アイリーン・ジョナサンの場合
連載がんばります。
『あー・・・あー・・・、テステス、聞こえてますかどうぞ。こちら黒子No1018。今現在、帰宅中のヒロインちゃん追跡中です。あっ!ここで猫とじゃれる予定が猫がいません!えっ!?悪役令嬢に見つかるはずが、悪役令嬢の弟が来てます!!!どうしましょうか?』
『No1018了解した。シナリオから外れている!数名の黒子達を向かわせるので、引き続き追跡を頼む』
『了解です。』
こんにちは、皆様。私は派遣黒子No1018、アイリーン・ジョナサンです。名前がありますが、物語では、モブというやつです。今現在、ヒロインちゃんの後を追跡中です。
ここは、【そしてあなたは、薔薇を抱く~王子様は☆誰のもの~】という恋愛シュミレーションゲームの中です。ざっくり説明しますと、ヒロインちゃんが数々の試練を乗り越え、王子様とハッピーエンドになるまでのお話です。逆ハーレムはもちろん、R指定はございません!それに巷で流行の悪役令嬢が、ぎゃふん!というのも無いので初心者向けのゲームです。なので気が楽です。
なぜ気が楽って、私達は、あちこちの物語に黒子として派遣されているんです。
「あれ?これ別の話に出てきたやつに似てるんじゃない?」っていうことありませんか?そう、まさにそれです! 教室の片隅にいたり、さりげな~く主人公たちの周りにいたり、攻略者たちの取り巻き【その1】【その2】なんてのもあります。お屋敷のメイドや町人なんてのもやってますよ~。ただし、全員が派遣黒子というわけでもなんです。ここが肝です!!なので年中忙しいのです。引っ張りだこです。黒子とモブを兼任してますからね!
ただ純粋にモブな方も居られます。モブはモブでも時折、人気が出てスピンオフにて主人公になったりします。まぁ~宝くじに当たるようなもので、喜ぶ人もいれば「やっぱり、モブでいい・・・。疲れた・・・。」と疲労困憊な姿を観ていると、人それぞれだなと感じますね。
さて、私達派遣黒子は、先にシナリオを渡されています。シナリオに沿って物語を進める為ですが、時折、設定とは違うバグが起きます。まぁ~いわゆる転生とか前世の記憶が~なんていうアクシデントですね。そのバグを回避しつつ、シナリオどおりに物語を進める役目を担っているます。つまりは、シナリオ補正ですね!私達派遣黒子がしていますよ!!
たまに、意志のお強い方ですと、シナリオ補正の努力むなしく、新たな物語になってしまうのですが、上からの指示が下りれば、そのままになる時もあります。それは、その時にならないとわかりませんけどね。
『黒子No 1018です。目標は、無事、家に着きました。このまま本日の予定は終了です。どうぞ』
『了解した。一旦その場から離脱後、本部に戻るように。明日の打ち合わせをする』
『了解です。』
はぁ~・・・なんとか本日も無事に任務が完了しました。いつもこんな簡単な仕事ならいいんですが、うまくいかないのがこの世の理です。R18指定の物語に派遣された同期のリン君やショウ先輩は、大丈夫かな・・・。