REPAIR
自転車をえっさほいさと漕いでプールに着いた。塾が終わったら来いなんて言うけれど、そんな遅くに家に帰ると余計な心配をかけることになるのでそうもいかない。というわけで、田中と僕はコンビニで買ったカップラーメンを啜り終えると急いで再び学校へと向かった。
プールサイドではなにやらガチャガチャと音がしているので、彼女はすでにいるらしい。
「おーい」
と僕が声を掛けると、花子は僕らの方へやってきた。
「修理を手伝ってください! 材料はそろっています」
「お、おう」
と僕
「修理って?」
と事情を飲み込めていない田中が尋ねる。
「私の愛機の修理だよ」
あれ言ってなかったっけ、と言った顔で田中をみる。彼はそこでそれ以上の質問をする気力を奪われてしまった。
「大丈夫。今日もすぐ終わるから。」
そんなことを言われて今日も二時間ほど手伝わされた。なんだかもともとのUFOの形状と大分変わっているので田中少年にはこれがUFOだとは思えないだろう。ちょっと頭がアレな美少女が造っている何か前衛芸術の一種とでも思っているのかもしれない。
「ねえ、これで何するの。」
田中が漸く新しい疑問文を放つ気力を回復させた。
「帰るのよ」
「そうだ、帰るのだ」
と俺も言う。いや俺が帰るわけではないのだけれど、この二日間があまりにも刺激的すぎて、俺の精神にあまりにも深く彼女が入ってしまっているのでなんとなく帰ることがイメージできない。自分に言い聞かせるために俺はさらに心の中で復唱する。もう厄介ごととはおさらばだ。彼女の方を見ると黙々と半田ごてで回路を作っている。
「こんなものね」
「そうか、こんなものか」
と僕。
「やっとおわったー」
田中は疲れているようで(そりゃそうだ)、額に浮かべた汗を学ランでぬぐいながら大の字になって寝転んでいた。
寝転んで見ると星空が綺麗だ。