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第18話 コスプレって楽しいですね

 にやっと笑ったレーラに警戒しつつも、自分の服を受け取るために部屋に残ることを選択した魔王ちゃんは後に後悔することとなった。




 

「服は返すけど、その前に······」



 言葉を途中で切るとどこから取り出したのか、見慣れない白色の服を見せてくる。


 魔王ちゃんは嫌な予感しかしてなかった。

 それでも、それは勘違いであってほしいと願った。



「この服を着て!!」



 やはりか......


 怖くて心の声を聞いていなかったけれど、聞くまでもなかったらしい。



「それは、どのような服なのじゃ? 見慣れぬ物だが......」



 得体の知れない服を着るよりも、せめてどのようなものなのか知っておきたかった魔王ちゃんは尋ねる。



「う~ん、私も初めて見るんだけどね、街の中で綺麗なお姉さんに出会って貰ったんだ」



「それは大丈夫なのか? 騙されてはおらぬか?」



「平気平気。優しそうな人だったし」



(こやつはお菓子をくれると言ったら、知らないやつでもついていく系のやつか? さすがのわしも心配になってきたぞ)



「この服はナース服っていってね、ニホンってところではメジャーな服だそうだよ」



 うむ、まあ、丈が短いのが少々気になるところだが、他は白いだけだし着るだけならやってやるかのう。





「ほら、着てやったぞ。これで満足か?」



 早速、ナース服とやらを受け取って手早く着替えた。



「えっとね、お姉さんが言うには『お注射しゃいますよ?』って言うと、男の人はみんな前屈みになるんだって」



 前屈み?

 わしにはよく分からんが、これさえ耐えれば終わりなのだしちゃっちゃと済ますかの。



「お、お注射しちゃいますよ?」  



「······」


「······」


「······」



「なにか反応してくれなのじゃ。無視は一番悲しいのじゃ~」



「いや、うん。可愛いんだけどね、いまいちピンとこないんだよ。ってことで他のも着てみよう!」

 


 どさっと、例のお姉さんから貰ったであろう見たこともない奇抜な服の数々が置かれる。

 


「えっとこれがチャイナドレスで、これがセーラー服、ミコ服、スクールミズギ、キモノ、スーツ······」


 


 レーラによる魔王ちゃんのファッションショーは夜遅くまで続いたとさ。

 

 チャンチャン



「勝手に終わらせるなー!!」



 せっかくいい感じで締めようとしたらキレられてしまった。

 10割程、僕が悪いけど。

 



 シオンさんと語り合って、部屋に戻ろうとするとちょうど同じタイミングでレーラさんが魔王ちゃんの部屋から出てきた。

 その顔は晴れやかなもので、心配になった僕が部屋を訪ねると、自分がどんな仕打ちを受けたのかを細々と説明されて今に至っている。



「お主がわしを見捨てたせいでどんな目に合ったか、その身をもって体験させてやろうか?」



 そう言うと魔王ちゃんはクローゼットから、コスプレに使うような服の数々を取り出した。


 服フェチではないけれど、正直そのバリエーションの豊かさにテンションが上がる。

 転生前の僕がこの服を着ていたらただの変態だけど銀髪の、それに美少女である今の僕であれば好きに服を着たって問題ない。



「うん!! いっぱい種類があって迷っちゃうよね。そうだ。魔王ちゃんも一緒に着ようよ!」



「えっ? いや、わしはもう散々着させられた······っておい、離せ、嫌がらせのつもりじゃったのになぜ嬉しそうにしてるのじゃ!? もう着たくないのじゃ~」



 こうして妙にテンションが上がってしまった僕による、二度目の夜のショーが始まった。






「もう......動けない」



 心底疲れたのであろう魔王ちゃんは、力尽きたかのようにベッドに倒れる。


 その姿は最後に着たセーラー服のままだ。

 恥じらいというものを知らないのか、ミニスカートに慣れてないのか、(めく)れあがってしまっているスカートから下着を覗かせていた。

 パッツンパッツンに膨れた胸部の膨らみは、その存在を主張するように寝返りをする度に揺れて僕の視線を奪う。

 

 ロリ美少女が巨乳になったのは僕の新しい魔法、トランスの効果によるものだ。

 

 どうやら僕の魔法は1日に増やせる魔法の個数の上限があるようで、0時をまわって新しく作ったのがこのトランス。

 これは、対象の容姿を一時的に変化させるもので、今回は幼い魔王ちゃんの容姿を高校生と同様のものとし、本人の希望で胸もものすごく成長させた。


 かな~~り有能な魔法である。



 少し紫がかった髪をツインテールに結わえ、胸は魔法により巨乳化。真新しい白と緑を基調とした制服を身に包み、健康的な太ももは惜しげもなくさらしている。


 これはレーラさんでなくてもクラっとくる絵面で、僕の鋼の自制心がなければ危なかった。


 ん? おい、そこ、チキンハートとか言うんじゃない!



「むにゅ······これでわたしも大人の女······」



 魔法を使ってからもそうだったが、余程成長した姿に満足したのか、寝言でも喜びを表現してくる。


 最初は嫌々な態度を示しながらも、最終的にはノリノリで楽しんでいた。

 無理やり付き合わせてしまった側からするとホッと一安心。


 すると夢の時間は終わりとばかりに、魔王ちゃんにかかっていた魔法が解ける。

 元の可愛らしいロリ美少女に戻ったけれど、その寝顔は安らかなものだ。



 魔王ちゃんを起こさないようにそっとベッドから離れ部屋を出ようとする。

 出ようとしたのだが、一つ約束を思い出した。



 

 そして明日、いや今日から始まるハルバルトさんの特訓に備えて布団に潜った。




<hr>


 

「んっ······」  


  

 やらわかな朝日が部屋に入り込むと同時に目を覚ます。



「ふぁゎゎ······」 



 昨日は疲れたからぐっすりと寝ることができた。

 そして、起き上がろうとした時あることに気付く。



「ふっ、約束、守ってくれたのか」  



 ベッドで寝ていた魔王ちゃんの隣には、すやすやと寝ているシルバーの姿があった。 


 魔王ちゃんはシルバーの絹のようなさらさらとした髪を撫でて、シルバーが起きるまでの間、その寝顔を眺めていた。

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