ジトロの目標(2)
ここにいる彼女達は、期間の差は有れ奴隷の中でも劣悪な環境に置かれていた。
そして、残念な事に全員自分の名前を憶えていないか、与えられていなかったのだ。
二度とそのような状況に陥らないように、俺は彼女達に力をつけてもらう事にしていた。
この防壁の中は俺の力によって安全が確保されているが、万が一を考えると力はあった方が良いに決まっている。
運良く彼女達の中に魔力レベル0の娘は存在しなかったので、この世界の最大は決して10ではない事を理解してもらい、それぞれに合った鍛錬メニューを毎日実施してもらっている。
あまりにも急激な魔力レベル上昇を行うと体内の魔力循環回路が壊れて、魔力が使えない事態に陥るので、この辺りは十分注意している。
最初に救った娘に関しては、既に魔力レベル70を超えている。
この娘が他の面々を救い出した時点で魔力レベル20以上はあったので、この近辺では既に無敵の状態だった。
そして、彼女達には救った順に名前を付けさせてもらっている。
その名前は前世の記憶によるもので、こうした。
No1、No2、No3、No4、No5、No6、No7、No8、No9、No10となっている。
一部響きが男っぽくなっている名前もあるが、それは俺の前世の知識がそう思わせているのか、彼女達はとても嬉しそうに俺からの名前を受け取ってくれたから、良しとしよう。
彼女たちの魔力レベルが何故これ程突出しているかと言うと、俺が魔法の力で高レベルの魔獣の住処を探し出し、彼女達と共に向かって止めのみを行わせる事による無理やりな方法だ。
今までは父さんと母さんの目もあったため、彼女達と魔獣の元に出向く頻度は限られていたが、独立したこれからは、まずは彼女達のレベルを最大である99にする事を最初の仕事と捉えている。
実際、そう時間がかからない内に全員魔力レベル99になる事ができるだろう。
そうなると、今も継続して実施させている並列処理や、その他に使える魔法の種類を増やす鍛錬にもより力が入って来る。
更には、俺が習得していた空手の動きも鍛錬に取り入れる事により、体の動きに磨きがかかる。
今後彼女達と行動をする際には、必要に応じて偽装の技術を身につけた上で顔を変える必要があるのだが、そう難しい技術ではないので、問題ないだろう。
実は、既に彼女達のレベルがあればこの辺りに存在する魔獣による脅威は皆無なので、時々この防壁から外に出て、適当に魔獣を狩って食料にしているらしい。
残念ながら魔力レベルの上昇になるような魔獣はいないので、本当に食料の為だけに狩っている。
こうして、俺は冒険者として副ギルドマスターを目指すために活動を始める事になった。
まずは彼女たちのレベル上げ、その後にある程度の魔獣をギルドに納品して印象を良くし、魔力レベルの表示を適当に上昇させる。
こうする事によって、ギルドからは有能な冒険者として覚えてもらう事ができるので、副ギルドマスターへの道が開けてくるのだ。
こんな活動を行って数年がたった。
もちろん彼女達十人のレベルは漏れなくレベル99。
全員偽名で冒険者登録をしている。
登録時の魔力レベルも5~7程度に抑えており、俺の生まれ育った町で活動をし、活動終了後は隠密を使用して人目を避けて、更に転移により俺達の拠点に戻っている。
とは言え魔力レベル5でもこの世界ではかなり高レベルになっているので、結構目立ってしまっていることは否めない。
彼女達はとてつもない美人だから、違った意味でも目立ってしまっている。
俺はと言うと、着実に実績を積んで念願の副ギルドマスターになれる内示を貰ったのだが、内示をくれたギルドマスターの代わりに着任した者がクズ貴族で、平民出身の俺がある程度有能であったが故に、嫉妬からか副ギルドマスターとしての地位を認めなかった。
正直こんな事が起こるとは想定もしていなかった。
能力については嫉妬の対象にならないように極力低く見られるようにしていたのだが、プライドの塊である貴族にしてみれば、自分よりも強い力を持つ者が気に入らないのだろう。
それに、ある意味ぽっと出の若造。
その部分だけを見れば、わからない事もない事もない事もない事もない。どっちだい!!
すまん。少々ショックでおかしくなった。
そして、付いた役職が……
副ギルドマスター補佐心得
分かるか?副ギルドマスター。そして補佐までは許せる。
だが、それに引き続いて役職が付いている。そう、心得。
何だよこの役職!!あの娘たちに伝える時に、言い辛いじゃねーか。
こんな長い名称。ふざけんな!!ふ~、ふ~~。
とは言える訳もなく、ありがたく受けましたよ。
副ギルドマスター補佐心得。
読めますか~?ふくぎるどますたーほさこころえ。
フハハハハ。はぁ。
この役職をあの娘たちに教えた時の微妙な表情。とても辛い視線に晒された……クスン。




