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魔力レベル0

 最近は新種の魔獣襲来があちこちで起きているし、せっかく捕まえたドストラ・アーデも、なんと王城の牢獄で殺害されたらしい。


 俺は、初めてこの話を聞いた時に耳を疑った。


 だが、その情報はギルドマスターからの情報なので、間違いはないだろう。


 更にドストラ・アーデを殺害した警備隊員も、毒を摂取してこの世にいないと言うのだ。

 一体どうしてしまったのだ?このハンネル王国に何が起こっているんだ。


 王都で、しかも王城内部で起こった事件だ。

 殊更警備は厳重になっているはずなのだが……トロンプ様は大丈夫だろうか?


 心労でどうにかなっていないか、少々心配になる。


 この大事件が起こったのは昨日今日ではなく、数日前と聞いているので、今から俺が手助けを申し出ても既に遅いだろうな。


 だが、ハンネル王国の混乱、そして、その原因の一端となっている謎の組織バリッジ、その組織が生み出したとみられる新種の魔獣。


 No.7(ジーベン)の報告によれば、あのクソギルドマスターでさえ魔力レベル20を超えるほどの力を持っていたという事だから、そのクソが所属していた組織はかなりの力を持っている者達がいるに違いない。


 ここまで悪条件が揃っていると、俺の仲間の安全性をもう少し高めておく必要がある。


 いや、魔力レベル99のメンバーはこれ以上どうしようもないので、魔力レベル0のメンバーだ。


 俺達の拠点内部にいる分には俺達の誰かがいるし、炎龍のピアロとコシナもいるからおそらく大丈夫だと思っているが、活動の幅を広げるためにいつまでも拠点内部に籠っていては仕方がない。


 こんな状況だけに、逆に魔力レベル0が活動すれば、警戒されずに敵の懐に潜り込む事ができる。

 だが、その状態で危険に晒されるのでは本末転倒だ。


 この話をNo.1(アインス)に相談したら、彼女達が以前から検討していた解決策を提示してくれた。


 今この拠点にいる魔力レベル0のメンバーは、俺にお小遣いをくれるイズンを含んで26人。


 彼らに、No.2(ツヴァイ)によってテイムされた魔獣を護衛につけるのだ。


 もちろん万が一の時の為に、魔獣の必須能力は襲撃や罠を感知できる能力と、仲間と共に避難できる転移能力、そして、第三者からその存在を秘匿できる隠密系統の能力とする。

 ここまで要求が高いと、スミルカの町周辺では存在しない。

 以前、魔力レベルを上昇させるために同行させた、かなりの遠方まで行く必要がある。


 ま、転移で一瞬だけど。


 必要な魔獣の数は、当然26匹。

 炎龍の二匹は、この拠点の番龍として存在しているので、除外する。


 もう一つの案として、No.10(ツェーン)の作った武器による強化も考えたのだが、やはり魔力レベル0が武器を使うと、武器の強さに体が耐えられないようで断念していた。


 俺達は、魔力レベル0の面々が安全に外部で活動できるようになるまでは今まで通りに過ごす事にしているが、彼らの安全が確保出来次第、国やギルドと関係なく動く事を決意した。


 そう思ったのは、この不安定な国家の状況、そして、最後に背中を押してくれたのは、バイチ帝国のあの二人の考え……理不尽な奴隷をこの世界から根絶させると言う志に強く賛同したからだ。


