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バリッジの困惑

 同時刻、バリッジの拠点でも蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。


「悪魔がハンネル王国に出たそうだぞ」

「当然だろう。聖剣があるのだ。悪魔が出ないわけがない」


 そう、この悪魔はバリッジとは一切関係のない者だったのだ。つまりは、確実に第三勢力という事になる。


 ただこの悪魔、今までの歴史を紐解けば最終的に聖剣の力によって始末されているのだが、どう言った理由なのかは不明だが、ある期間を経過するといつの間にか復活しているのだ。


 その時には不思議と聖剣も復活しているので、犠牲の大小は別にして、最終的には悪魔は討伐できると考えられている。

 だが、今までそうだからと言って今回も同じであるとは限らない。


 更にもう一つ。悪魔の目的はバリッジと似た様なものではあるのだが、大きな違いは貴族であろうが何であろうが人族を支配下に置くと言うところであり、バリッジにとっても脅威となっている。


「首領はどのようにお考えなのだ?」

「まだ、誰もお言葉を聞いていない」


 バリッジの幹部は聖剣奪取の任務が無事に終了していれば、この拠点に攻められたとしても魔力レベル40近傍の暗部の誰かに聖剣を使用させて、悪魔を容易に討伐できると考えていた。


 しかし、結果的には聖剣奪取の任務は失敗し、今はハンネル王国の宝物庫に保管されている。

 そのために、悪魔の矛先がバリッジの拠点に向いた場合、自らの力のみで対抗する必要があるのだ。


 その存在が明確になっていない悪魔。当然バリッジとしても詳しい情報を持っていない。

 市井の民が知っている程度の情報、聖剣を持つ者によって討伐されている位しか知らないのだ。


 当時の聖剣を使用した者の魔力レベルすら不明。

 聖剣の本当の力すら不明。


 そんな中、とある幹部が最新の情報を公開する。


「ハンネル王国の国王と宰相が、聖剣を近衛騎士に渡したらしい。既に悪魔の目撃地点に移動しているぞ」

「そうか、ハンネル王国が動いたか。我らはどうする?」

「いたずらに動いて悪魔の標的になるのもバカバカしい。それに聖剣を所持しているハンネル王国が動いたのであれば、伝承通りであれば聖剣によって悪魔の討伐は可能なのだろう?しばし様子を見てみたらどうだ?」

「それが良いだろうな。だが、この拠点の警戒度合いを上げると共に、暗部の一隊を情報収集に当たらせよう」


 このバリッジの決定により、ハンネル王国で悪魔が目撃された森ではアンノウン、バリッジ暗部、悪魔、そしてハンネル王国の近衛騎士フォトリと従者が集合する事になった。


 悪魔の詳細は不明だが、なぜか聖剣所持者の魔力レベルが一番低いと言う訳の分からない状態ではある。


◆◆◆◆◆◆◆


「グフフ、人族とは本当にバカな奴らよ」

「まったくだ、何故我らが常に復活できるのか等、理解できないのだろうな」

「仕方がないだろう。しょせん長くとも100年程度しか生きられないのだ。対して我らは、良く覚えていないが今回は数百年ぶりの復活か?情報など正確に伝わる訳がない」


 ハンネル王国に隣接した森の奥。ここには、ジトロの予想通りタイシュレン王国で目撃されていた悪魔も合流して三体の悪魔が話をしていた。


 実は悪魔は聖剣と対の存在。つまり、聖剣ある限り、悪魔も必ず復活する。


 そしてこの悪魔達、この場にいない悪魔も複数存在しているが、前世の記憶や力を引き継ぐ事ができるのだ。

 つまり、討伐、復活、を繰り返しているうちに、徐々にではあるがその力を増やし続けている。


「人族の奴ら、まさか、聖剣が我らが作った魔道具だとは思ってもいないだろうな」

「まったくだ。我らの力を強大化させる為の魔道具。あのような物を創り出せるとは、流石は魔王様と言った所か」

「人族も、あの聖剣が我らを滅する事のできる最終兵器のように思っているのだろうな。フハハ、滑稽」


 こう話している三体の悪魔。

 人族の伝承にすら出てこない時代から存在しており、既に魔力レベルは80台後半。


「魔力レベルが90台に突入したら、人族を蹂躙するのだったな?」

「そうだ。悲願達成までもう少しだ」

「あの聖剣もいよいよ最後か。あのおかげで我らは復活するとはいえ、人族に余計な力を与えているのも事実だからな」


 聖剣を創り出した魔王は、聖剣が人族の希望として認識されるように所持者に対して力を与えるように調整していた。

 その目論見通り、聖剣の力を得た所有者はその時代の悪魔を激闘の末に全て討伐してきたのだ。


 もちろん悪魔がかなり優勢な時代もあり、聖剣所持者が敗北した事もある。

 だが、その場合には聖剣は消滅せず、次の所持者が悪魔と対峙する事によって最終的には討伐を成し遂げてきた。


 一旦討伐されると、復活のタイミングは正に聖剣の気分次第。

 この辺りは、誰にも制御できなくなっていた。


 この聖剣を創り出した魔王、一応悪魔の親玉的な存在ではあるのだが、今はこの世界には存在していない。

 いや、この聖剣に乗り移っていたと言った方が良いのかもしれない。


 これほどの力を与えているのだから、自らの命を与える位まで力を籠める必要があったのだ。


 この事実を悪魔達は知っているが、魔王の遺言もあって何れ魔力レベル90台になった暁には、聖剣を破壊するように指示を受けていた。


 当然魔王も自らの命を無駄に散らす事は考えていないので、魔力レベルが90近い悪魔によって聖剣が破壊されたときに、自らも復活できるように仕込んでいた。


 だが、この情報を知り得る悪魔は一体もいない。

 そして、既に聖剣が完全に破壊されている事も……

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