プロローグ
月が雲からはみ出し、闇を照らしている。その月明かりをもとに少年は全力で走る。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
場所はとある屋敷の廊下。少年は、赤いカーペットを力強く踏み、前へ、前へと進む。
廊下の先にある曲がり角で、速度を落とさずに曲がる。
その先に少年の求める場所がある。
しかし、———
「仕事の邪魔をされるのは嫌なんです。」
少年の背後から女の声が聞こえた。声が聞こえたと同時に、少年の顔の左横を丸い物体が猛スピードで通り過ぎた。
「——っ!あっぶねぇ!」
あと数センチ左に頭があれば首ごともげていたかもしれない。
少年は足を止め、女と向き合う。
「あんたと相手するのは嫌なんだよ。」
「しかし、私は仕事なので、手を抜くわけにはいかないんです。」
女の言葉に少年は、ゆっくりと息を吐く。
右足を一歩分下げ、腰を落とし、右手を背中に伸ばす。すると、何もなかった背部から黒い棒が現れた。
少年はそれを掴み、思いっきり引き抜き、先端を女に向ける。
黒い棒の先端には、禍々しい刃がついていおり、攻撃をされればひとたまりもない。
女は少年の準備ができたと見るや、手に持っていた丸い物体を構える。
「死んでもしらねぇぞ。」
「その言葉、お返しいたします。あなたとは、本気で戦わなければ負けるので、本気でやらせていただきます。ですので、後悔しないよう。」
「ハッ!言ってくれるぜ!」
月明かりの下、少年と女の激しい戦いが始まる—