カミソリと俺と心の調和6
それから少しして目が覚めた。どうやらあの後、また眠ってしまったらしい。目が覚めた時、ミチルはソファーの上に横になり自身の体には毛布が掛けられていた。
「...目、覚めたか。ここにココア置いとくから、熱いうちに飲んじゃいな♪」
テーブルにマグカップを置いてその場に座る。何か考えてる風な難しい顔をしている斗真を横目に、目の前にあるマグカップに手を伸ばし中に入っているココアを啜る。
「俺...どのくらい寝てた?」
「十分かそこらかな。車からソファーに寝かせた後もぐっすりだったから起こさなかったけど」
コーヒーを飲みながら仕事用のパソコンを起動させ、
「たまには診療所にも顔出せよ。葉瑠、お前に会えなくて寂しがってたぞ」
紺野葉瑠さんは斗真が独立して開いた診療所のスタッフで、中学時代に不登校だったミチルの世話をしてくれていた看護師だ。ミチルが斗真以外に初めて心を通わせた人でもあり、学校に行ってなかった時期、斗真が仕事で診療所を空けていたりする際に家庭教師のように勉強も見てくれていた。
「じゃあ、明日斗真が仕事行くときに着いて行ってもいい?」
「もちろん良いよ。あ、朝早いけど...大丈夫か?」
「......家出る三十分前に起こして...」
「はいよ。あ、お湯沸いてるから先に入っておいで♪」
微笑みながら頭を撫でる斗真に微笑み返して頷く。
「はい、着替え。脱いだヤツは適当に洗濯機に放り込んどいて」
「はーい。上がったらジュース飲みたい」
「冷蔵庫にミチルの好きなのあるから、安心して入ってこい♪」
再び頭を撫でられバスルームに向かう。この一軒家は昔、祖父母が住んでいた所で斗真が越してきた際に部屋の模様替えや改装なんかをやったらしい。
その頃、リビングに居た斗真はソファーに座り、パソコンに保存されている患者のカルテに目を通していた。




