Onedayー休めない安息の地
「さ、桜木。いまなんて?」
「中谷、トンネルに入ってから奴らのスピードが上がってる‼」
みんなが動揺している。
「だ、大丈夫だ。もう、出口が見えてきた。」
前を確認すると、トンネルの真っ暗では月がある外は明るく見えていた。
「あぅあああああ‼」
えっ‼
桜木が後ろを見ると…
奴らの一体と目が合った。あり得ないほど、近い、というかこの距離、2mぐらいしかない。
「川端!まずい。追いつかれた‼」
「え、えええええ‼」
川端は驚いたが、女子達は男子に連れられて走っているためか、反応する体力も残っていなかった。
「みんなまじで走れ‼」
中谷が叫ぶが、スピードは上がった気がしない。
後ろを見れば、ますます奴らが、近くなっていた。
「まずい、本当にマズイ‼」
それでも尚、手を離して逃げてやろうと思わないのは、咲さんのおかげであった。
「あと…あと少しだ!」
中谷が再び叫んだ。桜木が前を確認すると、あと100mもないであろうかという距離になっていた。トンネルを出れば、まだ、なんとか自由に動き、逃げられる。
しかし奴らとの距離はすでに手を伸ばせば届く距離になっている。
「あううあうああぁぉあ‼‼」
ついに奴らの一体が叫び、腕が振り下ろされる。
しかし背中をなんとか海老反りにして、間一髪で避ける。
「く、ぐぐ…。」
かなり苦しくなってきていて、つい言葉が出てしまった。
このままじゃ、俺死ぬんじゃないか?
「さ、桜木君…。」
「ラスト‼50mぐらいだ。走り切るぞ‼」
川端が叫ぶ、しかし桜木はいまだ、恐怖の絶頂にあった。
「く、頼む。間に合え、間に合ってくれよ。」
外の光が広がり、トンネルが終わる!
そう思ったときだった。
「あうあぁぁぁ‼‼」
奴らの腕が振り下ろされ、桜木の
背中を直撃した。
「ぐぁぁぁぁ!」
あまりの痛みに、さっきまで猛スピードで走っていた足がほつれ、絡み、体のバランスが、崩れていく。
「あ、あと少しだったのに…な。」
いま転んでもトンネルの外には出れないだろうし、逃げきれないであろう。
死の恐怖が心を覆った。
その時グンッと右手が強く引かれた。
「さ、咲さん。」
強い力で引かれた、バランスを崩していた自分の体は、対空時間が延び、トンネルの外に飛び出すと、ぐるぐると転げていった。
「ぐぐ…。痛ってー。」
痛みの中に、再び奴らの恐怖が戻り、後ろをゆっくりと振り返った。桜木はつい唾を飲んだ。
だがしかし、そこにはもう何もいなかった。
「え、あ、た、助かった…。」
何故、奴らがこちら側へ来ないのこわからないが、助かったことには違いない。いまは生きてる事実を祝っていたかった。
「うぉぉぉぉしゃーー!」
中谷や川端が喜びの雄叫びを上げ、女子達は再び泣き始めた。
しばらくすると、右に公園が見えたので、そっちにいくことにしたが、桜木は背中の怪我で、川端は怪我と疲れから、肩を貸してもらわないと歩けない状態だった。
「咲さん、藤谷さん、すいません。」
「さ、桜木くん、気にしなくていいいわよ…。」
「いつか、この借りは返してもらうからいいわ。」
そうだ、藤谷 水希はクラス1を誇るキツイ女子だった。こんな時代にもなって、仁義、と書写の半紙に書いていた女子である。
公園に到着すると、ベンチから声が飛んできた。
「おい、お前ら‼まさかゾンビに噛まれたりしてないだろうな。」
声の主はうちの学校のガキ大将、
織田 亮であった。
「噛まれてたら縛り上げるぞ。」
「ははっ、亮さん何のプレイですか。」
亮の言葉に反応するのは、亮の子分で、どんなときも一緒にいる神谷 裕志であった。
「織田、悪いんだがベンチを貸してくれないか?桜木と川端が怪我をして…」
「噛まれたのか答えろ‼」
餓鬼…と藤谷さんが呟いたのを咲さんが聞いてオドオドしていた。
「お、織田、俺らは噛まれてはいない…。引っ掻かれたんだ。」
桜木が言うと、中谷が再び交渉に入ろうとした。
「そ、そうだ織田。だから…」
「ダメだな。」
なっ…と中谷が驚き、言葉をなくした。
「引っ掻かれただけとは言っても、やられたのは事実だ、うつってたらどうする。」
「そうだ、そうだ。あんな気持ち悪い…。」
織田の言葉に再び上谷が相づちを入れる。
「ま、まて織田。奴らがああなったのはうつるのか?」
「知らねえよ。でもあいつらゾンビだろ。」
ちょっと待てよ、と黙っていた川端が呟いた。
「ちょっと待てよ織田!奴らは確かにおかしいところもあったが、クラスメートをゾンビとか言うなよ。」
「うっせえな、バカワバタは。」
「おい、いまなんて言った。」
川端と織田は小学生の時から犬猿の仲で、実際喧嘩が起きたこともあった。
「ま、まってくれ、確かに、クラスの奴らはゾンビみたいにはなってしまったし、事実、奴らに桜木や川端は引っ掻かれてしまった。だが、引っ掻かれただけで、奴らのようになるか?」
織田は少し考え言った。
「そ、それは…なるかも知れないだろ?」
まぁ確かに、可能性はないわけではないだろうが…。
「答えはNOだ。ならない。」
七話目UPさせていただきました( ^ ^ )/□
かなり登場人物が増えて出てきました。
なかなか動かすのも大変です。
次話、Oneday編完結となります。
前回、七話で完結させると言っておきながらすいません。
感想、評価、お待ちしております。
ぜひお願いします。
次回投稿は明日、23日投稿予定です。