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懺悔のお手紙1

 ペペ先生、僕は懺悔したいことがあります。けれど僕は口下手できっと上手く言うことができないから手紙で書かせてもらいました。ここから書くことは僕から先生への懺悔です。もちろん他の人に言うことなんて僕は許しませんし、神様にだって言うことは許しません。あくまでこれは僕が先生に話したくて書いた懺悔で、この懺悔は先生と僕の中に仕舞い込まれるものなのですから。

 

 学友であり心友の寅彦とらひこが熱をだしてしまったのは昨日のことでしたね。ペペ先生は朝の時間にそのことを「熱をだした理由は川に足を滑らせて落ちてしまい、体を冷やしてしまったからだそうです。」と言いました。そしてクラスの皆はそれを笑い、今日寅彦が学校に来たとき「ドブネズミ」とはやしたてました。

 寅彦は皆のはやしたてに何も言わずに席に付こうとしましたが、寅彦が座ろうとした椅子をコネリが後ろに引いたので寅彦は転んで頭を床に打ってしまいました。それを皆は笑い、誰も心配なんかしてやりませんでした。寅彦はそれでも何も言いませんでした。そして自分の席に座ったのです。

 そのことを今日遅刻してきた僕は3時間目の理科の時間、同じ班であり幼馴染のダリウスに聞きました。ダリウスはとても怒っていて、昼休みにコリスをぶん殴ると言いました。僕もそれに賛成で、ダリウスと一緒にコリスをぼこぼこにすることを約束しました。

 そして昼休みの時間、ダリウスぼこぼこ事件は起こったのです。まず最初に僕らはエニィにコリスのことを呼ばせました。何でかと言うと僕らが呼んでも絶対にコリスは来ないからです。コリスは朝のことで僕らが怒るとわかっていたのです。

 エニィを使ったことによりコリスはまんまと僕らの待つ校庭の飼育小屋裏に来ました。僕らを見たときのコリスの顔といったら酷いものでした。不細工で有名のリチャードと同じくらい酷かったのです。慌てて逃げようとするコリスを最初に殴ったのはダリウスでした。ダリウスは体も大きく力もとても強いのでコリスはとても痛がっていました。僕もダリウスに続いてコリスを殴りました。この時にもうコリスは泣いていました。男のくせにわんわんと泣いていたのです。泣いて許してくれと言っていたのですが、ダリウスも僕も許しませんでした。

 そんなところにやってきたのはクラス委員のエッドでした。彼は僕らの行為を理由も聞かずにいじめと言い、すぐに怖いと有名なアドワルド先生を呼んできました。先生の後にはクラス野次馬共と寅彦の姿もありました。アドワルド先生は僕らを「悪がき共め!!!」と怒鳴りつけてうずくまって泣いているコリスのことを抱き上げました。そして僕らはアドワルド先生に言われて相談室に行きました。僕らはこうなることがわかっていてやっていたので、やりきった気持ちでいっぱいでしたし、怒られることも怖くなんてありませんでした。後悔の気持ちもこの時まではまったくなかったのです。

 しかし、僕らは後悔しました。野次馬共の間を通るときに、寅彦の顔を見ました。僕らは寅彦に敵はうったぞ、という顔をしましたが、すぐにやめました。

 寅彦は泣いていたのです。はやしたてられても何も言わずに凛としていた寅彦が、本当に悲しそうに泣いていたのです。僕らは一番わかってやらなきゃいけなかった寅彦の気持ちをわかってやりませんでした。


 先生、僕は後悔しています。

              懺悔者 ロリー






 



 ロリーさん、貴方の本当の気持ちが書かれたお手紙をくださって有難うございます。大丈夫です。この懺悔が書かれた手紙を私は誰にも読ませることはありませんし、懺悔のことを話すことも絶対にありえないことです。この懺悔は私とロリーさんの中に仕舞い込まれます。安心なさってくださいね。


 さて、今回の懺悔のことですが、私もコリスさんをロリーさんとダリウスさんの二人で痛めつけたことは良いこととは思いませんでした。コリスさんのした行為は確かに正しいことではありませんでした。しかし、だからといってそれを暴力で返すようなことも正しいことではありません。ロリーさん、あなたは後悔し、もうわかっているようですが、本当に寅彦さんのことを思うならばこのことは話し合いで決着をつけるべきでしたね。寅彦さんは暴力での解決など望んではいなかったのですから。

そして、できればその話し合いもコリスさんと寅彦さんに任せるべきでしたね。これはあくまで二人の問題なのですから。

しかし、コリスさんが前々から東国人とうこくじんである寅彦さんのことをからかうのは目に付いていたのですが、今回のことは立派な人種差別になると私は思います。このことは私からコリスさんに厳しく話しておきます。


 あと、ロリーさんはエニィさんのことを使ったなどと書きましたが、それは同じクラスの仲間として良いことではありませんよ。リチャードさんのことを不細工などと書くのも感心しません。あと、アドワルド先生のお叱りをきちんと心に受け止めることは大事なことです。アドワルド先生は貴方のことを思っていつも言ってくださっているのですから。もし本当に嫌いなら叱ることさえしてくれませんよ。

 

 私から言えることはこれだけです。しかし、貴方の懺悔は心に受け止めましたよ。寅彦さんには明日ロリーさんとダリウスさんの二人で謝りに行くといいでしょう。心優しく、何より貴方たちのことをわかっている寅彦さんのことです。きっと許してくれることでしょう。

 ロリーさんとダリウスさんが寅彦さんと以前のように仲良くできることを祈っています。

              担任ペペより。

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