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四人の冒険者達(1)

 私はジュリア。

 最初にナップルさんの魔道具を購入したの。


 私のパーティーは、ロレンサリー、そして姉妹のマチルダとメリンダ。

 少し前までは普通に冒険者として活動できるようになっていたけれど、マチルダとメリンダが何者かに襲われた事件があってから、昔を思い出してしまって冒険者としての依頼を受ける事ができなくなってしまったの。


 そう、実は私達、マチルダとメリンダは二人、私とロレンサリーは一人で別のパーティーに所属していたのだけれど、かなりひどい扱いを受けていたのよ。一部の冒険者達からだけれども、本当に辛かった。


 理由は簡単。


 工房ワポロの武具を使っていなかったから。


 陰口、直接の暴力、そしてひどい時には囮にすらされていたの。

 必死で戦う事で魔力レベル4になっていたのだけれど、このままでそう長くないうちに殺されると思って、思い切ってパーティーを抜けてソロで大人しく薬草採取をしている所に出会ったのが他の三人。


 話を聞くと皆同じような境遇だったので、思い切ってパーティーを組んだのよ。


 それに皆戦闘は好きじゃないみたいで、環境も似ていた事もあってかすぐに打ち解けたわ。

 でも、一部の冒険者達の視線は変わらなかったので、大して必要とも思えなかったけれど工房ワポロの武具を購入したの。


 すると、直接的な暴力や嫌がらせはなくなって、稼ぎは悪いけれど薬草採取で生計を立てる事ができたの。

 でも、どんなに安全だと思われる依頼を受けても、場合によっては魔獣との戦闘が避けられないの。

 そんなときは、四人で力を合わせて乗り切ったわ。


 中にはかなり高値で購入してくれる魔獣もいたので、かなりの貯金もする事ができていたのよ。皆特に無駄遣いをする事も無かったのが幸いしたわね。


 こう言った経験があったので、私達のパーティーは結構有名になっているのではないかしら?


 でも、工房ワポロで購入した武具、安い武具ではあったのだけれど、はっきり言ってない方がましな程度の武具だったわね。

 もっとすごい武具があれば薬草採取ももっと安全に出来るし、色々言ってきた冒険者達も黙らせる事ができるのに……と、そんな事を思いながら、いつもの通り薬草採取の依頼を終えてギルドに向かっていたの。


今日は自分が換金の担当だったので、一人でギルドに向かった後で皆と合流しようとした所、工房ナップルと言う看板が目に入ったの。


 そこには、信じられない性能の魔道具について書かれていたわ。

 半信半疑で武具を見せてもらうと、予想以上の品物で驚いちゃった。

 これが私とナップルさんとの出会い。


 その翌日に、工房ナップルの話をしたパーティーメンバーを引き連れて、同じように魔道具を購入する事にしたのよ。

 工房ワポロの武具を手放す事で昔の扱いに戻ってしまう事を不安がっていたけれど、あまりに凄い魔道具の性能だったので、皆決心する事ができたみたい。


 そして、時折魔道具の力を利用して魔獣討伐の依頼を受けたりもしていたのだけれど、ある日、ナップルさんからの依頼の鉱石採取の依頼に向かったメリンダとマチルダが予定時刻に帰還しなかったの。


 結果的には全員無事だったのだけれど、訳も分からず瀕死になった状況を説明されて、理不尽な扱いを受けていた頃の記憶が戻ってしまったのよ。


 それは、私のパーティーメンバー全員が同じ状態になっているようで、私から見ても日に日に全員、そう、自分を含めた全員の元気がなくなっているのが分かるの。


 今は何とか工房ナップルの中でナップルさん達と共に生活をさせて頂いているけれど、何時までも貯金が持つわけでもないし、迷惑をかけ続けるわけにはいかない。

 でも、心ではわかっているのだけれど、どうしても不安で潰されそう。


 そんなある日、夕食後に話があると呼び止められたの。

 いよいよこの日が来たと覚悟したわ。


 ナップルさんの顔も、どう話を始めようかと悩んでいる顔。


 そうよね、何時までもこんなお荷物パーティーを居候させておくわけにはいかないものね。

 でも、この場所を失ったら、私達の今後は……どうなるかなんてわかりきっているわね。


 貯蓄があるうちはまだ良いけれど、そうでなければそのうち借金奴隷、今回のように謎の人たちに襲われる、ひょっとしたら以前の冒険者達がバイチ帝国にまで来て嫌がらせをしてくるかもしれない。


