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VANISH
また朝が来る。ミンミンゼミが今日もうるさく鳴いていて、天井の扇風機は今日も風を送る。ホームルームが始まり、センター試験まであと何日だとかいう話をされる。
「今日も暑いな」
「ああ」
田中とそんなたわいのない話をする。
「あれ、今日は花子こないのか? 三日坊主どころか、一日しか持たないとは。朝に弱いんだか何なんだか。昨日あのあとも頑張ったのかね」
「ん?」
「ん、ってなんだよ」
「お前彼女いたっけか?」
「花子とはつきあっとらんぞ」
「まてまてまて、花子って誰だ?」
「はいはいはいはい、ふざけないの。そういうの聞いて驚くのは小学生までだから」
「お前こそ、ふざけてんのか?」
―昨日で修理は終わっている。考えてみれば彼女がそう長くここにとどまるわけがない。まさか二日で去るとは思わなかったが、記憶を消して去っていったのか。
「ごめん、ちょっと最近『家畜人ヤプー』にはまっててさ。ご主人様が現れるんじゃないかって、妄想してただけ」
「あー、おれも美人さんに飼育されてーなー」
チャイムがなり、次の授業が始まる。平凡な日常が帰ってくる。めでたしめでたしだ。