1/2
プロローグ
「付き合ってほしい」
酒を酌み交わしながら先程まで来週投票のある選挙の話をしていた。そこに突然この台詞を割り込ませてきた友人の意図が掴めない。
いや、解りたくない、というのが正解だろうか。
選挙の投票に、ではなく、恐らくそのままの意味だ。
そう、今回の選挙には同性関連を推す候補者が多く、世の中が動き始めたよなって話をしていた最中だったのだから。
「水、もらうか」
だから、聞かなかったことにした。酔っ払いの戯言だと、それに巻き込んでくれるなと、そういった意味を含ませて。
チェーン店のように呼び出しボタンのない半個室から、店員を呼ぶため立ち上がりかけたおれの服を友人が掴んで止めた。
「酔っ払ってない」
逃さない。
眼鏡の奥に隠された瞳が強くおれを惹きつけ、縫い止める。
「解った」
どかりと座り直して、おれはがしがしと頭を掻きながら応えた。
ほっとしたように頷いた友人から口許を隠すように煙草へ火をつける。
きっと、今、おれの口許は嬉しさを隠せず、緩んでしまっていると自覚していたから。