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≫罰ゲーム≪  作者: 饗彌
10/12

第9ゲーム ≫嫉妬≪

「さて、七穂が死んだ時の話をしようか」

「……あの、紙は、どうやって?」

「ん? あの答えが書いてある紙か?あれは、七穂の席のテーブルの裏に貼り付けておいただけだ。後は七穂がそれに気付けば良いだけだ」

「そ、そんなの! 気付くとは限らないじゃない!」

「あいつは考え事をするときテーブルの裏を指で突つく癖があったんだ。それを利用した」

「そう言えば、よくトントンしてた……」


→→→→→→→→→


 AM0:06。

 七穂の部屋。


「夜月くん」

「何? もう俺、部屋戻るんで」

 夜月は乱れた服を整えながら冷たく返事をした。

「あれぇ? 急に態度悪くなったね」

「早く服を着ろ」

「なんで?」

「……チッ」

「え~。なんで舌打ちするの~」

「煩い」

「あはは。じゃあ、早く愛しの月夜ちゃんの所に行ってあげたら?」

「そうさせてもらう」

「ねぇ」

「何だ」

「もし、生き残ってここから出られたら私と付き合って」

「何のために?」

「好きだから」

「はあ……お前が生きていられたらな」

「えぇ~。なにそれ」

 夜月は呆れた顔をして七穂の部屋から出ていった。


 AM0:12。

「兄さん、遅い」

「ごめん。てか起きてたのか」

「そうだよ」

「なら、仕事してもらおうかな」

「……七穂の匂いがする」

「お前は犬か」

「ねぇ、何してたの?」

「何もしてないけど」

「嘘だ。七穂の香水の匂いする」

「ハイハイ。ところで月夜」

「話そらした……で、何?」

「七穂を殺してこい」

「んー、効果無かったの?」

「ああ。“あの薬”は失敗作だったみたいだ」

「ふーん。ま、わかったよ。いまってくる?」

「ああ、頼む。俺は薬の実験結果の報告をしなければならないからな」

「ほーい。……少し遊んでいい?」

「遊びすぎるなよ」

「はーいっ」



 AM0:38。

 七穂の部屋の前。月夜は扉をノックする。

 すると部屋の中から声がする。

「えと……ちょっと待って!!」

「入りますよー」

「え!?ちょっと待っ――」

 返事を待たず月夜は部屋に入った。

 丁度、七穂は軽くシャワーを浴びて服を着ている途中のようだった。

「え、え!?ちょっと……」

「……やっぱり何かしてたじゃん。兄さんの嘘つき」

「え?何か言った?」

「いや、何も」

「それで……何か用かな?」

「ちょっと、遊戯室にきて」

「うん?」


 遊戯室。

 部屋の中は薄暗い。暖房を入れていないせいか寒い。

 月夜が話し始める。

「兄さんと何しての?」

「え!? え、とぉー……月夜ちゃんが想像してる通り……だと、思うけど?」

 突然の質問に七穂は戸惑う。

「この淫乱」

「ええー。そんな怒らないでよ」

「煩いな」

「一応、私のほうが年上何だけどなあ……その態度はどうかと思うよ」

「兄さんの事、好きなの?」

「うん……まあ」

 七穂は顔を赤く染めた。

「あっそ」

「ここから出られたら付き合うことにしたんだ」

「へぇ……」

「機嫌悪いね」

「別に」

「……あっ、わかったー」

「何?」

「月夜ちゃん、夜月君がだいすきなんだぁ~」

「…………」

「でっも~。兄弟だよ?」

「煩い」

「でも血、繋がってないって言ってたもんね。なら仕方ないか。夜月くん、格好いいしね」

「あれ? あれあれ? 嫉妬してるのかな」

「煩いな」

「……でも残念ここから出られたら私、夜月くんと――」

「……煩い!!!」

「きゃあ!!」

 月夜は七穂をナイフで切りつけた。

 七穂がかわしたため腕にあたった。

「ちょっと! 何するのよ!?」

「黙れ!!」

「きゃあああああああああああああ!!!」

 七穂を押し倒してさらにナイフで切りつけていく。

「いっ痛い!! やめて!!」

「ねぇ、さっき……兄さんの事、好きって言ってたよね?」

「だから何なのよ!?」

「じゃあその愛しの兄さんのために死んでよ」

「なっなんで!!」

「それが兄さんの望みだからだよ」

「やだ! やだ、助けて! 夜月く、ん」

「煩いな」

 月夜はわざと急所を外してナイフを突き立てる。

「あああああああ!?!?!!!」

「痛い?痛そうだね~」

「いや、いやいやいや、やめて!! お願い!! やめ」

「嫌だ。やめない」

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「ははっ!! ざまあみろ!! 残念だけど兄さんはお前の事、何とも思ってないよ! ただの実験用のモルモットだ!!」

