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騎士隊長ナバロン(2)

 まずいぞ、確かにこのギルドマスターのドストラ・アーデは自分で言っていた通りに、大した強さを持っていないと装っていたのだ。

 未だ上がり続けている魔力レベル、おそらく既に魔力レベル20近くまで上昇しているだろう。


 これは、私の命もここまでか。

 だが、宰相だけは国に戻さねばならん。

 本来の目的が達成できないのは無念ではあるが、最早これは国家を脅かす戦力と言っても良いだろう。


 フフフ、だが面白い。騎士として、騎士隊長として、最後は何かを守って散りたいと思っていたのだ。

 そう考えると、相手にとって不足はない。


 とは言え相手は想定魔力レベル20超えである上に悔しいが今も尚、レベルは緩やかにだが上昇している感覚がある。

 既に、魔力レベルが未知の領域故に想定になるが、魔力レベル25はありそうか?


 最後の敵になる訳だが、私の命を省みない攻撃でも持って数秒だろうな。


 私は目配せして宰相の馬車を下がらせようとするも、ドストラ・アーデは目ざとくこちらの行動を把握し、馬車の前後に魔法による攻撃を仕掛けてきた。


 その攻撃によって、馬車に繋がれていた馬は死亡してしまった。


 こいつ、戦い慣れしている。先ず、足を狙うのは戦場の定石だ。

 あれ程の無能を演じ続けていたのだ。頭の方もかなりの切れ者と見て間違いないだろう。


 くそ、剣を持つ手が震えている。この私とした事が。


 すると、意識の外から来たかのように私の前に覆面の一人が突如として現れた。


「バイチ帝国の方々、私の後ろにいて動かないでくれ」


 まるで鈴の音のような声によって、私の震えは収まった。言葉使いは少々アレだが……

 ほんの少し前までは、世界最高戦力と自負していた自分が恥ずかしい。


「そんな足手まといを守るつもりか?まあいいだろう。どの道私が組織に属していると言う秘密を知られてしまっては、お前らを消す以外に手はないからな。せいぜい抗って見せろよ、雑魚共。だがな、俺が本気を出した以上、お前らに万に一つも勝ち目はないがな」


 確かに、あのドストラ・アーデ、頭も切れる上に魔力レベルも相当高い。

 しかし、何故あのような男がギルドマスターとして活動していたのか、気になる所だ。


 あいつは切れ者ではあるのだろうが、バカだな。あの覆面は、あの男が組織に属しているとは一言も言っていないはずだ。

 にも拘らず、自ら組織に属していると言う情報を吐き出すとは……


 そう言えばあいつは、ハンネル王国の子爵だったはずで、となると国家中枢が既に腐っていて、国家ぐるみでこのような暴挙に出ているのか?


 わからない事が多すぎる。

 しかし、今我らの全力をもってしてもあの男には傷一つ付ける事が出来ずに消される運命しか見えない。

 他人任せになってしまい情けないが、こちらも力の底が知れない覆面の一行に、我らの未来を託すしかない。

 

 これまでの覆面の行動から、少なくとも我らを守ろうとしてくれているのは理解できる。

 希望的観測と言われればそれまでだが、覆面に頼るしかないのだ。


「バイチ帝国の方々よ、もう少しだけ下がってくれないか?これから戦闘になるので、あまりに距離が近いと余波を防ぎきれない可能性があるからな」


 もう我らに選択肢はない。ここまで我らに好意的なのだ。頼むぞ、覆面の者達よ!!


「わかった。全てそちらの指示に従う。おい、お前ら、宰相を馬車から出して、このお方の指示通りに動け!」


 流石は我が部下。何とか持ち直して、覆面の指示通りに距離を取る。


 少し前は、こちらが移動する素振りを見せただけでも攻撃してきたドストラ・アーデ。

 しかし、今は我らの前に覆面の一人が立ちふさがっているからか、何の攻撃も来なかった。


「は~、無駄な事を。攻撃対象が広がりすぎると、後で始末するのが面倒なのですけどね?できれば諦めて、一か所に集まってもらえませんかね?」

「あなたは少々煩いですね。とりあえず、私が相手をしてあげましょう」


「フン、雑魚の癖に威勢だけは良いな。その威勢に免じて貴様の名を記憶の片隅に残しておいてやろう。名は何という?」

「随分と上から目線ですね。別にあなたに覚えて頂く必要は一切ないのですが、まぁ良いでしょう。我らが主も、挨拶は大切といつも仰っていますし。一度しか言いませんので、よく聞きなさい。私は、偉大なる主の忠実なる配下、No.7(ジーベン)。あなたを完膚なきまでに叩き潰す者です」


 ドストラ・アーデの力、あれ程の距離にいるのだからあのNo.7(ジーベン)と名乗った覆面も理解しているはずだ。

 その上で、あの余裕。


 私は井の中の蛙だったのだな。人族最強と疑っていなかった魔力レベル10に達した時点でこれ以上のレベルアップは望めないと勝手に考え、魔力レベル増加の為の鍛錬を放棄し、体術や剣術を磨くための修練に移行してしまった。


 だが、今ならわかる。

 人族の限界は魔力レベル10などではない。あの者達が発する力がそれを証明している。


No.7(ジーベン)。いいでしょう、それがあなたの今世での最後の名乗りです。残りのお仲間、そしてバイチ帝国の面々、それから甚だ不本意ではありますが、私の部下もこの場で死んでもらいましょう。それが私の正体を知ってしまった者の末路。我が組織バリッジの為に、全てを屠って見せましょう」


 ドストラ・アーデは馬から飛び降りるや否や、目にもとまらぬ速さでNo.7(ジーベン)と言う覆面に攻撃を仕掛けた。


 右手に持った剣を覆面の左肩から右脇に抜けるように振りぬいたあの攻撃、もし私が食らっていたら何をされたかわからないうちに命が無くなっている攻撃だ。

 辛うじて距離が離れているから、何となく攻撃の軌跡が見えたのだ。


 しかし、その攻撃をあのNo.7(ジーベン)と言う覆面は、なんと左手一本で難なく止めて見せた。

 左手一本。素手だぞ!信じられるか?あの袈裟斬りを素手……


「あなたは我らをバカにしているのですか?その程度の攻撃では傷一負わせる事はできませんよ。手加減なんてしているところに攻撃をしてしまっては、うっかり殺してしまうかもしれないじゃないですか。それでは主の命に背くことになってしまいますので、もう少し本気で来ていただけませんか?」


 な?夢だろ?あの攻撃を素手で止めた挙句、もっと本気を出せと煽る。

 ハハハハハ、はぁ。夢ならよかったのだがな。


 あの攻撃の余波により若干の石礫がこちらに飛んできたので、痛みを感じているから、これが夢ではないと理解できている。


「くっ、お前その左手、何かアイテムを使用しているな?そうでなければ、私の斬撃を防げるわけはない。良いだろう。お前の望み通り本気で相手をしてやる」


 距離を取っている最中に、魔力を身体強化から魔法に振り分けたように見える。

 あまりにスムーズな流れで魔力の移行を行っているので、思わず見惚れてしまう程だ。


 一方のNo.7(ジーベン)と呼ばれた覆面は魔力に一切の乱れがないので、未だ身体強化に魔力を使っているのだろう。


 だが、それは悪手だ。


 魔法攻撃は、身体強化では防ぎきれない。魔力強化を行わなくてはならないのだ。


 私はあわててアドバイスを送ろうとするも、ドストラ・アーデの早すぎる魔法行使によって、覆面は火の海に飲まれてしまった。

まだまだ続きます

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