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突然の異動。でも役職はそのまま

 魔力レベル0の面々は、拠点で自分に付き従ってくれている魔獣との生活を始め、時には戦闘訓練も実施している。


 魔獣達をどのように動かせばいいのか、魔獣はどのように自らの主人を守りつつ動けばいいのかを実戦形式で学んでいる。


 当然、緊急事態の転移や、意思疎通についても十分時間をかけて試している。


 ただ、魔力レベル60前後の転移となると国家を跨ぐような距離の転移はできないが、一気にできないだけで、複数回繰り返す事ができるので実質的には何も問題ない。


 もう少し練度が上がれば、引率は必要になるがダンジョンに潜って本当の実践を行う事にしている。


 拠点ではこんな日々、ギルドではいつもの通りの日々を過ごしていたのだが、ある日、ギルドマスターであるイルスタ様に呼び出された。


 いつもは憂鬱だったギルドマスターの部屋への道のりも、今は普通に歩くことができている。


 イルスタ様様だ。


「失礼します。ジトロ入ります」

「おう、入ってくれ!」


 野太い声と共に俺は入室する。


「ま、座ってくれ」


 イルスタ様は執務をしていたのであろう席から移動して、対面で話ができるソファーに座る。


「ジトロ副ギルドマスター補佐心得。突然だが、お前さんに異動の辞令が出た。こんな時期に突然の辞令で俺としても納得いかないが、上に掛け合っても決定事項と言うばかりでな。悪いが、バイチ帝国にある帝都のギルドに行ってくれないか?スマン」

「えっと、行くのは構わないのですが、その……」


「あ~、悪い。あの長い役職についても交渉したのだが、一切聞く耳を持ってくれなかった。役職もそのままだ」


 やっぱりね~。俺は、前クソギルドマスターの呪いによって、きっとこの役職からは逃れられないのだ。


 そうそう、この大陸のギルドは、どの国家にも影響されない独立した機関だ。その為、例えば、今混乱しているハンネル王国の依頼によって人が異動させられると言う事は無い。


 しかし、代々ギルドマスターはその国家に属する貴族がなると言う風習があるようで、そのギルドマスターの強い意向で稀に突然の異動があったりする事は否定できない。


 このような事実から、一瞬イルスタ様が俺を不要と断じて追い出したのかと疑ってしまったが、この会話から想像するにそのような事はなさそうなので安心した。


「わかりました。その任、お受けします。短い間ですけれど、お世話になりました」

「おう、急な話で済まなかったな。ま、馬車で一週間程度の距離だ。暇を見つけたら遊びに来てくれよ?歓迎するぞ」


 と、俺は、表向きは爽やかにしていたが、実際は腑に落ちない点がある。


 そもそも、国家が混乱している時期に実質ギルドの業務を統括し続けていた俺を、全く別の国家に異動させる事なんて有り得ない。


 いや、待てよ?ひょっとして、バイチ帝国側から俺への強い引き抜き要請があったのかもしれないな。


 だとすると、このふざけた役職がこのままなのはおかしい。

 少なくとも、心得程度は取ってくれても良いはずだ。


 しかし、異動の辞令が出てしまっては断る訳にはいかない。

 そもそも、このスミルカの町で働いていても、俺の家、拠点は結構距離がある。


 勤務先がバイチ帝国になっても、生活リズムに変化はない。


 一応父さんと母さんには、バイチ帝国のギルドに異動になったと伝えておこう。


 こうして、俺はめでたく?バイチ帝国のギルドに異動になった。


 しかし、明らかに時期的におかしいし、バイチ帝国側からのギルドの要請でもなさそうなので、早速スミルカの町のギルドに魔力レベル0のメンバーを入れておく事にした。


 もちろん副ギルドマスター補佐心得の権限を使って、受付としての業務を行ってもらう事にした。


 ギルドマスターの許可については、俺に申し訳ない気持ちがあったのか、楽勝だった。


「私の後任、いえ、窓口業務の後任ですが、私の作業を熟知している知り合いがいるのですよ。是非このスミルカのギルドで採用頂けませんか?」

「ジトロ副ギルドマスター補佐心得の推薦ならば、問題ないぞ」


 ってな感じだ。


 こうして、一応俺が去った後のギルドでの情報の遮断も防ぐ事ができたので、後腐れなくスミルカの町を去る事にした。


 この町での最終勤務日。当然、俺の後任になる魔力レベル0、アンノウンのメンバーであるノエルは、既に受付としてしっかりと仕事ができるようになっている。


 誰にも認知されていないが、彼女の首元には、視認できないように隠密の力を使っている魔獣が存在している。


 彼女のパートナーであり、日々、拠点からこの町の近くまでの往復を転移で同行している。


「皆さん、今日までありがとうございました。ノエルさんも頑張ってくださいね」

「はい、ジトロ副ギルドマスター補佐心得の教えの通り、頑張ります!」


 ま、ノエルとは拠点で毎日会うんだけどね。

 一応、暫く会えないような雰囲気でこの場を去る俺。


 ギルドマスターをはじめ、受付の方、冒険者の一部まで見送りに来てくれた。

 嬉しい限りだ。


 しかしこの町のギルドは、あのクソギルドマスターが統治していた場所。


 新種の魔獣も既に三体、この近くで現れている事になる。

 つまり、不穏な行動を起している組織のおひざ元かもしれないのだ。


 くれぐれも注意するように念話でノエルに伝え、更には、この町で冒険者登録をして活動しているナンバーズの一部に対して、ギルド訪問の頻度を増やすように指示を出している。


 この念話は相当便利なので、魔道具による魔獣を通した念話が可能になった時点で、アンノウン全員が念話を習得した。


 依頼を受けなくとも良いので、時折ギルドに顔を出す。

 そのついでに近辺の調査をするだけで、相手組織の動きの牽制になる可能性がある。


 このスミルカの町の中でも店舗を構えている商人や、宿屋、食事処など、情報が得られそうな場所には、魔力レベル0の面々を配置している。


 魔力レベル0の面々は、ようやく鍛錬を終えた段階なので配置を開始している最中だ。


 近い内に、ハンネル王国の王都にも同様に配置するように手配をしている。


 当然バイチ帝国内部でも同様に活動を開始してもらうのだが、その他の国家については残念ながら人手が足りないので、ここまでだ。

 そもそも、俺が知っている国家は数えるほどしかないしな。


 よし!明日から心機一転バイチ帝国で頑張るか!!

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