君はいない
思い浮かんだ妄想を備忘録として書きました。
文章力や語彙は有りません。
初心者ですので、お手柔らかにお願いします。
全てを思い出し、そして理解した。
君はいない。
それが、愚かな私達に神様が下した罰だった。
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眩しいほどに輝く白金の瞳と揺れる長い髪を持つ君に恋をした。
そして、しだいに闇夜の様に不気味な黒い瞳と髪に変化していく様に、自分の薄汚さを咎められているように感じて、君を憎悪して傷付け、虐げ、最後は死なせた。
君の笑顔も優しさも、何も変わっていなかったのに。
君が息を引き取った時、神様が現れた。
狭い地下室の中、まるで始めからそこに居た様に。
その姿は、どんな高名な画家が描いた宗教画よりも一層美しく、全身を白銀に輝かせ、まるで光そのものだった。
痩せ細った君の体から、子供の拳程の大きさをした弱々しい白金の光の玉がゆっくりと抜け出すと、愛おしげに光を手で包み、『愚かで愛しい子、私の中でゆっくり休むと良い。何百年、何千年かかろうと、待っている。』と言うと優しく口付けた。
白金の光の玉が消えると共に、私達の視界も暗転した。
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王国内でも屈指の侯爵家、嫡男である私は、賑わう祭りの中、護衛とはぐれてしまった。
幼い私は石畳に躓いて転び、擦りむいた膝を抱え、痛みよりも心細さから、涙が滲んだ。
『大丈夫?』
優しい声が聞こえた気がして振り返ったが、其処には誰も居なかった。
前に後に、視線を彷徨わせる。
「ぁ、あ、、っ、、」
何度も辺りを見回して見覚えの有るシチュエーション、同じ痛み、一つだけ違うのは君がいない。
先程感じた心細さなんかでは無く、激しい後悔と自己嫌悪から嗚咽と共に、涙が溢れた。
私を見つけて血相を変えて駆け寄って来た護衛の差し伸べた手を振り払い、地面に蹲ってむせび泣いた。
今なら分かる、私達は君に償いきれないほど酷い事をした、恥ずべき人間だと。
いつの間にか、君の起こす奇跡を当たり前だと思い、自分達の物だと思い、君を蔑ろにした。
あんなに君のことが好きだったはずなのに。
最後に神様は仰った『愛しい子』と、君は私達とは違う、もっとずっと貴い存在だったんだ。
私達が蔑ろにしていい存在では無かったのに、その事を忘れた私達に神様は罰を与えた。
近隣の領地まで手を伸ばし、手を尽くして君を探したが、手掛かりすら掴めなかった。
落馬して重症を負った父は、運び込まれたベッドの上で君を思い出した。
一月に渡り高熱と激しい痛みに苦しみ、歩けるようになってからも、雨が降る度に足を引きずって鈍い痛みに耐え続ける。
生まれつき体が弱くて屋敷から出たことの無かった従姉妹は、いつも過ごしていた日当たりの良い部屋で、君を思い出し、我が身の愚かさと儚さを思い知った。
社交界にデビューすることも叶わず、王太子の婚約者候補にすら挙がらなかった。
第二王子は、視察先で罹患した風土病により、顔の半分近くを痘痕が覆った。
人前に出ることを拒み、王位継承権を返上して離宮に籠もられた。
高齢な王太后様が、老衰でお亡くなりになるのは変わらなかったが、最後には実の息子である国王陛下の事すら分からなくなり、王太后様を看取られた陛下は悲痛な面持ちだったそうだ。
教会には、君の奇跡を思い出した人々が、連日連夜訪れたが、皆、肩を落として教会を後にした。
国は部隊を編成し、何年にも渡って君を探したが、何処にも君はいなかった。
諦めきれない切れないのは、私も同じだった。
君にもう一度会いたい。
会って謝りたかった。
でも、分かってもいた。
君はいない。