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 愛する人の死に耐えることが出来なかった。

 例え、それが病死だとしても。

 そんな時、日々の研究を思い出した。

 それが神に背く行為だとしてもかまわなかった。


 死んだ人を甦らせる。


 リヒトはその研究を実行した。

 アンジェのために。

 そうしてそれは成功した。

 アンジェは元気に暮らし、自分が死んだことも覚えていない。

 それでいいのだ、そう思っていた。


「…ねぇ、私は一度死んだのよね?」

 帰宅したリヒトにアンジェは聞いた。

「どうして…?」

 思い出したから、とアンジェは悲しそうに微笑んだ。

 リヒトはアンジェを抱きしめた。

「耐えられなかったんだ。君のいない生活に」

 ああ、やっぱりこの人は一人では生きていけないのだ。

 そう思ってアンジェは嬉しくなった。

「…うん、私もきっとリヒトが死んでしまったら、そうなるわ。

 私、もう一度あなたに会えて幸せだわ」

 自分の死よりもリヒトのことが心配だった。

 だから甦った自分を素直に受け入れることが出来た。

「明日、職場の人が来る。だから」

「うん、分かった。ブランのところにでも行っているから」

 アンジェの言葉にリヒトは安心したように頷いた。


 そうか、思い出したのか、とブランは言った。

「うん。これで良かったのよ。だって幸せだもの」

 そう言ってアンジェは笑った。

 ブランも笑った。

「もう帰るね。そろそろ夕飯作らないと」

 外は茜色に染まりつつある。

「ああ、気をつけて帰れよ」

 ブランに手を振ってアンジェは帰った。

 もう帰ったと思っていた職場の人はまだ家にいた。

 部屋の中で声がする。

 喧嘩しているようだ。


「…止めろ!」

 男の叫び声が聞えた。

 アンジェは思わず研究室のドアを開ける。

 部屋の中央で何かが燃えていた。

 男は必死になって火を消している。

「どうしたの?」

 リヒトと男が振り返る。

 男はアンジェを見て驚いたようだ。

「これが研究の結果か!素晴らしい!」

 男はアンジェの腕をつかんだ。

「触るな!」

 リヒトが男ともみ合いになる。

「なぜ、発表しない?

 こんなに素晴らしい研究は発表すべきだ。

 死者が甦るなんて、こんなに素晴らしいことはないだろう?」

「これは素晴らしいことじゃない。

 神に背く行為だ」

 自分の欲のためにアンジェを甦らせた。

 誰かに知られてはいけないのだ。

 いらだった男は懐からピストルを取り出した。

「それなら俺の研究として発表しよう。

 このノートがあればそれが可能だ。

 お前に用はない」

 男はリヒトに向かって発砲した。


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