ナイスミドルな上司の場合
ここは、黒子派遣の本部『テライオス』
わたしは、そこで所長をしている。みんなからは、ナイスミドルなんて呼ばれている。しかし所詮は黒子なので姿は、影のシルエットのみ。
この『テライオス』は、世界中に存在する、ありとあらゆる物語の決められたシナリオを逸脱しないよう監視・修正していく集団組織。
いつから存在しているのか、誰が作ったのかは不明で、けして表には出てこないが必要不可欠な存在だ。別名:黒子派遣とも呼ばれている。
最近では、モブ派遣と一部で言われていることが、少々気がかりなところである・・・。(モブと黒子は、同じようで同じではないからね。所属している部署も違うんだよ。ただ最近は、どこも人材不足のため、兼任してたりもするけどね。)
黒子派遣は、多種多様な物語に黒子達を派遣するので、精鋭が揃っている。しかし、流行・廃りがある為、一部の黒子が多忙を極めることもしばしば。その場合は、やもなく人材をスカウトする。滅多にスカウトすることもないが、なにぶん黒子は、表舞台に出ないので、なり手がいなくて人材不足。
一番良いのは、可もなく不可もなく地味な子なんだけど、『教室で、何番目かに可愛い子がアイドルを目指す!』とか、『地味な役者が名バイプレーヤーに』などが最近の流行の為、黒子候補が次々と取られていく。
世知辛い世の中だ。
今日も黒子のスカウトをしつつ、物語への派遣を指示したりと毎日が忙しい。
今、派遣している【そしてあなたは、薔薇を抱く~王子様は☆誰のもの~】は、簡単な恋愛シュミレーションゲームの話だが、毎回、不測の事態が起こっている。たぶん、関係者の中に転生者、つまりは前世持ちがいる。こうゆうことが多々起こるので、黒子派遣の仕事は、減らない。
シナリオを修正せねば、新たな物語が派生してしまう。ただし、「面白いからいいよ~」と天の声が聞こえる時がある。そのときは、黒子たちを一斉に引き上げさせ、そのまま物語を見守るのみ。本当に天の一声で、すべては決まる。
一時、天の声の正体を暴こうとしたが、まるで分からない。ただ分かっていることは、天の声は、ひとりではないと言うことのみ。さらに詳しく調べようとすると、その黒子は、行方不明になる。現に私の同僚も行方不明だ。今では誰もその正体を暴こうとはしない。暴いてはならないタブーとしたからだ。
つい先日、新たなシナリオが用意されていた。「いいよね~♪見た~い!この役は、あの子がいい~」という天の声からのご指名があり、派遣率トップのリン君が準主役に決定した。
天の声のご指名は、断れない。
稀に、二次創作や、人気なモブが主役をすることがある。この場合は、派遣というより貸し出しになる。貸し出しの場合は、表に出るので、黒子派遣とは契約が少し異なる。また貸し出し担当者が引き継ぐので、こちらが黒子をどうこうすることが出来ない。
リン君にきた依頼がR18な物語となると・・・。本人には、なんて伝えるかが問題だ。断ってあげたいが、ご指名だし、担当が替わるからなぁ~。いい担当が付いてくれる様に掛け合うしか私には出来ないな・・・。健闘を祈るよリン君・・・。
ゆっくり続きます。