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バリッジの戦略

 場所は変わり、バリッジの拠点。


 幹部達は騒然としている。

 優秀な中級構成員であるプラロールからの連絡が突如として途絶えたからだ。


 プラロールは、タイシュレン王国の掌握任務に就いていた。

 順調に事は進み、ラグロ王国に続く国家掌握となっていたはずだ。


 実際に掌握完了との報告を受け、ラグロ王国との交易開始とバイチ帝国との断交を指示した後から連絡が途絶えたのだ。


 中級構成員ともなれば全員と言う訳ではないが、新種の魔獣も任意で制御できる権利を持つうえ自身の魔力レベルも30以上の者が多数を占めている。

 当然プラロールの魔力レベルも33で、魔獣の制御を行う権利を持っている。


 今までであれば、どのような敵でも容易に蹴散らす事ができていたのだが、今は状況が大きく変わってきている。


 いつの間にかその存在が明らかになった、アンノウンによるものだ。


 既に魔力レベル30程度の魔獣では相手にならないと言う情報も得ているバリッジ幹部。

 それほどの強さを持つ者と直接対峙する事は極力避け、国家を裏から操作して、国力を使ってアンノウンを潰そうとしていたのだが……


今回のタイシュレン王国の掌握任務に就いている中級幹部が突如として連絡を絶ったのは、間違いなくアンノウンが関与している、いや、それ以外に考えられないと言う事が幹部全員の一致した意見だ。


 今回のアンノウンによる干渉は、地道に情報を収集していたアンノウンの完全勝利と言える。

 未だにバリッジは、アンノウンが一般市民、ギルド職員として各国で勤務している事を知らない。知る訳がない。


 バリッジもバカではない為、魔力レベルが高い者への警戒を行う様に構成員に通達を出している。

 だが、これが大きな間違いなのだ。

 主に地道な情報収集任務についているのは、アンノウンゼロ。


 魔力レベル0のメンバーである為、そもそも警戒対象に含まれていない。

 まさにジトロの狙い通りになっている。


「忌々しいアンノウンめ。今回は慎重に慎重を期して作戦を実行していたはずだ」

「だがプラロールは消された事は間違いないだろう。タイシュレン王国の掌握に利用していたツツドールとか言う者の行方も分からなくなっているらしいからな。奴らの情報収集能力に対する警戒度を上方修正する必要がある」

「奴が手配した魔獣の気配も完全になくなったようだな」


 紛糾するバリッジ幹部。

 

「新種の魔獣のテストはどうなっている?」


 突然、少々離れた位置に座っており、姿を視認する事ができない首領から発言があり、幹部はあわてて資料に目を落とす。


「現在の最高魔力レベルは43のキメラになります。これ以上になると、今の魔道具では制御ができません」

「一つの魔道具でキメラ一体として制御しようとしているから行き詰るのだ。合成する前の魔獣それぞれに制御を掛けた状態、特に頭脳となる部分には強力な魔道具で制御を掛けた上で合成してみろ!」


 バリッジは、魔獣の合成技術によって高レベルの新種の魔獣を創り出していた。

 通常であればレベル43もあれば最強であるが、アンノウンがいるために、このレベルで満足するわけにはいかなくなったのだ。


 魔力レベル43と言えば、既に伝説級ともいえる炎龍の魔力レベル50に近く、複数体であれば、炎龍単体を撃破できる可能性すらあるのだが……


「そのキメラ、戦闘部隊、暗部のレベル上げに使え。それと、奴らの情報網を把握できるまでは、国家掌握レベルの大々的な動きはするな」


 流石に失態続きになっているので、バリッジとしては表立った動きを停止する事を決定した首領。

 これまでの失態は、全て情報がアンノウンに漏れていた事によると考えていた。


 どこからかバリッジの動きを察知して、いつの間にか構成員と共に排除されてしまうので、この情報網の把握を第一任務に切り替えたのだ。


「そもそも奴らの正体は一切わかっていない。今までの情報を総合すると、魔力レベルは50を超えている事は想像に難くない。そんな連中に情報が洩れているのだ。作戦が失敗するのも当然だろう。我らも同等の力を得るまでは、ここを使って任務に就け」


 首領のシルエットは、右手で頭を叩いている。


 この場にいる幹部達は、魔力レベル50と聞いて驚く事はなく、この世界に魔力レベル50以上になる手法が必ずあると言う事実を改めて認識し、何としても自らもその力を得るために行動する事を誓ったのだ。


 だが、アンノウンと違って魔力レベル∞などはバリッジに存在しない。

 つまり、未だバリッジが発見できていない、魔力レベル99が平気で闊歩しているダンジョンの侵入すらままならないのだ。


 万が一そのダンジョンを見つけて魔力レベル上昇の為に魔獣を仕留めるとしても、相当な犠牲がある事は間違いがないだろう。


 だがそのダンジョン、転移がないと到底たどり着けないような場所にあり、発見する事はできない。

 当然他にも高レベルの魔獣が存在するダンジョンもあるのだが、どこも似たような条件である為、現時点では、魔力レベル上昇を行うには魔獣の討伐以外の方法を行う方が現実的だ。


 首領もその辺りは把握している。

 そのために、魔獣合成の技術力向上を行っているのだ。


 やがては、魔獣と人のキメラを作成し、無敵の部隊を作る事も選択肢として考えている。


 首領を含めて、幹部全員が中級構成員であるプラロールから、この拠点の位置がアンノウンに漏れたとは誰もが思っていない。


 この拠点に出入りできるようになった人物は、戒めの魔術を受ける必要があるからだ。

 それは、拠点の情報、首領の情報に関する事を第三者に方法は問わず開示しようとした瞬間にその命を刈り取る魔術。


 もちろん誰も首領の真の姿などわからないが、その部分も最大の秘匿情報に組み込まれている。


 この技術の一つが派生して、ドストラ・アーデを殺害した騎士の口を封じる事にも使用されている。


 当然中級構成員程度では、戒めの魔術を受けた事すら理解できない。

 理解しているのは幹部達だけなのだ。


 実はこの魔術、魔力レベルが非常に高い者が複雑な工程を踏むことにより解除する事は出来る。

 複雑な術なので、いくら力があっても技術も伴わなければ解除する事は不可能なのだ。

 そういった点もあり、誰もが情報が洩れているとは思っていなかった。


 実際にアンノウンには情報は漏れていないので、その考えは正しい。


 アンノウンのナンバーズであり、解析・鑑定を最も得意とするNo.7(ジーベン)であれば、注意深く時間を掛ければ解除する事はおそらく可能だ。


 だが、今回は幸か不幸かプラロールはジトロの怒りを買って、そのような工程に移る前にこの世を去った。


 もとよりプラロールを含む拠点に出入りできるほどの地位にある構成員であれば、拠点の位置を漏らすような事はしないのだが。


 こうして、一旦バリッジは表立っての活動を一時的に停止する事になり、アンノウンの情報網の発見、その後に破壊する事を主な任務とした。


 現時点で唯一掌握しているラグロ王国の力も利用しつつ、その任務は開始された。

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