現実世界19
それからしばらくして、デリアがドイツに帰る日がやってきた。
「いやぁ、楽しかったな」
鎹がデリアに言う。
空港で、俺たちはデリアを見送っていた。
「あ、そうだ。これ持って行きな」
いつの間に買ったのか、雄山がネックレスを渡している。
「いいの?」
デリアが雄山に聞いている。
「いいさ、こっちみんなからの気持ちさ」
それからデリアは全員の顔を見て、泣いた。
「え、なぜ泣くの」
雄山は急にデリアが泣き出して、おろおろしている。
だが、その真意に気付いた沢板が全員を抱きしめる様にした。
「いい、デリアちゃん」
そして、そのままの格好で、デリアに語りかける。
「私たちが出会えたのは奇跡。そして、こうしていられるのも奇跡。でも、私たちにとっては、これが始まり、ね」
そして、顔を見る。
「世界中で65億人もいるのに、たった5人の私たちに出会えた確率って、ほんとに考えられないほど小さいの。その人生で出会う人なんて、たかがしれてるでしょ。だから、泣いちゃダメ。これから出会う人との喜びで、涙を流せばいいの。別れは単なる別れ。それに私たちは2度と出会うってわけじゃないでしょ」
「そうさ、俺たちはずっと一緒にいられる。空間の壁なんて、もう意味が無いからな」
鎹が沢板の言葉を継ぐ。
「セブンスワールドに行けば、俺たちはずっと一緒にいられるわけだからな。だから、これは別れじゃない。ただの帰宅さ」
鎹の言葉に、デリアは涙をぬぐって答えた。
「別れじゃない。だから、私は大丈夫」
「そ、大丈夫」
そして円陣を解くと、デリアは笑っていた。
「じゃあ、帰るね」
「ああ、いってらっしゃい」
俺がデリアに言うと、デリアは元気に手を振って搭乗手続きへと向かった。
それから1時間後、展望デッキでデリアが乗った飛行機が飛ぶのを、俺たちは見ていた。
「…無事に行ったようだな」
「そうだな」
鎹の独り言に、俺は答える。
「さ、自分らも帰るか」
雄山が飛行機が雲を突き抜けて見えなくなってから言った。
「家帰ってからどうするんだよ」
「どうするって、決まってるじゃないか」
俺の質問に、雄山が即答する。
「デリアを、ゲームの中で待っとくんだよ。俺らが待ってるって言ったんだからな」
「あんたドイツまで何時間かかると思ってるの」
そういう雄山に沢板がケラケラと笑いながら突っ込んだ。
「さあな、しらねえよ」
雄山が言った。
「なんて言ったって、空間の壁はないも同然だからな」
そう言いながらも、雄山は歩いてデッキから降りた。
その雄山についていきながら、俺たちも家へと帰った。




