表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
≫罰ゲーム≪  作者: 饗彌
6/12

第5ゲーム ≫悲哀≪

「罰、ゲーム……」


 詳シイ内容ハ、マタ後程。


「いきなりかよ……」

「何、する気なの!?」

「さっき食糧庫見に行ったら食糧すっげぇ貧相になってたんだけど」

「それ関係あるの!?」

「知らねぇよ!!」

「とりあえず落ち着いて」

「兄さんお腹すいた」

「…………」

 突然の出来事に訳もわからず戸惑い始める。

 “罰ゲーム”とは何なのだろうか……?


 今朝の朝食は缶詰などという昨日とは比べ物にならないくらい貧相なものだった。

「兄さんこんな貧相なものじゃ足んないよー」

「我慢しろ」

「あっおれの少しあげるよ!」

「おっ! ホント? ありがと。徹」

「何、ガキから奪い取ってんだ。お前は」

 さすがにこの量は少ないと思う。

 そんなことを考えていたら液晶画面に何かが映し出された。


 食事ガ終ワリマシタラ

 コノ地図ニ書イテアル部屋ニ行ッテクダサイ。


「とりあえず行こうか」

 全員、上杉に従い部屋へと向かう。

「この前、確かここ鍵かかってたよね?」

「うん」

「何も無いな」

「真っ白」

 その部屋は天井も壁も床も白く塗装されて何も部屋には無かった。

 その時扉の方で ガチャリ という音がした。

「嘘……鍵かかっちゃってる」

「てか、オートロックじゃん!」

「簡単には出られそうに無いですね」

「何か書いてあるよ」

 そう言って月夜が指さした方には液晶画面が。


 コレカラ皆サンニハ協力シテコノ部屋カラ脱出シテモライマス。

 ルールハ協力スルコトダケデス。

 ーデハ、頑張ッテクダサイ。


「……ふざけてんのか……!!」

「どうしよう」

「扉壊すとか?」

「やってみましょう」

 上杉と夜月が扉に突進する。が、びくともしない。

「駄目ですね」

「ああ」

 側にパスワードを入力するようなパネルがある。

「暗号を解除するしか無いみたいだな」

「ですね」

「何もないし……」

「壁とか床に何かあるかも」

「てか、もうそれしかないよね」

 全員で床、壁などを叩いたりしてみる。

「ねぇ! みんな。ここ少しだけ塗装が剥がれてるよ!」

 横田が注目される。

「本当?」

「ちょっと剥がしてみよう」

「…………」

「きゃあ!!」

「これ……どう見ても血、だよね」

「どうかしました?」

「これ……」

「血、ですね」

「やだ……」

「とりあえずここは置いておきましょう」


 1時間くらいたっただろうか。

 まだ何も見つからない。

「月夜姉さん」

「んー。どした徹」

「あのお姉さん、何もしてないよね?」

「んー大丈夫だよ。きっと」

「うん……」

 徹が指さしていたのは楓だった。


(みんな真剣になって探しちゃって)

 楓はヒントを探しているフリをしていた。

(メンドくさいし……あの人たちに任せよ)

