治療
なまあたたかいものは、オレのおでこから流れる血だったようだ。
たいして痛くもなかったが、なかなかの出血量だった。
ポタポタポタポタ
…
だれかがどこらかともなくタオルをくれた。
真っ白なタオルが一気に赤く染まった。
そして、ともだちに手をひかれて保健室へと向かった。
保健室で手当てを受けているとガラッとドアがあいた。
「瀬野くん‼︎瀬野くん‼︎無事なんだね⁉︎意識あるんだね⁉︎生きてるんだね‼︎」
と慌てた艶元さんが駆け込んできた。
そして、オレに思いっきり抱きついてきた。
カラオケボックスでのハグとは違い強めのハグだった。
…少し痛いかも。
あと、みんなに見られてる感が半端ない…
でもさ、それだけオレを心配してくれてるってことだよね。
「ありがとう。艶元さん、オレは大丈夫だから安心して。」
と、オレも艶元さんを抱きしめた。
すると、先生が
「ふふ、仲良しだこと。でも、これじゃあ治療ができないわねぇ。」
とニンマリした。
艶元さんは、慌てて
「ごめんなさい…わたしったらつい…」
と言いながらオレから離れて赤くなった。
オレはニッコリ艶元さんに微笑んで艶元さんの手を握った。
治療が終わるまでずっと手を繋いでいた。
先生の治療が終わり、教室へと戻ると大きな拍手が湧いた。
パチパチパチパチ
「よっ、英雄‼︎」
「命の恩人!」
なんて掛け声も上がった。
そして教室に入ったオレの視線の先に飛び込んできたのは、
水樹さん…。
水樹さんは、窓の隅の方で女子に囲まれて泣いていた。
「水樹さん…、泣かないで。」
オレが水樹さんをかばったから責任を感じてしまったようだ。
なのでオレは水樹さんに声をかけた。
「水樹さん、オレ結構出血してたけど傷は浅いから全然気にしないでね。ホラ、この通りピンピンしてるから!」
と手をブンブン振り回した。
がツン
イテッ‼︎
調子に乗ったオレは、棚の端に手を思いっきりぶつけた。
「こっちのほうがよっぽどいてー…」
「「「あはははは」」」
クラスのみんなが笑った。
そして、ようやく水樹さんも笑ってくれた。
ふぅ。
よかった。
これで一安心…
なバスだった…。
だったんだけどー…
その日の放課後、まさかのハプニングが待ち受けているのであった。
続く。




