現実世界2
翌日の高校で、俺は今日の予定について鎹から話を聞いた。
「とりあえず、武器を買わないといけないだろうからな。そこからか」
「そういや、武器の装備ないな」
俺が鎹に言ったら、少し呆れた顔つきになった。
「ということは、素手か。一対一だと武器はいらないんだが、ギルド間の戦争やモンスターとの対戦となると、どうしても素手じゃかなり不利だからな」
「一対一ってことは、プレイヤー同士の対戦か。武器がいらなくていいって、どういうことなんだよ」
「そっか、まだ知らなかったな」
ちょうど教室へ来た沢板が俺たちのところへとやってくる。
「何の話?」
「セブンスワールドで、一対一のアレを説明してるところ」
「ああ、あれね」
近くの椅子を引いてきて沢板が俺たちのそばに座る。
どうしてドキドキしているのか、俺には分からない。
「たとえば、啄木鳥君が申し込まれた場合ね。相手は鎹君で。まずはお互いに武器をしまう。そして、相手のIDを読み上げてから、啄木鳥君に近づいて、勝負を挑むの」
「なにか定型文でもあるのか」
俺は沢板に聞いた。
「いいえ、でも、必ず「一対一で争う」という言葉を入れることは義務となっているから、それを聞き逃さないようにすれば、大丈夫。で、それを受け入れるかどうかは、啄木鳥君しだい」
「ということは、争うことをしないっていうこともできるってことか」
「そういうこと。ただし、そうなると、鎹君が啄木鳥君の周囲10mを通り過ぎるまで、啄木鳥君はその場から動けなくなるの。鎹君は、そこから速やかに立ち去る義務があって、申し込んでから1時間後までは再度誰かに争いを申し込むことはできなくなるの」
「それで、どうやって争うことになるんだ」
「まず、争うことを受け入れると、周囲から隔絶される。周りから見ることはできるし、声も聞こえるけど、啄木鳥君から声をかけることは、鎹君とだけになるの。それは鎹君も同じことね。それから、二人の中央にカードの山が置かれるわ。そこからランダムに二人に5枚ずつカードが配られるの。このカードには1〜9までの数字が書かれているわ」
「ランダムなのか」
「ランダムと言っても、パラメーターのいくつかの数値がカードの数値の選びやすさに反映されるの。特に運は重要ね。これらカードは、どれが来たかは、互いに解るように公開されるわ。このカードを1枚ずつ場に出して、数字の大小で勝敗を決めるの。5枚が終わった時点で、勝った数が多い方が、そのセメスターの勝利。セメスターで先に3勝した方が、この一対一の争いの勝利となるわ」
「負けたらどうなるんだ」
俺は沢板に聞いた。
「これもランダムにだけど、鎹君が勝ったとしたら、啄木鳥君の、何らかのアイテムを取られることになっているの。ただし、装備していたり、倉庫にあったり、誰かから借りているようなものをとることはできないわ。アイテムがなければ所持金の5パーセントを取られるから」
「結局、何かしら取られるのかよ」
説明を聞き終えて、俺は沢板に言った。
「そうなるわね。慣れないとよく分からないだろうから、始まりの街に、このための訓練場があるわ。経験値はたまるし、アイテムとかは許可をしない限り取られることはないから、一度行ってみてもいいわね」
俺らがそんな話をしている間に、チャイムが鳴り響いて、先生が入ってきた。