「早く帰りたいな……」


「ねぇ楓ちゃん、ちゃんと探してる?」

「ん? ああ月夜ちゃん。探してるよ」

「ホント? みんな頑張ってるからもう少しちゃんと探して欲しいな」

「だから探してるって」

「嘘だ。全然探して無いだろ」

 昭太が言う。

「何でさっきから同じ所ばっか探してんだよ!!」

「だからちゃんとしてるってば!!」

「して無いだろ!!」

「してるって!!」

「だいたいこんな何も無いところヒントなんかないよ!!」

 はっとして、楓は黙りこむ。

「あった」

 夜月が言う。

「え」

「うそ」

「どこに!?」

「ここ」

 夜月がさしたのは床の隅、小さく“37564”と書いてあった。

「これ暗証番号じゃ……」

「さっすが兄さん」

 月夜が夜月に抱きつく。

「おい、離れろ。ウザイ」

「照れんなって」

「殴るぞ」

「むう」

 上杉が暗証番号をうって行く。

「あいた!!」

「で、出られる」

「よし、みんなここから出よう」

 楓も行こうとする。その時、

「夜月さんに感謝しろよ」

 と、昭太が言った。

「何なのよ……」


 部屋を出るともうPM6:30だった。

 皆、部屋から脱出することに夢中で空腹どころでは無かったのだろう。全員、急にお腹を空かせた。

「兄さんお腹、すいた。しんぢゃう」

「死んでこい」

「兄さん、それは……酷いよ」

「私、お腹より喉乾いた」

「何もしてねぇくせに」

「何よ」

「ハッ別に」

 食堂につくと食事が1人分足りなかった。

「楓ちゃんの分、ないけど」

「ああ、いいよ。別にお腹すいてなかったから。それに水はあるみたいだからね。大丈夫だよ」

「そうだよな。お前何もしてないんだから」

「何? 何か文句あるの?」

「ちょっと二人とも」

「とりあえず食べましょうか」


(何でだろう? お腹が全然すいてない)

 水を飲む。

(もう無くなっちゃった)

 するといきなり空腹を感じる。

「お腹すいたの? 少しあげようか?」

「うん……ありがと」

 月夜が食事を少し分ける。

「はむ……ん、? う……うえ」

 なぜか吐き出してしまう。

「どうしました? 大丈夫ですか?」

 夜月が近寄る。

「いや……こ、こないで……」

(お、なかすいタ、)


 お、なか ガ…………に、く  お肉 ニク 肉 お腹が


「大丈夫ですか?」

「……おニク」

「ッ! ……」

 いきなり襲いかかってくる楓。

 夜月は間一髪でかわす。

「兄さん! 大丈夫!? 手から血が……」

「大丈夫だ。少し歯があたっただけだ」

「お、おい! 取り押さえないとまずいんじゃ」

「俺らで何とかするので上杉さんは何か拘束するものを」

「わかった!」

 夜月、昭太、長野で楓を取り押さえる。

「おい! まだかよ」

「ありました!」

 手錠に鎖で楓を拘束していく。

「とりあえず部屋に運びますか」

「そうですね。長野さん、手伝ってください」

「わかった」

「兄さん、手……」

「大丈夫」

 心配そうな月夜の頭を撫でてやる。

「とりあえず手当てしよ?」

「ああ、悪いな」

「……なんか、いまのゾンビみたいだったな……」

 昭太が、そう恐ろしそうに呟いた。


 その夜、全員早くに休む事にした。


→→→→→→→→→


「ンー、ンー、」

 誰が扉を開ける。

「お肉、おにくおにくおにく!!」

「え、縄!?」


「まだ理性を保っているのか……」


「い、いや! やめ……」

「く、るし……」

「…………」


→→→→→→→→→


 朝。

「ねぇ。楓ちゃん大丈夫かな?」

「様子見に行くか」

 夜月と月夜が立ち上がるとそれにつられて全員立ち上がる。


(扉が開いている……)

