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ギルドへの報告

 この問題は非常に報告も難しい。


 第一に、転移に関する情報を上手く伝えられない点だ。

 転移自体が使える可能性があると伝えたとしよう。

 そうすると、何故そんな事がわかるのか、と言われる事は間違いない。


 第二に、魔力レベルが20以上になっているだろう点だ。

 昨日の冒険者達の救出では二人を無事に帰還させただけで、魔獣を発見できずに討伐はできなかったと報告してしまっている。

 にも拘らず魔力レベルが20以上であると報告してしまうと、普通は魔獣を発見していないとレベルなどは分からないので、前回の報告が虚偽の報告とされてしまう可能性がある。

 それに、どうやって魔力レベル20以上であると判断したかの根拠も求められてしまうのだ。


 もちろん、No.7(ジーベン)の解析によるもの等とは決して言えない。

 そんな力を持っている者がいないので、信用されない事。

 万が一信用されてしまったら、俺達の力をどうにかしようとする連中が鬱陶しいからだ。

 

 第三に、魔獣自体がその力をコントロールできていないと言う点。

 これも、何故そのような事がわかるのか説明する事ができない。


 しかし、このままでは冒険者が危険な状態に置かれる事は間違いないので、何も報告しない訳には行かない。

 と同時に、俺達の部隊を動かす必要があるだろう。


「とりあえず事態は理解した。既に依頼を受けてしまっている冒険者達の安否が心配だ。悟られないように護衛しつつ、その魔獣を捕獲してくれ。なるべく生け捕りが良いが、無理であれば生死は問わない。これは俺からの正式な命令だ。全員で任務に当たれ」

「「「はっ」」」


 普段、俺は仲間達に命令を出す事は殆どない。

 何かあれば、お願いするのが基本だ。

 お願いを断られた事は無いが、最近立て続けに起こっているように、報酬を催促される場合が多々ある。

 

 だが、このような緊急事態ではそんな余裕はない。


 俺の真剣な表情での命令とあってか、三人は即座にこの部屋を出てギルドからも出ると、人目を避けた上で拠点に転移していた。


 そこで、俺の命令が全員に行き渡るのだろう。


「少し良いかな」


 俺は自分の席の近くにいる、頼りになる受付業務の全てを知り尽くしている部下に声をかけた。

 もちろん、今回の報告をどのようにするか相談するためだが、推測として転移や魔獣レベルの事を伝えて見る。


「今、昨日の魔獣の話をされたんだけど、彼女達の経験から、あの場に現われたであろう魔獣は相当強いみたいだ。三人が三人とも同じ事を言っていた。それに、御伽噺とも言われている転移系統の魔法も使える可能性があるようだ。だが、このままあのマスターに報告しても炎竜の鱗や昨日の救出依頼の件で、あの二人の心象が悪いだろ?信じてくれない可能性が高い。それで、どうやって報告しようか迷ってるんだけど、何かいい案はないか?」

「う~ん、そうですね。私でも転移については信じられませんけど、あの魔力レベルが高い一行が全員同じ事を言っているのですから、無視するわけにはいきません」


 そう、彼女達は偽装しているとはいえ、このギルド最強となっている。

 その為、一定以上の信頼を得ているのだ。偽装している登録魔力レベルをあまり低くし過ぎないで良かった。

 

「では、あの魔獣の痕跡が、薬草採取の場所だけではなく色々な場所にあったと言ってはいかがでしょうか?何か言われたら、あの冒険者二人を救出した場所にあった見た事もない足跡が、他の場所にもあったと言えばいいでしょう。ギルマスが確認しに行ったとしても、足跡は無くなったと言えばいいだけですからね」


 流石はベテラン。素晴らしい。これで、魔獣がどこにでも現れる可能性があると警告できる。


「ありがとう。そうさせて貰うよ」


 そう言えば、アイテムで逃げる事が出来た冒険者。あれはきっと、自分の力がコントロールできていない状態のピグマスが初めて攻撃の様な物を受けて動揺したのだろうか?

 この辺りは魔獣自身にしかわからない事だから、考えても仕方がないが。


<クソったれ、なんでこの俺が、あんなクソにこんな報告をしなくちゃならない。自分で情報を集めろ!!いや、そもそもお前が情報を持っていても、何の役にも立たないだろうが!!>

「ギルドマスター、ジトロです。あの魔獣についての情報をお持ちしました」


 よしよし、引き続き、俺の心の声も絶好調だ。


「入れ」


<けっ、偉そうに。普段はいないくせに、こんな時だけいやがって。早く帰れ!>

「失礼します」


「で、どの程度の情報を集めた?平民程度の情報等期待はしていないが、聞かせてみろ」


 ふぅ~、このまま心の声を発していると口に出そうなので、この辺りで止めておこう。


「ええ、あの魔獣、やはり新種の様です。二人の冒険者を救出した近辺で見た事もない魔獣の足跡が発見されました。しかも、その足跡はあの薬草採取の周辺のみならず、他の場所でも発見されています。このままでは、第二、第三の犠牲が出てしまいます」


 と、俺が長いセリフを言い終わると、なんとこのクソギルドマスター、何やら考え込んでいる。

 いつもの調子で何か言い返してくるのかと思った俺は、拍子抜けだ。

 そもそも俺の報告をまともに聞いて、何かを考えている時点で色々とおかしい。


 こいつも、新種の魔獣ではないが、新種の何かに侵されたか?


「わかった。対策は追って指示する。下がれ」

「…はい」


 やっぱりいつもと違い過ぎる。

 ついにこのクソギルドマスターも、冒険者達を大切にできる普通のギルドマスターに昇格したのだろうか?


 だとすれば、そのきっかけを作ってくれた新種の魔獣、ピグマスには感謝しかない。

 褒美として生け捕りした後に拠点の庭で、炎竜の親子であるピアロ、コシナと共に、飼ってやっても良い。


 そして、夕方になると、冒険者達が帰還してくる。

 少々心配しつつ受付業務をしていると、どうやら俺の命令を完遂してくれたようで、今日クエストを受けた者達で欠けている者はいなかった。


 拠点に帰り、既に帰還している皆と話をする。

 庭には炎竜の親子と共に、魔法できつく拘束されているピグマスのような魔獣がいた。


 新種のピグマスは確かに魔力レベル22になっているが、それ以上の上昇の兆しは見られない。

 既に力にも慣れたのか、それとも炎竜が近くにいるからか、おとなしい。


「この拘束、外してやっても良いのか?」

「いいえ、ジトロ様。今は少し大人しくしていますが、この拘束を外すとまた暴れる可能性が高いです」


 どうやら、この個体が暴れん坊なのは力に踊らされているだけではなく、生来の気質もあったのかもしれないな。


「ところでNo.7(ジーベン)、この個体の解析、直接実施したか?」

「いいえ。ジトロ様の許可を得てからと思い、まだ実施しておりません」


 今回は、命令として捕獲を指示してしまった。

 もちろん、ぱっと見無傷で捕獲している。


 その為、捕獲対象の魔獣に対して捕獲以外の行為を行うにも、俺の命令違反にならないか確認する必要がある…と彼女達は思っているのだ。


 真面目過ぎると思うんだがな……

今日は残り1話です

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