蘇芳倫太郎の場合
「なんでさ!聞いてないよこんな事!!!なんで僕なの!ぜったい嫌だからね!!」
僕は、目の前にいるナイスミドルな上司に向かって叫んだ。
「君に拒否権はないよ?派遣ではなくて貸し出しだから、担当は別に替わるからね。君も準主役で喜んでたじゃないか。あと2時間後にお迎えが来るから、人生なんでも経験だよ。」
僕は、黒子派遣No1017の蘇芳倫太郎。
黒子派遣とは、色々なジャンルの物語に黒子として派遣されてる。決められたシナリオから逸脱しないよう監視・修正していく集団組織。けして表には出てこないけど物語には、必要不可欠な存在なんだ。
黒子派遣は、みんな地味で、なんとなく認識できるかな~な人達が多い。僕の同期のアイちゃんも見た目は、とっても普通で、そばかす・眼鏡に赤毛の三つ編みな地味っ子。彼女は、中世ヨーロッパ系の物語へ派遣が多い。
僕自身は、身長130センチで、猫みたいなパッチリ目・黒髪さらさらボブヘアーにぷっくりピンクの唇、白い肌。半ズボンが似合う永遠のショタっ子。これがとっても需要があるらしくって、黒子派遣にスカウトされた。黒子派遣は、スカウト制ではないらしいけど、人材が足りないんだって。どこも同じだよね・・・。
僕は、黒子派遣でも1・2位を争うほどの派遣率を誇る。なんたって永遠のショタっ子だからね。小学生の同級生、主人公の友達の弟、血の繋がらない義弟など役は多い。
そんな中、僕に準主役のご指名が来たんだ。断固拒否だけどね!!なんたってR18指定のエロゲーで、しかもホ○、いわゆる薔薇?マジで無理なんですけど!!!!どうなってんだよ~。
『準主役もやりたいな~』なんて愚痴ったこともあるけど、これは、無理です。拒否権下さい。
上司に文句を言っても「ご指名だから、ごめんね」としか言われてない。
はじめは、物語のメインの1人だと聞いてとっても喜んだ!「僕の時代がきたぁ~」って。たまに主役張る黒子がいるから、僕も派遣率抜群だし、もしかして~なんて甘い夢を見てた。けど、渡されたシナリオを呼んだ僕は、思いっきり吐いた。吐くものが無くなるまで、吐いた。これがま~エグかった。絵コンテなんて観るんじゃなかった。本当にこれ物語として成立するの?犯罪じゃないのっていうぐらいエグかった。
簡単にネタバレすると、ある日、小学生の男の子が、見知らぬ変態親父に拉致られて、大人のおもちゃでぐっっずぐずに調教されて、アヘガオ満載で、何でも言うこと聞くようにされて、その子の同級生達も順番にその親父に紹介して、それぞれ調教されていく話・・・。その小学生の1人にご指名されたらしい・・・。ありえない。無理、ほんと無理だよ・・・。そんなのに免疫ないから・・・したことないし、前も後ろもピンクですから!(泣)処女に童貞だよ!ゴリゴリのベテランさん要るのに・・・。何で・・・僕なの・・・。無事に帰って来れるかな・・・本部に・・・。助けてアイちゃん・・・。ヘルプ!ショウ先輩・・・。
『君がね、永遠のショタっ子だからさ』そんな声が、何処からともなく聞こえた気がしたとかしないとか。