冗談
艶元さんは、少し恥ずかしそうに
「それじゃ、弾くよ」
とギターを抱えた。
おーっ。
なんか細いからだでギター持ってる艶元さんすげ〜〜なんて感動していると、ポロンと音が流れ出した。
うわぁー。
ギターってこんなに柔らかい音だすのかよ⁉︎
なんか音楽の柔らかい空気に包み込まれているみたいだ。
お香焚いてないのにお香焚いているような⁈
とにかく…
心地がいい。
幼い頃母親におんぶされていたこと思い出しちゃったなー。
そして心地よい曲が数分流れた。
「ふふ、どうだった?なんか恥ずかしい」
ハッ
オレ今ぽかーんって間抜けな顔してたんだろうなぁ…
一瞬で我に帰り
「よかった‼︎すっごく‼︎」
とこたえると、
「ほんと⁉︎ならよかったー。」
とホッとする艶元さん。
「なんか癒される曲だね」
「ありがとう。頑張って作曲した甲斐があったな」
「えっ?作曲⁉︎自分で作ったの⁉︎」
「うん!作詞は全然なんだけど作曲が好きでね」
「へー…」
すごっ‼︎
「でね、もう一曲気に入ってる曲があるんだけどきいてくれる?」
「あぁ、うん」
‼︎
さっきは、心地よい曲だったけど今度のはパワー全開な曲だ。
踊り出したいくらいだ。
てか、勝手にからだが揺れる…
で、アンコールをした。
そしてなぜかオレはいつのまにか曲に合わせて歌詞もない曲に勝手に歌詞をつけて歌っていた…。
もうここはカラオケボックスじゃないスラム街に来ている気分になっていた。
夕方のスラム街。
一気に街灯が照らされる。
街ゆく人々は、オシャレをして出かける人や仕事帰りの人が慌ただしく通り過ぎたり、のんびりデートしていたりと…。
曲が終わると艶元さんは、
「…魔法」
とつぶやいたかと思うと、目を輝かせていきなり、
「すごい‼︎作詞できるんだ‼︎それに歌やっぱり最高‼︎」
と言われた。
やっぱり…?
「あ、ごめん。勝手に歌詞…てか、なんかよくわかんないけどいつのまにか歌ってた…」
ガシッ
‼︎
いきなり艶元さんがオレの手を握りしめた。そして、
「ねぇ、お願いがあるの」
とじっとオレを見つめる艶元さん。
えっ⁈
お願い?
なんだろ…
この距離でこの状況は…アレしかないだろうよ。
「まさか、キスしてほしいとかぁ?」
なんてふざけて言ってみたらまさかの…
「あっ…うん。それもそうなんだけど…」
なんて言い出しましたよ⁉︎
えぇええー⁉︎
「あっ、ちょっ艶元さん…今の冗談だからね⁉︎」
「えっ…、あっ…そ…うなんだ…」
少し残念そうな艶元さん。
えっ⁉︎
何⁉︎
えええええええええええええーーっ‼︎
いいわけ⁇
いや、いいわけない‼︎
コホンと咳をして我に帰り、
「で、ほんとうは何が言いたかったの?」
と改めて質問した。
すると…そのお願いは…
続く。