バイチ帝国(10)北門のNo.10(ツェーン)
大爆発による振動が収まってきた。
その後、恐らくNo.10が強制的に土煙を除去したのか、悪魔と暗部、そしてNo.10だけが残っている魔法防壁内部の様子が見える。
少し離れたに箇所に巨大な穴が開いているので、あの二か所が魔道具の爆心地であるのは間違いないだろう。
「これでゴミは始末できました。後はあなた達だけです。この短い間に、己の罪を反省しなさい!」
再び両手に魔道具が出現される。
次は“炸裂玉(極)”だ。
見た目はあまり変わらないが、極悪度、凶悪度、破壊度、全て桁違いの魔道具。
直前に経験した“炸裂玉(改)”に対して、全力で防御する事で辛うじてかすり傷程度で済んでいる悪魔とバリッジ暗部。
既に回復済みだが、No.10が再び出した魔道具はかすり傷ではすむはずがないと言うのは分かる。
今攻撃をしても、恐らくNo.10は転移で退避する可能性が高いと踏んだ悪魔とバリッジ暗部。
既に命を捨てているバリッジ暗部の二人を盾にして乗り切り、攻撃後に発生するはずの隙を突いて全力で攻撃する手段を取るための配置となる。
No.10自身も魔道具の影響を受けるはずなので、魔道具が起動した際に防御に意識が向いていると判断したのだ。
「やはりゴミはゴミですね。その程度の考えしか浮かばない存在であるにも関わらず、敬愛するアンノウン首領に牙を剥くとは……救えない」
両手に出現させた魔道具“炸裂玉(極)”がNo.10の手から浮くと、No.10の周囲を囲う様に“炸裂玉(極)”が分裂し始めたのだ。
もちろん、オリジナルと同じ禍々しさを放ちつつ……
これは、No.10もリミッターを外して全力で錬金術を行使している事による。
瞬時に全く同じ魔道具を複製しているのだ。
二つの魔道具であれば、バリッジ暗部二人の犠牲を伴うが何とか耐えられる可能性があると考えていた悪魔とバリッジ暗部。
しかし、その希望は脆くも崩れ去る。
既にNo.10の周囲には16個に分裂した“炸裂玉(極)”が浮遊しているからだ。
「ゴミはゴミらしく、焼却するべきです。絶望を感じながら逝きなさい」
更に分裂させ、32個の“炸裂玉(極)”を出現させたNo.10。
既に悪魔は逃走に意識が向いている。
既に死を受け入れているバリッジ暗部でさえ、逃走を考え始めている程だ。
だが、行動に移す前に魔道具は起動される。
バリッジ暗部の四人が、決死の覚悟でNo.10に向かって攻撃を仕掛ける。
だが、起動済みの魔道具が投げ込まれて暗部の放った魔術は霧散、直接攻撃を試みた一人は、魔道具の直撃を受けて地面に叩きつけられている。
そして体感で一秒後……魔道具が炸裂した。
“炸裂玉(改)”を大きく上回る威力の“炸裂玉(極)”。
更には起動した個数も段違い。
当然バイチ帝国内部から聞こえてくる悲鳴も桁違いになっているが、北門を襲撃しに来た悪魔とバリッジ暗部、そして連合軍は遺留品のかけらすらない状態で、完全に消滅した。
残ったのは、北門前の巨大なクレーターだけだ。
魔法防壁が解除されると、上空にいたNo.10は意識を失い落下する。
当然ナップルがすかさず救出している。
こうしてバイチ帝国を襲撃したバリッジと悪魔、そして連合軍は完膚なきまでアンノウンに叩き潰された。




