ギルドマスター(2)
No.5とNo.8の二人は、自分達のレベル上昇の糧にもならない炎竜を討伐するために俺からの依頼……いや、俺に対して嫌がらせをするために出された依頼を受注してくれた。
よくよく調べると、炎竜の鱗が必要なのはクソの妻の父の弟であり、別段手に入らなくても良いが、もし手に入れば今後大きな顔ができる……程度の依頼だったりする。
ほんと、どれ程遠い繋がりだよ。無駄に長い。
俺の役職と言い、何か長い物に呪われているのではなかろうか?
そうそう、何故こんな事を知っているかと言うと、俺達の家、拠点で、既にNo.5とNo.8から事情を聞いていた他の面々が瞬時に行動して調べ上げたからだ。
俺が拠点に帰った時点で、この情報を調べ上げた状態だったのだ。
恐るべき速度の情報収集だろ?
この報告を聞いている時、彼女たちの目が血走っていたのが少し怖かった。
彼女達曰く、俺に対する嫌がらせなど言語道断。万死に値するらしく、怒りから目が血走っているらしい。
そして依頼の炎竜の鱗だが、既に入手済みで奇麗に包まれていた。
こちらも凄まじい速度だが、彼女達の能力が理解できていれば問題なくこの依頼を短期間に達成できる事はわかる。
が、俺の為に最大速度でこなしてくれたようだ。
「皆、ありがとな!俺なんかの為に色々してくれて、本当に嬉しい!」
「何を言っているのですかNo.0!私達はあなたの為だけに存在しているのですよ」
「その通りです。あなたの存在だけが、私達の存在意義なのです」
ありがた過ぎて涙が出そうだ。
「ホントありがとうな。俺には過ぎた仲間達だ」
全員が赤い顔をして微笑んでいる。
「キュオーン」
と、そこに、外にいる炎龍の親子の鳴き声が聞こえてきた。
「あらあら、おなかがすいたのかしら。少しお散歩させてきますね」
そう、この鱗を取るために炎龍を狩ろうとした所、子供連れの個体であったために息の根を止めるのはためらわれたそうだ。
この世界では、一般的に高魔力レベルの魔獣は人族の言葉を理解出来る個体が多くなる。
一縷の望みをかけて鱗さえもらえれば攻撃はしないと話しかけた所、炎龍も戦闘では決してかなわないと悟ったのか、自ら鱗を剥がしてくれたらしい。
もちろんその後の傷は、即座に修復してあげたそうだ。
そして、なんとその炎龍の親子は、自ら俺たちの番犬?のような位置づけに収まることを強く希望したようなのだ。番龍だな。
この親子が、討伐隊のズボンの裾を咥えて離さなかったため、その理由を問いかけ続けていくうちに同行したがっていると言う事が分かったらしい。
正直俺達の魔力レベルであればテイムも可能なので、万が一にも俺達に被害がないように実行しておく事にし、この炎龍を連れてきた中で一番古株のNo.2にテイムをしてもらう事になった。
実は俺、自ら望んで俺達の力になってくれる高レベルの魔獣を欲していた所だったのだ。
この屋敷には、俺達の他に奴隷から解放した魔力レベル0の面々も生活をしている。
同じ敷地で生活をしているので安全ではあるのだが、俺達の活動時間中は屋敷に戦闘能力のある者がいなくなる場合がある。
その時の安全を確保するべく、高ランクの魔獣が必要だと考えていたのだ。
こうして、需要と供給?が一致して、めでたくこの炎龍は俺達の家族の一員となった。
せっかくだからNo.2に名前を付けさせたところ、親龍はピアロ、子龍はコシナに決定した。
この二体には、この屋敷で生活している面々を覚えさせ、守るように指示を出している。
魔力レベル0の面々は突然現れた炎龍におっかなびっくりではあったが、No.2によってテイムされていると理解できると、思い思いに二体と戯れていた。
こうして、クソギルドマスターのふざけた依頼のおかげで家族も増えて、安全も確保する事ができた。
そして翌日、いつものようにギルドに出勤すると、本当に珍しくギルドマスターが既に出勤していた。
「おい、あと5日だぞ。楽しみだな。俺の助言を一切聞かなかったあの冒険者二人。早い段階でこの俺に詫びを入れれば許してやらない事もない。そう伝えておけよ。だが、お前の降格は確定する事になるがな。ハハハハハ」
この野郎、そんな下らない事を言う為だけに、普段は昼過ぎにしか来ないくせにわざわざ早く来たのか。
どんだけ暇なんだ。と心の中で叫んでおく。
こんな事をしていると、そのうち心の声が口から出てしまいそうで怖いな。
「珍しく早いですねギルドマスター。ご心配なく。あの二人であれば問題なく炎龍の鱗程度ならすぐに持ってきてくれますよ」
少しだけ心の声が出てしまったが、仕方がないだろう。
「フン、口だけならどうとでも言える。だが現実は甘くはない」
本当にこいつは!魔力レベル9のパーティーで簡単に依頼達成できると豪語していただろうが。
いや、あの二人の魔力レベルは偽装しているから、そう思われても仕方がないか。
実際にあの二人の登録魔力レベルは、確かNo.5が5で、No.8も5だったな。
「おはようございます」
「あ、ジトロ様、おはようございます」
すると、タイミングを計ったかのように二人がギルドにやってきた。
いや、明らかに意図的だが、クソギルドマスターにはそんな事はわからない。
「おやおや、こんなに早くギルドに来る暇があるなら、炎龍の居場所でも必死で探した方が良いんじゃないか?残り5日あるとは言え、生息場所までの往復でかなりの時間が必要になるはずだからな。それとも、依頼が達成できない事に気が付いて俺に詫びに来たのかな?」
何とも言えない笑みを浮かべて、二人を見つめているクソギルドマスター。
こいつは、どうやっても俺を降格させたいらしい。
だが、そうはいかない。
俺がこのふざけた名前の役職にいるだけで、ギルドに集まる情報を掌握できる。
ま、安定した仕事をしたいと言うのももちろんあるが、以前母さんに大怪我をさせた魔獣について、いまだに正確な原因が分かっていないのだ。
もちろん俺の思いを知っている面々は、折に触れ情報収集をしてくれているのだが、時間が経ちすぎている事、更には魔獣の死骸もとっくに焼却処分されてしまっている事から、情報を掴めないでいた。
因みに噂ではあるが、魔獣の焼却を指示したのが、当時このギルドにいなかったはずのこのクソらしい。
噂なので、真実はわからない。