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」

「まあモルモットでも、お前は何の役にも立たなかったから、モルモット以下の存在だな!!!」

「い゛だ い たす、けて、よ づき、く」

「いくら呼んでも兄さんは助けに何か来ないよ!」

「あ、あああ……」

「もう飽きた。お前叫んでばっかで面白くないもん」

「や、だぁ」

「煩いな」

「っ、っかは……」

 月夜は七穂の心臓付近にナイフを刺し込みぐりぐりと抉り始めた。

「あ? 死んだ? 本当つまんないヤツ」

「…………」

「まあ、心臓の近くに刺してればそりゃ死ぬか」

「……少し遊ぶか!」

 そう言って月夜は七穂の心臓を抉りとる。

「おー。なかなか健康そう」

 七穂の心臓が薄暗い遊戯室の僅かな光に当てられてキラキラ輝く。

 次に腹を引き裂いていく。腹の中の臓物を丁寧に引きずり出していく。

 どれもとても健康そうな色をしている。

「ふんふんふーん」

 月夜は楽しそうに腹の中の臓物を出していく。

「以外と健康な色してるなあ……あっ!」

 月夜は大腸を引きずり出していく途中で誤って切ってしまった。

「あーあ……切れちゃった。今まで出来た試しが無いんだよなあ。綺麗に出してどれくらい長いか見てみたいのに」

 月夜は拗ねたように呟く。

「僕、以外と不器用だからなあ」

 そう言って臓物を取り出したあと、遺体を解体し始めた。

「んー、顔をいじっちゃうと誰だかわからなくなるから、顔は止めておくか」

「おいしょ」

 月夜は指の間接からばらばらにしていくことにした。

「んー。あ、そうそう、これ」

 手にしているのはのこぎりだ。

 月夜はこれで遺体を解体するつもりなのだろう。

「じゃあまずは首から」

 のこぎりの刃を首にあてる。

 最初は肉の切れる柔らかい感触だが、骨に到達すると切断するのに力がいる。

「んー! やっぱり大変だな~」

 部屋中に骨の削れる音が響く。

「ふぅ。やっと切れた」

 首を切断し終わると次は、腰、肩、腕、足、それぞれ解体していく。たまに腕についている肉を削ぎ落として骨だけにして積み重ねて遊んだりしている。

 月夜の周りには。

 肉、骨、大腸、心臓、肉、肉、肝臓、骨、肉。

 とにかく周りは血。血の海だ。

 そして、月夜自身も血に染まっている。

「ざまあみろ。兄さんに近付くからだ」

 そう、嘲笑った。

 足音がする。

 多分、夜月だろう。

「おい。何だこれは」

「……遊びすぎました! ……てへっ」

「何が、てへっ、だ。やりすぎだ」

「ごめんなさ~い」

「まあ、いい。早くシャワーを浴びてこい。酷いぞ」

「あっ。ほんとだ。血だらけだ」

「早くしろ。ほらタオル。ここで脱いでからシャワーに行け」

「兄さん、何する気?」

「廊下が血だらけにならないようにするためだ!! 何言ってるんだお前は!!」

「むー」

「俺は廊下に居るから早くしろよ」

「はぁい」


 しばらくして。

「兄さんいいよー」

「ん?ああ。じゃあ早くシャワー浴びてこい」

「兄さんは?」

「お前の汚れた服を始末する」

「何する気?」

「何もしない!! 煩いぞ!!」

「むー」

「わかったら早くしろ」

 夜月はゴム手袋をする。

「……廊下で僕が襲われたらどうするの」

「襲うヤツなんていないだろ」

「暗いからこけたらどうするの」

「こけろ」

「むー」

「はあ……わかったから。ほら、行くぞ」

 夜月は袋に月夜の汚れた服とゴム手袋を入れて七穂の遺体の側にあの答えの書いた紙をおいた。

「はあ……」

「袋の中、真っ赤だね」

