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アンノウンVSバリッジ暗部

『では行きますよ!』


 No.7(ジーベン)の指示により、アンノウンは気配を露わにして四人と建屋内部に待機していた者達に襲い掛かる。


 こうする事によって一瞬でも動揺が走り、マチルダの安全な救出が容易になるのだ。

 常に周囲を警戒していた暗部は突然現れた複数の巨大な気配に驚き、意識を完全にアンノウンの方に向けてしまった。


 一人だけ気配を断ったままにしていたアマノンが、暗部によって抱えられているマチルダを救出し、距離を取る。


「貴様ら、アンノウンか!我らに牙を剥くなど身の程を知るが良い!」


 暗部の隊長らしき人物が叫んでいる間に、既に建屋内は完全に制圧されている。

 今この時点で自由に動けるのは、暗部の四人だけ。


 そして、その暗部四人を遠巻きに囲う様に、建屋の中にいたバリッジ側の冒険者二人と未だ意識のないマチルダと共にアンノウンの全員は移動している。


 ある程度距離を取らないと、暴走No.3(ドライ)によってどのような被害を受けるか分からないからだ。

 特にアンノウンゼロはナンバーズの攻撃を完全に防ぐ事はできないので、かなりの距離を取っている。


 もちろん、魔力レベルが一桁の建屋の中にいた二人の事もあるので、必要以上に距離を取ったのは彼らの安全対策でもある。


「お前らの相手はこの私、アンノウンのNo.3(ドライ)がしてやる。フフフ、せいぜい楽しませろよ、バリッジのクズ共!」


 獰猛な笑みを浮かべて四人に無防備に近づいて行くNo.3(ドライ)

