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緊急報告

 再び席に戻り、冒険者の相手をする。

 小一時間程経過しただろうか、またかわいらしい女性が俺の窓口に来た。


「ジトロ副ギルドマスター補佐心得、少しお話ししたいのですが……」


 今度は、No.10(ツェーン)だ。

 きっと報告の続きだろうが、同じ日に同じ人物、しかもかなりの美女ときたら目立って仕方がないので、他のメンバーを報告によこしたのだろう。


「度々ごめん。また少し席を外すよ」


 受付の面々に一声かけて、この場を後にする。


「これだけ早く連絡が来るとは、何があったんだ?No.10(ツェーン)

「実はその後の報告なのですが〜、警戒態勢を最大にして経路周辺、そしてバイチ帝国の一行を監視していた所、ドストラ・アーデに少々不穏な動きがあったようです。最大限の警戒をしていなければ、私達のレベルでも気が付く事ができなかったと言っていました〜」


「……だれ、それ?ドストラ・アーデ??」

「ジトロ様、ここのギルドマスターですよ〜!」


 おっと、あいつはそんな名前だったか。

 あいつの名前はクソギルドマスター一択だったから、覚えていなかった。


「……そうだったな。それで、そのクソギルドマスターがどうした?」


 少しジト目で見られたが、気にしていたら負けだ。


「えっと、あの隠密が得意なNo.4(フィーア)がようやく気付いた程の違和感なのですが〜、何かを探しているようなしぐさを、周りに悟られないようにしきりにしていたのです。あまりにもタイミングが良すぎなので、あのドストラ・アーデが新種魔獣の件に関係している可能性が高いと判断しました〜」


 仲間がここまで断言するのだ。きっとクソギルドマスターが何か知っているのは間違いないだろう。

 あのクソギルドマスター、何がしたいのだ?


 あいつは、王都での宿をわざわざ取り直している位だから、バイチ帝国の一行を亡き者にするなどと言う暴挙ではない…と思いたい。

 しかし、新種の魔獣が一匹とは限らないわけで、対応が、後手になってしまうかもしれない。


 今思い出したが、最初に現れた新種の魔獣に関しては、あのクソギルドマスターが焼却したはずだな。

 ひょっとすると、何かの証拠隠滅か?


 二番目の魔獣は、普段何の仕事もしないくせに自らが積極的に排除の隊を指揮していた。ま、その時は既に俺達が始末した後だったが。


 だが、そう考えると、あいつは全ての新種の魔獣になんらかの接点がある。


 よし、大いに私怨もあるがここはあいつを悪だと断じて、あの一行の監視をしている面々に対応してもらおう。

 クソの普段の行いも悪そのものだったので、この判断は間違っていない……はずだ。


No.10(ツェーン)、よく聞いてくれ。俺も、クソギルドマスターが裏で手を引いていると思う。いや、間違いないだろう。なので、ハンネル王国にいるNo.6(ゼクス)を除くNo.4(フィーア)No.7(ジーベン)No.3(ドライ)に指示を出す。だが、あのクソギルドマスターだけでここまでの行動が起こせるはずがない。何やら裏で糸を引いている者がいるはずだ」


 ゴクリと唾をのむNo.10(ツェーン)。普段呑気な彼女にしては珍しい反応だ。


「まずは全員偽装を行い、顔を変える。覆面でも被っているように見せれば良いだろう。その後、一行の前に姿を現し、討伐済みの新種の魔獣を全員に見せるのだ。その時の一行の表情を絶対に見逃すな。特にクソギルドマスターだ。そこで驚き以外の表情を浮かべれば、100%クソギルドマスターは黒だという事が確定する」


 最後の確認は大切だからな。冤罪の可能性も0.001%位は有るかもしれないので、その保険だ。


「そして、同行しているクソギルドマスターの騎士達の表情も監視の上、黒と判断したら全員捕縛する。そこで本当の目的、そして誰の差し金でそんな行動をしたのか吐かせる。だが、一応バイチ帝国の面々にも事情を明らかにする事は忘れるな」


 俺は、バイチ帝国の面々については、監視はしていたが悪い奴らじゃないと判断した。

 俺の指示による作った露天風呂を褒めてくれたからな。

 逆に、クソギルドマスターはどこまで行ってもクソなので、比べるまでもない。


 いや、普通に基準としてはおかしいとは思っているけど、嘘は付けない。


「よし、頼んだぞ。何かあれば、すぐに来てくれ」


 No.10(ツェーン)は素早くこの部屋を出ると、恐らく転移するのだろう。人気のない方向に急ぎ足で向かっている。


 やれやれ、困ったもんだ。

 あっ!捕縛後の具体的な指示を忘れた!情報を吐かせるとしか伝えていない……


 ま、なんとかなるだろ。しっかり者のNo.7(ジーベン)もいるしな。


「度々すみませんでした」


 こうして、俺は再び副ギルドマスター補佐心得として窓口業務に勤しむ。


 しかし、俺の表情は少し緩んでいるに違いない。

 今後の動き如何によっては、あのクソギルドマスターがこの場からいなくなるのだからな。ハハハハハハハ。

 これで、俺の役職も少し短くなってくれるに違いない。


 もしこの悲願が達成されれば、長きに渡りクソギルドマスターからの嫌がらせに耐えてきた、この俺自身を褒めてやろう。

 自分へのご褒美に、皆には内緒で酒も飲めて、豪勢な夕飯も食べられる店にでも行こうかな?


 グフ、グフフフフ……


 おっと、よだれが出そうだ。

 今は業務中。気を付けないとな。


「あの、副ギルドマスター補佐心得、大丈夫ですか?戻られてから、少し挙動不審と言いますか、表情が微妙と言いますか……」


 いかん、他の受付にも怪しく見えているようでは、冒険者にはもっと怪しく見られているだろう。


「ごめん、大丈夫だ。早速業務を開始しよう!」


 と言ったものの、やはり俺は挙動不審だったようで、俺の前には誰一人として冒険者は並んでいなかった。


 なんてこったい!!

まだ続きます

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