 楓の部屋の前。夜月は中を覗きこみ立ち止まる。

「兄さん、どうし……」

「来るな」

「なんで?」

「いいから来るな!!」

「来るなって言われても……ッ!」

「だから来るなって言ったのに」

「に、兄さ」

「見るな」

 夜月は月夜を抱き寄せる。

「きゃああ!!」

「なんだこれ!?」

 そこにはてるてる坊主のように吊るされた楓の姿があった。

「死んでるの!?」

「おそらく」

「なんで」

「とりあえず下ろしましょう。このままじゃ可哀想なので」

「そう、ですね」

 夜月と上杉が遺体かえでを下ろす。

 側にはこんなカードが置いてあった。


 ≪ 関 楓 Game Over ≫

 ルールヲ 守ラナカッタタメ 罰 ヲ 与エマス。




 誰も話そうとしなかった。

 昭太が口を開く。

「協力しなかったからってこんな……」

 長野が言う。

「でも、ルールだったし」

「月夜、大丈夫か?」

「うん……」


 その日はこれ以上何もなかった。



 次の朝。


 コノ問題ヲ解イテクダサイ。



   Ⅲ Ⅶ Ⅴ Ⅵ Ⅳ


  花畑に 真っ白なお花が 咲いている。

  男が ナイフ掲げ 笑ってる。

  少女は 恐れ泣いている。

  鋭いナイフ なにもかも終わらせた。

  お花 儚い お花 後には真っ赤に 咲いている。



「なんだこれ」

「意味不明」

「帰りたい……」


 答エヲ 教エタリ 見タリシタラ Game Over デス。

 ヒントヲ ダスノハ ok デス。

 問題ガ解ケタラ 紙ニ書イテ 箱ニ入レテ クダサイ。


「とりあえずやろうか」

「そうですね」


 1時間後。

「後、解けてないのは徹、葉さん、長野さん、横田さんですね」

「皆早いよー」

「おれ、わかった……」

 徹は箱に紙を入れる。


 しばらくして全員が問題を解いた。


 解答ハ明日、遊戯室デ発表シマス。

 


「夜月くん」

「はい?」

 七穂が話かけて来る。

「ちょっと部屋に来てくれるかな?」

「分かりました。月夜、先部屋いってろ」

「うん……」



「どうかしました?」

「ちょっと恐くなって……」

「死者がでればそうなるのも仕方ありません」

「少し傍に居てもらっていいかな?」

「はい……」

 扉の前で話始める。

「夜月くん……興味なさそうだね」

「基本、月夜にしか興味ないので」

「ははっ、シスコンだー」

「すいませんね、シスコンで」

「怒らないで。妹想いでいいお兄ちゃんだと思うよ」

「…………」

 しばらくの間、沈黙が続いた。

「手くらべしようか?」

「何のために?」

「暇だから」

「そうですか……」

「わ~おっきい~年下でもやっぱり男の人なんだね」

「何だと思ってたんですか」

「シスコン?」

「はあ……」

「夜月くん……」

 後ろから抱きつかれる。

「何で抱きつくんですか」

「好きだから」

「そうですか。離れてください」

「それだけ?」

「はい。それだけです。離れてください」

「冷たい……」

「あの、今はそんなこと言ってる場合じゃ……んっ」

「ん……。へへ、キスしちゃった。夜月くん油断し過ぎ」

「いい加減に」

「夜月くん」

「ベッド……いこっか?」



 AM0:12。

「兄さん、遅い」

 月夜が機嫌悪そうに言う。

「ごめん。てか起きてたのか?」

「そうだよ!」

「……七穂さんの匂いする」

 夜月の周りを犬のように嗅ぎ回る。

「何してた?」

「別に何も?」

「嘘」

「ホント」

「嘘だ。凄い七穂さんの匂いする」

「お前は犬か」

「だってあの人、香水の匂いキツイんだもん」

「はいはい。もう寝ろ」

「…………」

 夜月がベッドに横たわると月夜が抱きついてくる。

「お前、ホント甘えん坊だな」

「良いじゃん別に」

「はいはい」

 月夜の頭を優しく撫でてやるとそのまま寝てしまった。



 朝。

 遊戯室には無惨な姿の七穂がいた。

「七穂さん……なんだよね」

「うっ」

 昭太、嘔吐中。

 七穂は腹は内臓を引きずり出され、手は関節ごとにバラバラに。

 顔はかろうじて遺体が七穂だとわかるほど、ぼろぼろになっていた。

「なんで、」

 側にはまたカードが落ちていた。


 ≪ 仲嶋 七穂 Game Over ≫

 ルールヲ守ラナカッタノデ 罰ヲ 与エマス。


「なんで!?」

「七穂さん、ちゃんとルール守ってたのに!!」

「いや、違うみたいだ」

 夜月が近寄る。そして何かを拾う。

「これ」

「昨日の問題の答え!?」

「なんで、七穂さんが?」

「さあ……っう……すいません」

「兄さん。大丈夫? 少し休もう?」

「ああ。そうだな」

 遊戯室から夜月たちは出ていく。


 この短い時間の中でふたりも死者が出た。

 全員、気が沈んで誰も何か行動を起こそうとしなかった。

 ふたりを嘆き悲しみ、次は、自分じゃないか?

 そういう恐怖感を抱いていた。


 罰ゲームとは一体何なのだろうか。


 そして、さっきの問題の答えとは、一体……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