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to decide  作者: 村瀬誠
第一章:運命の申し子
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プロローグ:動き出す運命

この度は『to decide』を閲覧頂き誠にありがとうございます。

本作品は既に結末まで書き終えてあります。

なので、一日一章のペースで投稿していきたいと思います。


では、勇者と魔王が定めゆく世界の物語をどうぞお楽しみ下さいませ。


バルレイ「…クレイスよ、今なんと?」


王宮内内部の中心に位置する謁見の間、そこには国王との謁見を求め数多くの者が扉を開く。

そしてこの日もまた、国王との謁見を求める者がいた。

クレイス・バーミリオット。

今、その玉座に腰を据える現国王バルレイ・バーミリオットの実の息子。

普段の親子の会話ならば、わざわざこのような手段を用いる必要はないのだが…此度はそのクレイスたっての希望もあり、このような面会の場を設けることとなった。

しかし、クレイスが発した一言によってバルレイは顔を顰める。


クレイス「国王よ、無礼を申し上げるならば、今ここに膝をついているものは国王の息子ではなく、勇者になろうとしているただの一介の戦士です。家族としての感情を持ち込んではなりません。」


勇者…人間と敵対関係にある魔物を統べる魔界の王。

その者をこの手で討ち取りたいと、そう強く志すクレイスは、この度その許可を貰い受けるため父バルレイとしてではなく、国王バルレイとして接する機会を求めた。


バルレイ「私の問いに答えよ、そなたは今、何と言った!」


同じ問いを尚も繰り返すバルレイ。

その言葉には怒気が含まれており、クレイスはその予想外の反応に一瞬戸惑ったが…。


クレイス「…失礼いたしました。出過ぎたことを申しました、非礼を詫びます。…私がここへ参りましたのは、勇者として魔王を討伐するべく旅に出ることを許可してもらうためでございます。」


バルレイ「…クレイスよ、そなたが発した言葉の意味、分かっておるのだろうな。」


クレイス「はい、重々承知しております。勇者として旅に出るということは、一度はこの国から離れるということ。王族として、そのようなことが許される立場ではないことは分かっております。ですがどうかお許し下さい、これも民を思ってこそのことなのです。…私はまだ、王たる器ではありません。ですが私にもできることがある。…魔王を打ち倒し、民を魔物の驚異から解放する。…国王よ、どうかご決断ください。」


