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たとえここが敵しかいない世界だとしても  作者: 勇者王ああああ
クローン、大地に降り立つ
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第三話 介入判断



「おい、トゥーマイ。どうする」

『……どうするも何も、我々には成り行きを見守るしかない』


 逃げた部隊の後をつけた後をつけたトゥーマイとA-4685だったが、彼らが逃げた先には別の怪物が待ち構えていた。彼らが情報提供を呼びかける間もなく、再び切って落とされた戦闘の火蓋にA-4685とトゥーマイは別の意味で舌を巻いていた。


 もちろんそれは自然界の恐ろしい偶然なのだが……。


「伏兵部隊……か。やはりトゥーマイの言う通り、敵には優秀な司令官がいるようだな」

『肯定する。士気を挫く素晴らしい伏兵だ。恐らく狙いはあの『供人くびと』と呼ばれた人間の事だろう』


 『供人』と呼ばれた、あの火を操る青いローブを着た人間を中心にまた兵隊達が隊列を組む。彼らを襲うのは一角を持った巨大な漆黒の馬。それはA-4685が今まで学習したことのある『馬』の体躯からはかけ離れており、その全長4メートルはあろう胴体はまるで鎧のような鱗で覆われている。


『あのような生物は当機の持つデータに存在しない』

「またか……。一体なんなんだこの星は……」


 『ユニコーン』。それがこの馬の名前だが、勿論『帝国』にそんな生物は存在しない為、彼らには知る由もない。

 そしてその馬は軽く姿勢を落としたと思うと、大きな声でいなないた。その天地をつんざくような声は、敵意を向けられている人間達を委縮させるには十分な迫力だった。


「な、なんて迫力だ……」


 A-4685も例外なく驚愕していた。むろんその大きさもそうだが、それ以上に彼は人型以外の生物をほとんど目にした事はないのだ。


 そしてその一角獣は再び姿勢を落としたと思うと、その立派な角を敵に向け地面を蹴った。

 次の瞬間、その巨大な体躯からは考えられないような加速をしたと思うと、瞬く間にフォーメーションを展開していた一人の兵士に深々と突き刺さった。続いて飛び散る鮮血を振り払うかのように馬は角を振るう。すると突き刺さった兵士はあらぬ方向に飛んで行き、その横にいた兵士はまるで紙のようにその角に切り裂かれた。


「うわあああああ! に、逃げろぉぉぉ!」


 ものの三秒で二人の命が絶たれた、という事実に兵士達はパニックに陥った。恐れおののいた一人の兵士は剣を捨て、背中を向けて逃げだして行く。


「まずいな……。格が違う」

『同意する。このままではあの集団は全滅するだろう』


 その馬が角を振るう度に、兵士の命が散っていく。どう考えてもさっきの蜘蛛に囲まれていた時よりも状況は悪化している。


「どうするトゥーマイ。あの……黒い馬は我々と意思疎通ができると思うか?」

『……否定する』


 A-4685は迷っていた。PASの力を持ってすればあそこで戦っている『人間』を助ける事は可能だ。だが、それはA-4685の独断でしかない。もし勝手な判断により帝国に不利益をもたらすような事があれば、彼はその責任を取ることができない。


「助ける……べきだろうか。彼らを死なせれば貴重な情報源を失ってしまう」

『……卿の言うことは一理ある。『人間を助ける』のはPASである当機とクローンである卿の基本原則だ。ただ軍規マニュアルに違反することも事実だ』


 お互いの立場は平等と言えど、戦闘AIは重要な判断を下す事はない。だからこそ誰かに無意識に背中を押してほしいA-4685の手助けになる事はないのだ。


「まさか司令部に通信が繋がったり……しないよな?」

『継続的にリトライしているが、応答はない』


 そしてそうやって彼らが悩んでいる内に、兵士達は全滅していた。辺り一面は真っ赤な血の海になり、残すところは青いローブを被った『供人くびと』と呼ばれた人間だけだ。その人間は腰が抜けたようで、座り込んだままその馬を見据えていた。その手は恐怖から震えているのが、A-4685の目に飛び込んでくる。


「わ、私はこんな所で死ぬわけには……。だ、だれか……」


 その絞り出すような震えた声をトゥーマイとA-4685は拾った。そして怖がったように後ずさりしながら、泣き声を上げる。


「い、いやだよぉ……。どうせ死ぬのに、なんでこんな所で……」


 そしてその様子を見た一角獣は再び姿勢を落とした。そして頭を少し振ったと思うと、足で地面を数回撫でた。

 A-4685は葛藤に心を激しく揺り動かしていた。俺はどうすればいい。と、わからない答えに精神を締め付けている。

そして馬が飛び込んでくる寸前、その青いローブの人間は絞り出すような声を出した。


「だ、誰か……助けて……」

「…………任務受任」


 そしてA-4685は跳ねた。


 それはその『人間』からすれば漆黒の天使が空から舞い降りてきたようで。

 その『一人』と『一体』と『一機』の出会いはまるで神に導かれた運命のようで。


 それは、異世界の憐れな運命に縛られた一人の少女と、死ぬために生まれてきた一体のクローンが出会った瞬間だった。


読んでくれてありがとうございます!

どーでもいい情報ですが仮面ライダーシリーズは蜘蛛の怪人が最初の敵ってのがルールらしいです。

私も真似してみました

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