 だが、覆面状態であるので、その表情を悟られる事は無い。


「貴様、やはりアンノウン。だが、我ら暗部を侮りすぎだ。我ら四人を一人で相手にするだと?笑わせてくれる。その傲慢な態度、死んで後悔すると良い」


 この会話の最中に、暗部の四人は立ち位置を移動しつつ魔力を身体強化、魔力強化にそれぞれ振り分けている。

 隊長も、No.3(ドライ)の態度に憤慨しているように見せかけて、配置や魔力移動の時間を稼いでいたのだ。


「ハハハ、御託は良いから早く準備を整えろ。いつまで待たせるんだ?」


 だが、No.3(ドライ)にはお見通し。

 むしろ、早く準備を終わらせるように急かして見せた。


「……なる程、やはりアンノウン。最大限の警戒を行って、尚その上を行くか」


 四人の暗部の顔つきが変わる。

 すでに四人の中では自らの死を受け入れており、万が一の為にバリッジの拠点の情報を抜かれないように、自ら時間経過の毒を摂取した。


 暗部全員が奥歯に仕込んでいる毒。

 アンノウンには、悔しそうに奥歯をかんでいるようにしか見えない程度の僅かな動き。


 だが、バリッジが準備している毒がただの毒であるわけがない。

 既に魔獣の合成技術も確立しつつある組織。そんな組織が準備した毒は自らの命を代償に、魔力レベルを倍近く引き上げる物なのだ。


 彼らの魔力レベルは40近辺。つまり、この瞬間に魔力レベルが80近くになった事になる。

 アンノウンゼロの魔獣は最近の鍛錬で魔力レベルは60から70へ上昇しているが、それでも今の暗部を相手にすれば厳しい戦いになる。


 が、恐らく負ける事は無い。

 なぜならば、彼らはその溢れんばかりの魔力レベルを一つの術にしか使えないからだ。

 アンノウンは全員並列起動を習得しているので、少々の魔力レベルの差であればひっくり返す事ができる力を得ている。


 そして、自らの魔力レベルが99であるナンバーズに至っては、魔力レベル80が複数相手になったとしても、苦も無く退ける事ができる。


「お~、やるじゃないか。魔力レベル80そこそこか?フフフ、こうでなくてはな」


 暗部は、自らの魔力レベルが看破された事に驚く。

 基本的に自らの魔力レベル以下が対象でなければ、鑑定を行う事は出来ないからだ。


 そこから辿り着く結論……暗部の目の前にいる覆面のアンノウン、No.3(ドライ)は、少なくとも魔力レベル80を超えているという事だ。


「成程、これならばドストラ・アーデやピンファイ、魔獣共が手も足も出ないわけだ」


 あくまでも冷静さを失わない隊長は、隊員と連携した状態で目の前のNo.3(ドライ)に攻撃を仕掛ける。


 若干後方に位置している二人からは、炎と風の魔術。

 これは融合する事で、単体の魔法よりも遥かに威力が増した魔術となる。


 風の勢いで炎が増し、炎の勢いで風の勢いが増すのだ。

 炎による視界不良の中、先端に複数の毒が塗られた短剣を前衛の位置にいる二人が複数投擲する。

 風の力も計算しているので通常以上の速さでNo.3(ドライ)に到達するのだが、No.3(ドライ)はその場で一回転して回し蹴りを行うと魔術は霧散し、短剣は粉々に砕けた。


「おいおい、もう少し楽しませろよ。せっかく魔力レベル80はあるんだろ?チマチマ小手先で攻めるのは止めにして、後先考えずに全力で来い!」


 No.3(ドライ)が煽るのだが、暗部としては初めから全力。既に命を削ってまで力を出し切っているのだ。

 その攻撃を難なく無効にされて、更に煽られる。


 一方のNo.3(ドライ)は久しぶりの実戦に興奮しているのか、なぜか敵の暗部に攻撃の指導を始めてしまった。


「良いか、お前らの投擲、投げ方がなっていない。毒なんかに頼るから投げ方が雑になるんだ。こう持って振り切るんだよ!」


 唯一柄だけが残っている短剣を拾い、お手本を示すように誰もいない山の方向に柄を投げるNo.3(ドライ)


……ド~ン……


 視認できない毒についても看破され、攻撃方法までダメ出しを受けてしまった暗部。

 そして、なぜか手本まで見させられたのだが、ただの柄を投げた先の山の中腹が抉られているのが視認できる。


「あんな事できる訳がないだろうが、この化け物が。お前は俺達に何を望んでいるんだ!何を期待しているんだ!ただの柄を投げて山を破壊できるのはお前らだけだ!!ふざけるな!!!」


 こんな事になってしまっては、この緊迫した場面でガチ切れする隊長を責めるのも酷だ。


 No.3(ドライ)としては圧倒的戦力差ではなく、もっと緊迫した闘いを楽しみたいがために親切心100%で教えてあげたのだが、突然切れられて唖然としている。


 そう、ナンバーズの一部は、どこかネジが複数本飛んでいるのだ。


No.3(ドライ)、あなたは相変わらずですね。無駄に周辺を破壊してNo.10(ツェーン)と変わりありませんよ。ふ~、これはイズンからのお説教は覚悟しておいた方が良いでしょうね」

「ひぃ、ごめんなさい。もうしませんから。ねっ?私も頑張ったんだぞ!」


 そして、バリッジの目の前で繰り広げられる訳の分からない喜劇?

 暗部の隊長を始めとして、命を懸けた隊員もぽっきりと心が完全に折れてしまった。


 力なく膝をつき、下を向く暗部。


「あれ?お前らどうした?本番はこれからだぞ!」


 その姿を見てNo.3(ドライ)が続きを促すが、隊長は力なく首を振り、


「いや、お前らの力は嫌と言う程理解した。今のままではバリッジはお前らには手も足も出ないだろう。だが、我が組織を舐めない事だ。お前らがどのようにその力を得たかは知らないが、こちらも日々力をつけている。フフ、その余裕の態度が崩れる日、あの世から見守っているぞ」


 そう言い残すと、暗部全員がその場で自爆したのだ。

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