 悪い想像はいくらでもできてしまうのよ。


 でも、ナップルさん達のせいじゃない。そこだけは決して勘違いしないようにしなくてはいけないわ。彼女達は、私達に本当に良くしてくれた。


 感謝こそすれ、恨むなんてお門違い。

 今までありがとう。ナップルさん、ディスポさん、バルジーニさん。


 そう覚悟を決めて話を聞こうとしたのだけれど、内容は私達の理解を超えていたので、よくわからないわ。


 なんでも、ナップルさん達は、マチルダとメリンダを襲った者達の組織と対立している組織の一員である事、今後は私達を組織の拠点でかくまってくれる事、今の秘密を決して洩らさない事、最後に、ナップルさん達の組織の目的は、理不尽な奴隷制度を無くす事。


 最後の部分だけは、私達に意見を求められたの。

 今まで散々理不尽な扱いを受けた経験のある私達は、即賛成したわ。


 そうしたら、ナップルさん達は満面の笑みで私達を仲間にしてくれると宣言してくれたのよ。

 色々凄すぎてわからない事が多すぎだけれど、私達パーティーが救われたのは確かよ。


 事実、今私達はアンノウンの拠点の中の温泉にナップルさんと一緒にいるの。

 そこには、No.10(ツェーン)さんもいたのよ。


「あら~皆さん。話はきいています~。これからよろしくお願いしますね!」


 いつ私達の話を聞いたのかはわからないけれど、この拠点に来るのも、転移なんて言うお伽噺の中でしか聞いた事の無いような術を平気で使える人達だから、何かの術で意思疎通をしたのでしょう。


 「「「「はい、よろしくお願いします」」」」


 安全が確保されたからか、温泉と言うこのお風呂がとっても気持ち良いからか、周りの皆さんがとっても優しいからか、とっても気持ちが楽になったの。


「えっと、皆さん、今日の夕食時にはアンノウン全員がそろっていますので、皆さんを紹介しますね。それと、この拠点には安全の為に龍が警戒に当たっていますので、その二体も紹介します。驚かないでくださいね」


 えっ??龍???龍って言ったのかしら?

 でも、この組織アンノウンならあり得なくもないわね。

 もうなんだか驚きすぎて動じなくなってきたわ。


「もちろん首領にも会って頂きます。顔を見せる程度と考えて頂ければ大丈夫です。フフフ、私も首領と初めてお会いする時は本当に緊張しましたけれど、全く緊張する必要のないお方ですよ。楽しみにしていてください」


 そんな事を言われても、緊張するなと言う方が無理でしょう、ナップルさん??

 龍に会うよりも緊張するわよ。

 だって、その龍すら従えているお方でしょう?


「フフフ、本当に大丈夫ですよ。私も、No.10(ツェーン)さんも一緒にいますから」

「そうですよ~、何の心配もいりません。緊張するだけもったいないですよ~」


 なるようにしかならないわね。

 一応私はこのパーティーのリーダーなのだから、しっかりしないと……


 と思って、夕食を迎えたのだけれど、この力を持っている組織アンノウンの首領にお会いして、緊張よりも驚きが先に来てしまったわ。


 そう、帝都のギルドに勤められているジトロ副ギルドマスター補佐心得その人だったのだから。

 この人は、私達がラグロ王国から移住したのをご存じで、それは優しく丁寧に対応してくださったから良く覚えているわ。このお方が首領。なんて素敵な組織なのかしら。

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