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三度目の新種魔獣襲来

「いや、ジトロ副ギルドマスター補佐心得!素晴らしいもてなし、ありがとうございます。宰相も大満足でした。特に、あの大きなお風呂。しかも外の景色を見ながら入れるとは、なかなか斬新ですな。まるで外の環境と一体となったあの感覚。バイチ手国に戻り次第、我らも同様の施設を作ろうかと思っております。その際は、アドバイス頂けると助かります」


 俺が予約をしておいた宿が、思いの他好感触で安心した。

 あの宿の建設時に、店主から目玉となる施設について助言を求められて、俺の前世の知識である露天風呂を紹介した経緯がある。


 当初、店主は俺のアドバイスに驚いていたのだが、もちろん外から直接風呂場が見えないようにするとか、色々話をしたら乗り気になって作ったのだ。

 そのおかげか?この宿は常に大繁盛しており、なかなか予約が取れない事で有名になっている。


 今回、俺が唯一と言っていい、多少無理を聞いてくれるこの宿にバイチ帝国の皆さんの予約を入れたのだが、気に入ってくれたようで良かった。

 大成功だ。


「王都の方では、これ以上の宿を準備させて頂いておりますので、是非楽しみになさってください」


 俺の失態、つまり、バイチ帝国の面々からのクレームがある事を予想して、クソギルドマスターが朝も早くから宿まで来ている。

 もちろん、バイチ帝国からのクレームのフォローをするためではなく、俺を叱責するためだ。


 しかし予定が狂ったのか、バイチ帝国の面々は大絶賛しているので、急遽方針を変えて、王都の宿がいかに素晴らしいか……について語り始めたようだ。

 さりげなく自分の家の者に宿の変更を大至急行う様に指示していたのを、俺は知っている。


 だが、俺が受け持った部分は大成功なのは間違いないので、一切文句を言われる事はない。

 バイチ帝国の面々がいなかったら、何かと難癖をつけてきたかもしれないが……


 こうして仕事が大成功したので、そのままスミルカの町の出口まで非常に良い気分のまま同行し、王都への出立を見送った。


 アハハハ、あの悔しそうなクソギルドマスターの顔。ザマーみろ!!


 とりあえずあの一行と、目的地であるハンネル王国には、俺の仲間が引き続き護衛や情報取集の任についている。

 No.4(フィーア)が宰相の護衛と監視、No.7(ジーベン)No.3(ドライ)が騎士達の監視、No.6(ゼクス)がハンネル王国側の護衛と言う構成だ。


 今の所の監視の結果は、特に怪しい動きはないとの事だった。

 むしろ、風呂で大はしゃぎしていたと言う報告位しか上がってきていない。


 年頃の女の子が露天風呂の監視をしていた事については、無視してくれるとありがたい。


「ふ~、これで一応ギルドとしての仕事は終わったな。成功して何よりだ」


 ギルドに戻り独り言をつぶやくと、熟練の受付が労ってくれる。


「良かったですね、副ギルドマスター補佐心得。今回のバイチ帝国の方々、とても喜んでいたと言う噂が流れていますよ」


 きっと、あの辺りにいた冒険者たちが噂を流しているのだろう。

 相変わらず、情報が早いな。


 すると、俺の前にかわいらしい女性が来た。


「ジトロ副ギルドマスター補佐心得、少し相談したいことがあるのですが、お時間大丈夫でしょうか?」


 この娘はNo.9(ノイン)。何かあったと判断した俺は、いつもの通り受付から離席し、別室で話をする。


「どうしたNo.9(ノイン)、何かあったのか?」

「はい、バイチ帝国一行の道中に、以前出たような新種の魔獣の気配を察知したNo.4(フィーア)が誰にも察知されないように駆除したようなのですが、明らかにバイチ帝国の一行を狙っていたそうです。この件、ジトロ様に大至急報告するように指示を受けて来ました」

「またか。でもその魔獣、丁度あの一行が近くにいたので襲おうとしたんじゃないのか?」


「いいえ、明らかにバイチ帝国の一行をかなりの距離、追跡していたようです。もちろん、その間には、あの一行よりも多人数の商隊や魔力レベルが低い面々ともすれ違ったのですが、どの一行にも一切の興味を示さなかったようなのです」


 流石に三度目の新種の魔獣、そしてバイチ帝国の一行ともなると、ある程度慎重に行動を把握しているようだ。

 おそらく、魔獣の把握はNo.4(フィーア)が行っていたのだろう。


「わかった。その理由まではわからないのか?ひょっとしたら、魔力レベルが高い一団に狙いをつけていた可能性もあるだろう?」

「いいえ。No.4(フィーア)の報告では、明らかに魔力レベルの少ない場所、馬車の方に狙いを定めていたようです。そもそも魔力レベルが高い獲物を探しているのであれば、No.4(フィーア)達が狙われるはずです」


「確かにそうだな。でも、No.4(フィーア)達は存在を明るみにするような行動はしていないだろ?その新種の魔獣程度では感知できなかった可能性もある。しかし、わざわざ周りの騎士を狙わずに魔力レベルの低い馬車……宰相が乗っている場所をねらうか……それで、ウチのクソギルドマスターの動きはどうだ?」

「もちろんNo.4(フィーア)達の存在にも気が付いていないので、新種の魔獣が狙いをつけている事もわかっていないと思います。その証拠に、護衛の立ち位置にも変化はありませんでした」


「わかった。その魔獣の推定レベルはいくつだったか、聞いているか?」

「はい。魔力レベルが20前後、前回と同様の域だそうです」


「わかった。また何かあったら連絡をくれ」


 せっかく俺の事を良く言ってくれた彼らに被害が出るのは面白くない。

 どうせなら、クソギルドマスターに狙いをつけてくれればよかったのに!!


 しかし、どうしたものか。

 この新種魔獣の行動が何を意味するのか……

 魔力レベル20近辺の魔獣に襲われてしまったら、いくらバイチ帝国の一行でもかなわないだろう。

 

 最悪のケースは、考えたくもないが、悪意の第三者による強制的な魔力投与によって変質した魔獣が、意のままに操られてしまう事だ。

 つまり、明らかに人の悪意によって作られた魔獣による攻撃である事。


 とすると、いつ、誰が、何のために……


 あの一行の安全は彼女達に任せているので心配はしていないが、新種の魔獣……もう少し本腰を入れて調査をしなければならないな。

今日は終わりです

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