか)ってきた自分が崩れていくような感覚を今でも覚えている。

 クラスでも浮きがちで、友人と呼べる誰かもいないおれをさらにどん底に叩き落としたのは、中学校の校則に一年間は部活動に所属することとあったことだ。

 教師に確認したところ、最低でも一年生の秋過ぎまでは必ず部活動に所属しなければならないらしく、入学して一ヶ月が経っていたこの頃に部活動へ所属していないのはおれくらいだと知らされた。

 派閥形成が落ち着き、それによって部活動への所属も決定していったらしい。つまりは友人となった者同士で同じ部活動に入ったということだ。一度でも所属すれば校則を破ったことにはならないため、秋まで続かなくても急かされることはないらしい。

 よく解らない校則だなと思いながら、おれは教師に早く所属しろと発破をかけられたが、結局夏近くなっても所属が決まることはなかった。

 夏になってくると教師におまえだけ決まってないと怒られ、おれは名前だけで許される部活動があると聞き、そこに入部届を出した。

 それが友人の所属していた美術部である。

 噂は噂であり、真実ではなかった。今度は所属した美術部から何度も部活動に出席しろと怒られ、名前だけじゃ駄目なのかと仕方なく部室へ向かった。

 部室に入ると各々(おのおの)が好き勝手に絵を描いたり、創作していたりと自由そうな雰囲気だった。けれど顧問はおれに気づくと、美術部に所属しているなら作品を展示会に出品しなければならないのだと、懇懇(こんこん)と説教した。

 うんざりしながら説教を聞き流し、おれは部室を見回す。絵の具や粘土の臭いが鼻を刺激していくが、おれはそれに何も思わず、この場からどう逃げるかばかり考えていた。

 ふと、視界の端に色が飛び込んできた。

 独特とも、一般的ともとれる絵は、上手いとも下手とも言えない微妙な出来映えだ。けれど、おれはそれから目を離すことができず、じっと凝視していた。

「……なに」

 不機嫌な一言が友人との出会いだった。

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