クレイスの言葉を聞き、静かに顔を俯かせるバルレイ。

魔王を倒す…口にするのは容易いが、それを実現するまでにどれほどの苦難が待ち受けているのか。

しかしクレイスは、その危険性については十二分なほどに理解しているのだろう。

それでも尚、勇者であることを望む…そうあることが自身の役目なのだと。

決して揺るがぬその真っ直ぐな瞳を見てバルレイは何かを察したのか、一瞬虚無感に覆われた。

そうして理解した、運命の歯車は既に回り始めていると…いや、それは最初にクレイスの口から『勇者』という単語を聞いた時点で分かっていた…分かりきっていた。

ただその事実を受け入れられず、その憤りをただクレイスにぶつけただけだと。


バルレイ「…クレイスよ、そなたの決心は揺るぎないものなのだな。」


クレイス「はい。私は勇者となり、必ずや魔王を倒し、この世界に平和をもたらします。」


バルレイ「クレイスよ、そなたの選ぶ道は険しく、厳しく、時に耐え難い事が起きるやもしれん。それでも行くか。」


クレイス「はい。私の命を捧げることでこの国が守られるのであれば、私は一向に構いません。」


バルレイ「そうか…。ならばもう止めはせん、好きにしろ。」


クレイス「っ…ありがとうございます、父上。」


バルレイ「馬鹿者、この場では家族ではなく一介の戦士と言ったのはそなたであろう。」


クレイス「も、申し訳ありません国王。」


バルレイ「まあよい。勇者が現れた今この時を以って、ヴィストリア王国は全力を持って勇者クレイスを支援する!」


バルレイ「では後日、勇者継承の儀を行う。追って詳細を言い渡す。…では、これにて謁見を終了とする。」


クレイス「かしこまりました、ではこれにて失礼いたします。」


勇者であることが認められ、どこか喜びを隠しきれない様子でクレイスは謁見の間を後にする。

扉が完全に締まるその時までのバルレイの表情など、この時のクレイスには見えていなかった。


…。


クレイス「ふぅ…。」


緊張が解け一息ついたクレイスの元へ、その人物は静かに歩み寄ってきた。


クロ「…どうだった?」


クレイス「ああ、なんとか許しが出たよ。」


クロ「…そう。」


その者の名は『クロ』。

クレイスの付き人という立場になってはいるが、それはクロをこの王宮内に住まわせるための便宜上のものである。


クレイス「すまない、私のわがままで。」


クロ「…いい。」


クレイス「だが、これで私は正当な勇者になった。これで魔王に挑める…。クロ、改めて仲間になってくれないか。」


その問いに、小さく頷くクロ。


クレイス「ありがとう。近いうちに勇者継承の儀がある。またしばらく忙しくなるが…。」


クロ「…だいじょうぶ。」


前髪に隠れた赤い瞳でクレイスを見上げるクロ。

そんなクロを慈しむように、クレイスは優しく頭を撫でた。


…。


それから五日後、勇者継承の儀がいよいよ執り行われる。

場所は先日と同じく謁見の間。

片膝を付き、頭を垂れるクレイスの前に台座が運ばれ儀式は始まる。


バルレイ「ではこれより、勇者継承の儀を始める。」


静かに顔を上げるとそこには、台座の上に鎮座する一つの紋章。


バルレイ「そこの紋章は、初めて魔王を打ち倒した勇者のものとされている。」


そこにある紋章は五角形の形をしており、青をベースに白い十字架が描かれていた。


バルレイ「今この世界は、かつての勇者によってその存在が保たれている。」


バルレイ「魔王を倒し、人間界と魔界の間に境界線が引かれた。」


バルレイ「しかし、ここ数百年の時を経て我々が発展してきたように、魔王もまた、復活を遂げた。」


バルレイ「そして今ここに、勇者を名乗る者が現れた。」


バルレイ「勇敢なるものよ、その紋章を手にし、かつての勇者と共に、力の限りを尽くせ。」


クレイス「はっ!」


紋章を手に取り、クレイスは自分の右腕に装着する。


バルレイ「今、この時を以って正式に勇者が受け継がれたものとする。これにて勇者継承の儀は終了である。」


勇者継承の儀と大々的に銘打ってはいるが、その実、それはその者が正式に勇者という位置付けをするものでしかない。

今クレイスの右腕に添えられている紋章も模造品であり、夢がない話ではあるがそれも記録からその形や絵柄を推察したものでありレプリカと称することも恐れ多い。

しかしこれは勇者が勇者たることを世間に正しく認識してもらうためである。

専属の職人が作り上げたその紋章以外を用いて勇者を語った場合、その者は弁明の余地なく極刑となり、場合によってはその親族に至るまでに刑罰が下る。

『勇者』という存在を明確なものとする…それがこの勇者継承の儀の真の目的である。


…。


クレイス「失礼します、お呼びでしょうか父上。」


勇者継承の儀の後、クレイスはバルレイに呼び出され書斎を訪れていた。


バルレイ「来たか、座りなさい。」


促され、手前にあるソファへと腰掛けるクレイス。


バルレイ「話というのは他でもない、今後のことについてだ。」


バルレイ「具体的にどう魔王を討伐するのか、聞かせてもらおうか。」


クレイス「はい、まずは仲間を集めようと思います。」


クレイス「かつての勇者たちも、仲間と共に力を合わせ魔王に立ち向かったと聞いております。」


バルレイ「…その話はどこから聞いた。」


クレイス「パスティーユ叔父様に聞きました。」


バルレイ「あやつか…。」


その名を耳にした瞬間、バルレイは嫌悪感を顕にした。

幼い頃、クレイスは叔父のパスティーユの家に度々世話になっていた時があった。

パスティーユは勇者に関する文献を数多く持ち合わせており、当時のクレイスはそれに興味を持ったのだ。

クレイスは勇者に憧れを持ち、父バルレイの前でも勇者になると公言しだした。

だがバルレイはこの事でパスティーユに激怒し、それ以来クレイスが叔父の家へ行くことは固く禁じられてしまった。

そしてその数ヵ月後、パスティーユは何者かによって殺害されてしまった。

毒を盛ったと思われる召使いに殺した理由を問いただしても口を開かず、結局動機など詳しいことは分からないままその召使いは処刑された。


クレイス「今でも悔やまれます。あんなにお優しく皆に好かれていた叔父様が、どうして殺されてしまったのか…。」


バルレイ「それよりも私が驚いたのは、そなたがまだ勇者に憧れておったことだ。」


バルレイ「パスティーユの葬儀をしたそれ以降、勇者のことを口にしなくなった故に諦めたものとばかり。」


クレイス「確かに叔父様のことはショックでした。ですが嘆いてばかりもいられません、あの一件で私は勇者になる決意と覚悟を改めてしました。」


バルレイ「…そうか、そなたの思いはあの時消えたのではなく、静かに火が付いたのか。」


独り言のように呟かれたその言葉には、どこか哀愁が漂っていた。


バルレイ「話が逸れたな、仲間を集めるとのことだが一つ条件がある。」


クレイス「何でしょう?」


バルレイ「この王宮に住まう者を仲間とすることを禁ずる。」


クレイス「え…。」


バルレイ「真の勇者であるならば、何かを欲する時に必然的に人や物を呼び寄せる。これは勇者としてのそなたの器を図るためでもあるのだ。よいな。」


クレイス「…分かりました。」


バルレイ「話はひとまず終わりだ、また何かあれば伝える。」


そう言い残すと、バルレイはこの後に予定が控えているのか足早に書斎を後にしてしまった。

突きつけられた条件、本来であれば多少の枷にはなるものの、それほど気にするものではない。

しかしクレイスにとっては、最初にして最大の難関が早くも訪れてしまった。


…。


クレイス「(思わぬ誤算だ、あの条件では…。)」


クロ「…レイ、なにかあった?」


自室へと戻ってきたクレイス、父バルレイに出された仲間集めの条件に頭を抱えていた。


クレイス「クロ、実は…。」


クレイスは先程の出来事をクロに伝えた。


クロは、表情にそれが出るほどではなかったが、落胆した様子だった。


クロ「…いっしょに、いけない?」


見上げる赤い瞳がクレイスを見つめる。


クレイス「なんとか方法を考えよう。…しかし、王宮の外に出て仲間を探さなければならないのか…。少々骨が折れそうだが。」


クロ「…ぼくも、てつだう。」


クレイス「ああ、頼りにしている。父上を説得する方法も、何かあるはずだ。」

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