カミソリと俺と心の調和7
「そんな間近でパソコン見続けてたら、もっと目...悪くなるよ?」
「...上がってたのか、早いな...」
キッチンの冷蔵庫に手を伸ばし、ジュースのボトル片手にソファーに座り「...なにかあったの?」と尋ねてみた。
「あぁ、ちょっと思い出した事がひとつな。...この患者、あの子に似てる...」
そう言いながら、パソコン画面に映るカルテを見せてくれた。
「うつ病...三度の自殺未遂......」
「この際だ、俺の苦手を知ってもらう意味で全部話すよ。あ、誰にも言うなよ?」
ミチルは飲みながら首を縦に振る。
「俺がまだ医大に通ってた時の話だ。あの頃の俺は心療内科の研修医で、患者の心や意識的な辛さみたいなものを解りきってなかった。それどころか、どうすれば相対する患者の心を癒せるか...患者の負担の軽減や本当の命の尊さに気付けてなかったんだな」
斗真は過去の話をしながらミチルの隣りに座る。
「俺が研修二年目に入った頃に、近くの公園で知り合った子が居てな。その子、有理沙ちゃんって言うんだけど、美大に通ってて将来は画家になるって夢に向かって一直線な良い子だった。...でも、彼女の家は深刻な問題を抱えていた」