 俺達は準備が整い次第、何人にも影響されない独自の組織として活動を始める。


 活動を開始するにあたり、俺達の組織をunknown(アンノウン)とし、魔力持ちの10人をナンバーズと称する事にした。


 なんでここだけ英語かと言うと、俺の前世の知識量による物だ…とだけ言っておこう。


 だが、何をおいても仲間の安全だ。


 早速No.2(ツヴァイ)No.7(ジーベン)を連れて、時折彼女達がお小遣いを稼いでいる森にやってきた。


 薄暗く広大な土地に森があり、実はその奥には洞窟型のダンジョンが存在する。

 この中、特に深い階層に行くにつれて地上よりもはるかにレベルの高い魔獣が無数にいるので、ペット…いや、護衛探しにはうってつけだ。


 しかも、何がお得か!!と言うと、魔獣を討伐したりダンジョンの外に引きずり出したりすると、同じレベル帯の魔獣が勝手に発生するのだ。


 ある意味永久機関だが、このダンジョンの一階層にいる魔獣は平均魔力レベル20程度。

 この世界の普通の人族では、一階層の入口近辺すら探索する事はできないだろう。


 しかし、俺達は違う。

 話によれば、ナンバーズたちは時折ここに訪れてお小遣いを稼いでいるとの事。


 羨ましい。だが、俺も休暇を貰えるようになったので、こっそりとここに来て俺の存在がばれないように換金だけを誰かに頼めば、財布がレベルアップするに違いない。


「よし、じゃあ早速行くか。今日は小遣い稼ぎじゃないからなるべく無駄な戦闘はせずに、そうだな……魔力レベルは50以上、転移、感知、隠密を持っている魔獣で行くか。頼んだぞ、二人とも」


 今回の同行者は、テイムや召喚が得意のNo.2(ツヴァイ)、解析や鑑定が得意なNo.7(ジーベン)を連れてきている。


 この二人がいれば、正直俺は何もしなくても良いと思っているほどだ。


「「お任せください!」」


 気合と共にズンズンダンジョンに侵入して行く二人、と、その後ろをのんびり進んでいく俺。


 時折魔獣が表れるが、No.7(ジーベン)が一瞬で鑑定して必要な条件を満たしていないと判断された瞬間、瞬殺されている。

 俺達の進行方向から若干ずれている魔獣に関しては、見逃してやっているみたいだ。


 実はこのダンジョン、内部ではうまく転移を実施する事ができない。

 魔獣が自然に産まれるようなシステムになっているので、攻略を楽に行えるような力を使えないようにする安全装置があっても不思議ではない。


 その為、地道に深層に向かって歩を進める。


 やがて、彼女達お勧めの階層の40階層に辿り着いた。

 魔力レベルにものを言わせてそこそこのスピードで攻略しているので、多分数時間しか経過していないだろう。


「ジトロ様。この階層、比較的小さな魔獣が出現するのです。見た目は犬や狼なのですが、魔力レベルは凡そ60前後。そして、ご要望の転移、感知、隠密も持っております。ですが、転移に関しては、鑑定で判断しているだけで実際に発動している所は見た事はありません」

「それはそうだよね。ここで転移できるんだったら、俺達も転移してるしな。よし、じゃあここで人数分の魔獣を捕まえるか。頼むぞ、二人とも!!」


 こうして発破をかけるだけで、俺はボケーッとしている事、体感数分。


「「お待たせいたしました」」


 俺の目の前には、26匹の犬か狼に見える魔獣達。

 全てがきちんと整列して、尻尾を振って座っている。


 もちろん、No.2(ツヴァイ)によってテイム済み。


「お~、可愛いじゃないか。これで拠点も賑やかになるかもしれないな。とりあえず、全員、隠密を使ってみて!」


 俺達の力であれば看破できてしまうが、魔力レベルが彼ら以上、大体60以上ないと看破する事はできないので問題ない。

 視認できないように周りの景色に溶け込んでいる個体もいれば、限りなく小さくなっている個体もいる。


 どのように変化するかは、その時々で臨機応変にできるようなので、これで問題ないな。


「大丈夫そうだな。お疲れ。よし、じゃあこれからお前達も俺達の家族。そして、unknown(アンノウン)の一員だ。宜しくな!!」


 よし、これで魔力レベル0の面々との相性をみて、護衛対象を決定すれば、いよいよ始動だ!

お読みいただきありがとうございました。

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