表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

出会い

少しずつ書いていきたいと思います。

三人のちょっと不思議なお話。


僕はしがないカフェ店員だ。



「プレミアムコーヒーとチーズケーキのセットですね、かしこまりました。」




僕がオーダーを取ると、多くの女性客がこちらを振り向く。

小さい頃からかわいいかわいい言われて育ってきた、誰もが認める正統派イケメンだ。…と自分で言ってしまうくらいの美形だ。僕は完璧すぎる。

身長は少し小さめでそれがコンプレックスだけれど、それを除いたら、そこらへんの芸能人にだって負けてはいない。大御所の芸能事務所にも何度もスカウトされている。勿論、渋谷駅をずっと練り歩いてスカウト待ちしていたわけじゃなく、「ちょっとの時間」店の買い出しを頼まれている最中にね。


都内のはずれにある、小さなカフェの中で、僕は働いている。

ここ「カフェ・本の森」は、僕の知り合いである、中森勇作(なかもりゆうさく)が経営しているカフェだ。

落ち着いたログハウス風の建物の中で、コーヒーを飲みながら古本を読むことが出来る。お客さんは固定客が多いが、植物の蔦と花に囲まれた神秘的な佇まいに惹かれて、新規のお客さんもやってくる。おかげでカフェは大盛況。基本的にひっきりなしにお客さんが入ってくる。お客さん同士の仲も良く、カフェでの出会いから友好関係、はたまた恋愛に発展する人もいる。


おっと僕の紹介が遅れたね。僕は宮木雅(みやきまさ)と申します。

ここのウェイターの仕事は僕の本職じゃありません。僕は昼間、普通の会社員をしています。

仕事は、パソコンやらテレビやらの電子機器のネジを作るお仕事。

朝の10時から働いて夕方4時まで。副職で、ウェイターのお仕事。

こう紹介しちゃうと僕が仕事大好き人間みたいだけど、勇作に頼まれてずるずるとお手伝いしているだけで、別に好きでやってるわけじゃないの。こんなこと言うと勇作怒っちゃうから言わないけどさ。

まぁでもウェイターのお仕事はアルバイトで割り切ってるから、気楽でいいんだけどね。

そんなこんなで楽しく今日もアルバイトをしています。





カランカラン。

午後二時を過ぎて、昼のピークが終わった頃に一人のお客さんがやってきた。

すっと伸びた姿勢。小さいけど凛とした目元。揺れる黒髪。

こんにちは、と小さく呟いて窓際に座った彼女。

僕は見惚れて一瞬動けなくなる。

そこまで美人という美人ではない。それなのに。何だか心が惹きつけられてしまう。




「いらっしゃいませ」


少し緊張しながらオーダーを取りにいくと、彼女はこちらを見て、ふふと微笑んだ。


「素敵なお店ですね」

「あ、ありがとうございます」


指が白くて細い。

恰好は茶色のカーディガンに白のシャツ。赤いロングスカート。

素朴な彼女はピアスも開けてない。右手の中指に小さな花の指輪がついてる。

指輪の真ん中にあるパールが、木漏れ日を反射させてきらきら揺れている。



「カフェオレいただけるかしら。あと、モンブラン一つ」



はっと我に返ってかしこまりました、だけいうと、足早に厨房に戻る。

冷静に仕事に取り掛かれていない自分に気付いて、何だか恥ずかしく、その日一日は胸の中がずっとざわついていた。




それが、柴田綾(しばたあや)との出会いだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