「お前のせいでな」

「むー」


 さらに時間がたった。もう、睡眠時間がほんの僅かしか残っていない。

「月夜。もう、寝ろ」

「兄さんは~?」

「俺も寝るよ」

「ところで兄さん。七穂が言ってたんだけど、ここから出られたら付き合うんだったんだって?」

「はあ? 何だそれは」

「何か兄さんとそう言う話したって」

「はっ。モルモットを好きになる馬鹿がいると思うか?」

「モルモット好きなら」

「そう言う意味じゃない」

「ははっ! ってか兄さん、軽く乙女心踏みにじってるよね」

「知るか」

「うわっ! ワルだ!」

「てか、お前は少し乙女心を研いたほうがいいぞ」

「むー!! 煩い!!」

「はいはい、もう寝ろ」

「…………」

 夜月が横たわると月夜が抱きついてくる。

「お前、本当甘えん坊だな」

「いいじゃん。別に」

「はいはい」

 夜月は月夜の頭を撫でてやった。


 次の日。

 全員が七穂のオモチャにされたあとの姿を目撃した。

 少し、虫がたかっていた。


→→→→→→→→→


「まあ、あの死体は月夜がやりすぎただけだ」

「薬って何?」

「ああ。七穂に盛った薬のことか?」

「そう」

「あれは“殺戮衝動が抑えられなくなる薬”だ。まあ、失敗作だったけどな」

「よくそんな簡単に人が殺せるわね」

「俺らにとっては人じゃない。ただのモルモットだ」

「でも、貴方たちと同じ人の形をしているのよ!?」

「でも、“上の人間”に言われればお前らはモルモットだ」

「……っ」

 葉はもう、話す気すら湧いてこなかった。

 こんな化け物といくら会話をしても何も変わらない。そう、思った。

 その時、銃声が聞こえた。

「ん? 残りのヤツが死んだみたいだぞ」

「……せめて徹くんだけでも逃がしてあげて」

「……葉さん!?」

「それはダメだ」

「どうしても?」

「ああ」

「…………」

「そろそろ月夜が帰ってくるな」


→→→→→→→→→


 横田はもう1人の化け物を見て怯えていた。

「どうして……」

「さあ、どうしてでしょう」

「夜月くん、あんな、格好よくて……優しそうなのに」

「なんだよ……お前もかよ……!! みんな兄さんばっか」

「や、やめて」

「煩い!!」

「やだ! お願い!! 助けて助けて助けて助けて助けて助けて」

「死ね」

 横田の心臓目掛け銃弾が放たれる。

 横田は息絶えた。

「…………」

「兄さんは僕のものだ……たとえ兄さんが僕を妹でしか見てなかったとしても僕を女としてみてくれてなくても……それでもいい……僕は兄さんがいれば何もいらない。それを奪おうとするヤツは、僕が全員ブッ殺す!」

「…………」

「……早く、兄さんの所に戻ろう……」


→→→→→→→→→


「ん? 月夜が帰ってきたか」

「兄さん終わったよ~」

「ああ。有り難う」

「こいつは?」

 月夜は葉に銃口を向ける。

「いやそいつはいい。今、冥土の土産に真実を話しているところだ」

「ふーん。そう……」

 月夜の表情が曇る。

「さて、あと少しですべての事を話し終える」

「…………」

「そうしたらお前は死ぬ」

「……死ぬ覚悟をしておけよ」

「……兄さんはどうして他の女を惹き付けるのかな?……」

「月夜、何か言ったか?」

「ん? 何も?」

「そうか」

「…………」

「さて、そろそろゲームオーバーの時間が来る。それまで楽しもうじゃないか」


 今生きているのは葉と徹、目の前の化け物2匹だけ。

 もうすぐで、全てが終わる。

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